《お月様はいつも雨降り》第四銃五

札幌駅の地下鉄ホームには、多くの市民が避難していた。自治からの配給の列に並ぶ人々の顔には疲労のが浮かんでいる。

「もう、どこかにミサイルが落ちたのか?」

「警報はずっと続いているけれど……やっぱり戦爭になるのかな」

外國籍の軍用艦による領海侵報が錯綜する中、ミサイルによる攻撃を心配する民間人は、指定された避難場所に移していた。

日本國民の誰もが、都市を狙った連続破テロ事件以來の今まで起こり得なかった事態に対する解決策の見いだせない現狀とに疲れ果てていた。

避難住民の中のは、大切そうに家から持ってきた著せ替え人形を抱えている。

「早くおうち帰りたいな……あなたもそう思うでしょ」

のつぶやきに人形は黙ったままであった。

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防衛省では在日米軍がく前に日本領海から離れていく空母や巡洋艦のきを懸念した。

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「何で、進路を変更したのだ、原潛のきは?」

「哨戒機の報と米軍提供報との差異はありません、日本海で針路を反転しています」

どの分析も予想していなかった勢転換の事態に報が錯綜した。

「それぞれの國でも急激に『黒い』が生じ増加しているらしい」

「まさか、このタイミングで?自國の狀況は?」

「先ほどの『クトネシリカコーポレーション』社域以降の報告はありません、米軍との接収オペレーションは進行中」

「日本海東アジア共同統合軍の空母二隻沈沒、他、掃海艦、巡洋艦、各六隻沈沒」

「まさか!こちらから攻撃命令は発していないぞ、米軍か?」

「それはあり得ない……言いたくはないが、天祐(てんゆう)としか考えられん」

「天のたすけ……それにすがって先の大戦で我が國は敗けたのに……俺たちの役割は無用なのか……そんなの……馬鹿げているだろ」

そこにいた分析の誰一人もが安堵の表を浮かべず、むしろ絶的な表をしていた。

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『クトネシリカコーポレーション』の地下施設には、マモルとマサハルがいた。

「ボウが來てくれるのか」

マサハルはカエデの連絡をけてしだけ聲を和らげた。隣にいたマモルもほんのしだけ笑みを浮かべた。

「久しぶりの再會だな」

マモルは大きなモニターがいくつも配置された機作しながらマサハルに聲を掛けた。

「そうなりそうだ」

「ボウが來るなら、そばにあの子もいるはずだ……俺たちの勝率も確実に上昇する、おっ、米軍さんも北エリアに到達したな、今、外のヒロトやユキオにボウたちの導を頼んでおいた」

マモルはそう言って座席から立ち上がった。

「あいつらは避難させたんじゃないのか?」

「ああいう野次馬がこの狀況を無視すると思うか?それにヒロトなんてどこにいたと思う?」

マモルはモニターの側にいる人形に手を差しべた。

「イツキ様のところでしょう」

和裝の人形はマモルの腕を伝い、彼の肩に乗った。

「市松ちゃん、正解!あいつはガキの頃から忍者みたいな奴だったよ」

マモルはそう言って人形の『市松』に語り掛け、傍らの大きな二つのケースを両手に抱えた。

「マサハル、また、先に上からやらせてもらうわ」

「ああ、俺もすぐ合流する」

「同じ人間を撃つのは忍びないけどね」

「ここの技を一つの國に獨占させるわけにいかない、それにこの世界をあの時に見たような狀況にはしたくない、それに……何より犠牲はなるべくない方がいい」

「マサハル」

「何だ」

「お前、ガキの時と比べにならないほど頭がよくなったな」

「殺すぞ」

「市松ちゃん、殺すぞだって、怖いねぇ」

「いえ、一種の強い表現だと分析いたしました」

「だとさ、先に死ぬなよ、マサハル、お前は馬鹿だから昔から無茶をしがちだ」

マモルは上階に続くエレベーターに乗り込むと彼に笑顔を見せた。

「お前こそ先に死ぬなよ、マモル……馬鹿は俺以上だったろ」

マサハルがそう言ったときは既に扉が閉まり、箱の位置を示す數字は勢いよく上昇していた。

最上階に著いたマモルは警戒しながら、外部カメラと接続したモニターを眺めた。モニターには裝甲車や戦闘車両が列をなす様子が映し出されていた。

「おいおい、戦車までいるぞ、あいつら建ごと吹き飛ばすつもりなのか」

「いえ、ただの示威行ですね、彼らがしいのはここの施設と全システムですから」

「だよな」

マモルはケースを開け、ライフルを組み立てていく。

「補足です、抵抗する者はイツキ様以外、どのような場合でも殺されます」

「先に殺しようとするやつを始末すれば殺されないだろ」

「おっしゃる通り、今、確認いたします」

市松は窓の近くに進み、視野にるものの分析を始めた。

「十機の偵察用ドローン、六機の機銃付き大型ドローンが上昇中です、また、向かいの高層ビルにスナイパーが八人確認できます、建後方についてはメイン監視システムと共有しながらサーチを継続いたします」

「思ったよりもないな、戦車見せておけばこの程度で抑え込めると思っているんだろうな……四十階以上のガラス、全部、排除してくれ、その間の非常階段及び通路は全開錠、各所にダミー人形の設置、正面北ゲートはオープン、そこに奴らを列ごと引き込む」

「防衛用の次元のを開けてもらうよう要請いたしますか?」

「ボウたちの導に支障が出たらまずいのでそれはいい」

「全件、承りました」

市松はマモルの側に戻るとすぐに社のシステムにログインを始めた。すぐに壁にはまった全ガラスが吹き飛び、吹き込む強い風が窓際の機上にあった観葉植の鉢ごと空中に飛散させた。

窓際の障害を寄せながらマモルは初めに上昇してきた偵察用ドローンにスコープの照準を合わせた。市松はマモルの知覚にリンクを開始する。

「今日の風は強いが、そんなに寒くなくて快適だ」

「夜になると急激に気溫が下がる予報です」

「夜まで?そんな時間までもたないだろう」

「もちろん自衛隊と米軍ですね」

「いや……殘念だが、俺たちがだ」

マモルがそう小聲でつぶやいた瞬間、偵察用ドローンは彼の放った銃弾によって空中に機を四散させた。

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