《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》69 王妃の戸い 6
「え、ええと、クリスタ、フェリクス様にはたくさんのいいところがあるわよ」
クリスタの口から、実の兄に対するものとは思えないほど辛辣な言葉が飛び出たため、取りなす言葉をかけようと試みる。
クリスタは被害を被った側なので、苦を述べたいのだろうけれど、彼の話を聞く限り、フェリクス様は私のために神様に祈ってくださったのだ。
忙しい彼が、眠っている私のために時間を使い、心を砕いてくれたことをありがたいと思う。
けれど、私がフェリクス様を庇ったことがクリスタは気にらなかったようで、さらに彼をけなし始めた。
「まあ、お義姉様ったら! お言葉を返すようだけれど、今のお兄様には褒めるべきところはほとんどないわよ! お得意だった社までもが低下した結果、先ほども言ったように、私が12歳で人させられたのだから! そのため、12歳の王殿下が晩餐會で多くの貴族たちをもてなし、夜會で主催者挨拶を行っていたのよ」
最後は茶目っ気を覗かせて、片目を瞑りながら発言するクリスタを見て、私はほっと安心する。
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……よかった。フェリクス様に厳しい発言をするのは、兄妹ゆえの仲の良さの表れなのだわ。
それから、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「どうしてフェリクス様は、そんな風になってしまったのかしら?」
私の知っているフェリクス様は、他人の気持ちを思いやる優しい方だ。
眠り続けた妃に対しても、これ以上はないほど気を遣い、面倒を見てくれる。
そんなフェリクス様と、クリスタから語られるフェリクス様が全く一致しないため、何か大きな事件でもあって、彼は変わらざるを得なかったのかもしれないと思ったのだ。
すると、クリスタは過去を思い出そうとするかのように、考え込む様子を見せた。
「……そうねえ、お義姉様が倒れてからしばらくの間、お兄様はただべったりとお義姉様の側に引っ付いていたのよね。だから、元々晩餐會にも、夜會にも出たくはなかったのでしょうけど、立場上そういうわけにもいかないし、貴族たちと流することの重要も理解していたから、しずつ參加するようにはなっていたのよね」
先ほどから、クリスタの話には、私に寄り添うフェリクス様の話が何度も出てくる。
他の者から、私のことを大事にしてくれるフェリクス様の話を聞くのは初めてのことだったので、気恥ずかしくなって両頬を押さえていたけれど、クリスタは気付かない様子で話を続けた。
「でも、ある日、晩餐會の名の下に、お見合いの席がセッティングされたの。出席者が全員で協力して、1人のご令嬢を褒めそやし、はっきりとお兄様に薦めたのよ。肝心のご令嬢も、まつをぱちぱちと瞬かせて、お兄様にびる始末でね。そうしたら、お兄様はそのまま席を立って、晩餐室を後にされたの。それ以降は二度と、晩餐會を開催されなくなったというわけよ」
「えっ」
それは私の知っているフェリクス様の行とは、全く異なっていた。
もしもフェリクス様本人に回しすることなく、勝手にそのような席を設けたのだとしたら、彼が腹立たしく思うことは理解できる。
けれど、たとえそうだとしても、フェリクス様はいつだって周りの者に気を遣い、決して高圧的な態度を取らなかったはずなのに。
「夜會は……」
クリスタは何事かを言いかけたけれど、私の顔を見た途端に言葉を止める。
「クリスタ?」
どうしたのかしら、と尋ねるような聲を掛けると、彼は何でもないとばかりに頭を振った。
「ええと……、要するに、お兄様のお気に召さないような會だったということね。そのため、お兄様は二度と夜會を開かないと宣言して、それ以降は実際に、二度と開かなかったというわけよ」
「まあ」
クリスタの話では、フェリクス様は貴族たちと流することの重要を理解しているとのことだった。
それなのに、晩餐會はまだしも、夜會を開かないのは理解することが難しい話だった。
そのため、國益がかかわるような高度な問題でも起こったのかもしれないと思う。
だからこそ、はっきりと口にすることがはばかられ、クリスタはお茶を濁したのかもしれない。
フェリクス様は大丈夫なのかしらと心配していると、クリスタは不満気に言葉を続けた。
「だから、今はどちらも私の名前でしか開催できないのよ! あるいは、ハーラルトの名前でね! そうそう、おかげでハーラルトも12歳で人したのよ。ただし、私たちは転んでもただでは起きないから、代わりの條件を2人で突き付けてやったの。つまり、婚姻相手は自分たちで探すわよって!」
「えっ」
今日は驚かされてばかりだ。
一國の王妹と王弟が自分で婚姻相手を探すだなんて、とんでもない話なのだから。
そのため、そんな話をけ容れてもらうのは難しいのではないかしら、と考えていたのだけれど、クリスタは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ほほほ、背に腹は代えられないようで、重臣たちは要求を吞んだのよ。お兄様は10年前から自由を支持しているから、最初っから私たちの好きにさせるつもりだったようだし。おかげで、私もハーラルトも、花の獨暮らしってわけ!」
フェリクス様を心配する話だったはずなのに、一転してクリスタの逞しい話になったため、彼らしいわとふっと笑みがこぼれる。
それから、クリスタの話の中に懐かしい名前が出てきたため、ふと気になって質問した。
「ねえ、クリスタ、10年前はいつだって、あなたはハーラルトとともに私を訪れてくれていたわよね。今日は、ハーラルトは一緒じゃないの?」
いつも読んでいただきありがとうございます!
別作品で恐ですが、1つご紹介をさせてください。
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