《【二章開始】騎士好き聖は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】》66.婚前旅行に行こう!

その日の夕食後、談話室でヨティさんとリックさん、ミルコさんとレオさんと私の五人でお茶をしながら、彼らにもメラニー様のことを相談することにした。

「なるほど……それでシベルちゃんは元気がなかったんすね」

「しかし、さすがにメラニー様をトーリに連れて行くわけにはいかないだろう」

「そうっすよね。旅行に行くような場所でもないし」

ミルコさんの言葉に、ヨティさんが同意する。

「かと言ってマルクスを連れ戻すにはまだ早い」

「そうだな」

「なにかいい方法はないかしら……」

それに続いたレオさんの言葉にミルコさんが頷くのを見て、やはり仕方ないのかと気を落としていたら、腕を組んだまま黙って話を聞いていたリックさんがふと口を開いた。

「……魔法の鏡を持たせたらいいんじゃないですか?」

リックさんのし低い、落ち著きのある聲が室に響く。

「魔法の鏡?」

「ああ。あれなら相手の顔を見ながら會話ができる。メラニー様もしは安心するでしょう」

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「ええ、それは知っています。でも、とても貴重なものだし、そもそもお金で買えるようなものではないですよね?」

魔法の鏡は魔導の一種で、離れた場所にいる相手とも顔を見ながら連絡を取り合えるとても便利なもの。

けれどそれを作れるほど強い魔力を持った人間はそういない。この國では存在すらしているかもわからないようなもの。顔が見えない通信用の魔導ですら、貴重なものなのだ。

「そうだぞリック。簡単に言うな! そんなもの、どうやって手にれるんだよ」

冗談で言っているのかと思ってしまうほど簡単に言ったリックさんに、ヨティさんが食ってかかる。

「ああ、そうか。この國にはまだ出回っていないのか。でも俺、その鏡を作れる魔導師を知っていますよ」

「「「え?」」」

それでも顔を変えずに続けたリックさんの言葉に、皆の聲が重なった。そして同時にリックさんに視線が集まる。

「まさか、そんな人がどこに……!?」

「俺が留學していた隣國にですけど。世話になっていた師匠が作れたんで、紹介してもいいですよ」

珍しく、驚きの表と聲を上げるミルコさんに、リックさんはさらりと告げる。

「本當? お願いできますか!」

そして私は、リックさんの言葉に希を抱いた。けれど、

「待って、シベルちゃん」

私の隣に座っているレオさんが、こちらを向いてそれを制する。

「ああ、そうだな。確かにこの國の王太子……ましてや聖が頼めば作ってもらえるかもしれない。だが、そうなると國同士の話になってくる」

「あ……」

レオさんの代わりに、向かいのソファに座っているミルコさんが私を見て言った。

なるほど……。メラニー様のためなら、そこまでしてもいい案件かもしれないけど……。私たちが勝手に決めていいものではない。こちらも相応のものを差し出す必要があるだろうし……。

「だから俺が紹介するって言ってるじゃないですか」

「だから、紹介してくれたとしてもだな――」

「國同士の貿易にならず、個人のやり取りならいいんですよね?」

「……」

「俺に任せてください」

ヨティさんを挾んで同じソファに座っているリックさんとミルコさんが、視線をえてそんなやり取りをした。

とても自信ありげに口角を上げたリックさんが、なんだかとても頼もしく見える。実際、リックさんは大きくて強くてムキムキでいつでも頼もしい人なのだけど。

その場は一旦お開きとなったけど、後日レオさんから婚前旅行のおいをけた。

レオさんと旅行だなんて、々と素敵なことが起きてもおかしくないかもしれないと、一瞬で期待を膨らませた私だけど、レオさんはすぐに続けた。

「――というのは表向きの理由で、リックたちとともに隣國へ赴き、例の魔導師を紹介してもらうことになった」

「まぁ」

「うまくいけば、魔法の鏡を作ってもらえるかもしれない」

真剣な表でそう言ったレオさんに、私も深く頷く。

レオさんは忙しいはずなのに、メラニー様のためにまとまった休みを取ってくれたのだ。

きっと複雑な心境のはずだけど、本當に素敵な方だわ。

「それに、本當に婚前旅行としても楽しめたらいいと思っている」

「えっ?」

「もし魔法の鏡を作ってもらえなくても、きっと楽しい旅になるよ」

「レオさん……」

そうか、そうよね。隣國に行っても、必ず魔法の鏡が手にるとは限らないのだ。だからもし駄目でも、レオさんの前であまり落ち込まないようにしなければ。

私が悲しい顔を見せたら、レオさんも悲しんでしまうわ。

「レオさん、ありがとうございます! 婚前旅行、楽しみましょう!」

「ああ、絶対に楽しいよ」

だから笑顔でそう言えば、レオさんもとても嬉しそうに笑ってくれた。

今回の旅行には、リックさんとヨティさん、ミルコさんとエルガさん、レオさんと私の六人で行くことになった。

もちろん陛下は知っていることだけど、大人數で行くのではなく、ひっそりとお忍び覚で靜かに観したいとレオさんが願い出たそうだ。

凄腕の護衛が三人いるし、レオさん自も優秀な騎士様だったのだ。

心の広い陛下は快諾してくれたようだ。

「この旅行の間、シベルちゃんは絶対に俺から離れないでね」

「はい」

隣國へ向かう馬車の中、レオさんは何度目かになるその言葉をまた口にした。

「大丈夫ですよ。普通にしてたらシベルちゃんが聖だということはわかりませんし、あの國は治安もいいですし」

「わかっているが、念のためだ」

レオさんは心配だ。リックさんが言うように、私が聖だということは見た目ではわからないし、隣國には聖はいないけど、平和な國だ。魔はいるけれど、私が一緒なら、それこそ危険區域に行かない限り襲われることもないように思う。

まぁもし魔に襲われても、私が皆さんをお守りしてみせますけどね!

「なんかこの勢いで風呂にまでついていきそうっすよね」

「な……っ!? なにを言う、ヨティ! そんなことするはずないだろう!?」

「どうっすかね。殿下のことだから、「エルガだけでは不安だ……!」とか言いそう」

「…………さすがにそれは……!!」

し間があったような気がするけど、レオさんは私の隣で頰を赤く染めて否定した。

むしろ私が皆さんの浴の見張りをしましょうか!? という言葉が元まで出かかったけど、控えておく。

「レオ、ヨティにからかわれているだけだ。そう熱くなるな」

「わ、わかっている! 熱くなどなっていないぞ……!」

「ちゃんと俺が風呂場の前で見張ってるんで大丈夫ですよ」

「ああ……」

ミルコさんとリックさんに諭されて、レオさんは気を取り直すように咳払いをした。

ヨティさんはいたずらっ子のように笑っている。

この方たちは本當に仲がいいし、今回は他の従者もいないから、なんだかトーリにいた頃を思い出して私も楽しくなってきた。

あの頃は私が聖なんて知らなかったし、レオさんが王子だということも隠していたから、皆本當に家族のように仲がよかった。

この旅では、気を遣わずに皆で楽しく過ごせたらいいなと思う。

王妃編(?)もとい、婚前旅行編突です!

そして新作の短編を書いてみました!

『姉の代わりで直視したら目が潰れると言われている王子と結婚したら「僕をする必要はない」と言われました。』href="https://ncode.syosetu.com/n0948hv/

よろしければこちらも覗いてみてください(*´˘`*)

そしてそして

『私の主人は大きな犬系騎士様 ~婚約者は妹と結婚するそうなので私は魔導騎士様のお世話係になります!~』

小説1巻が9/2に発売となりました!

2巻も10/7に発売予定です!!

1巻、2巻ともにサイン本が予約できます!

數に限りがございますので、よろしければぜひぜひお早めにご予約くださいませ( ;ᵕ;)‬

私初のサイン本です……!

詳しくはぜひ活報告をごらんください(*´˘`*)

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