《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》4-29:ぜんぶ上手くいくよ

神話時代。

熱い魔力と冷たい魔力が何もない空隙でぶつかり合い、原初の巨人ユミールが生まれた。

は、當時の熱い魔力が結晶したもの。命の源となった熱を、今も地上へ注いでいる。

日食はそんな太が欠けることだ。

る時、人と神々が弱まる。反対に魔の力は強まる。

神様達に言わせれば、創造される時に人間や神々は熱い魔力を主として象られたみたいだ。僕らはから同じ魔力をけ取り、活力に変えている。実際、ソラーナの『太の目覚めの』は、日差しの魔力を使うことで神々へ封印に抗う力を與えている。

だから、ユミールは日食を待っている。

が欠け、神々を支えてきた魔力も弱まるから。

好機を見計らって、大規模な転移をやるつもりなんだ。

僕らへ降り注いだ全メッセージで、魔の大侵攻――終末の時期は予言されている。オーディンはユミールの企みに気づいたからこそ、日食が起こる日を予想し、終末の日がいつか明言できた。

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「――よっと」

僕はそんなことを思いながら、オーディス神殿へ資材を運ぶ。

夕焼けの荒野へ行ってから、時間はあっという間に過ぎていた。

ユミールが攻めて來る日は、いよいよ3日後に迫っている。

僕は木箱を抱えたまま、階段で城壁を上った。

春の日差しはもう暑いくらい。丘陵地帯には、あちこちに鎧や武の輝きが見える。響き渡る掛け聲は、騎士団や冒険者が陣形を確認するためのものだ。

――大盾、構え!

――おう!

聲を頼もしく聞きながら、南東へ視線を向ける。

王都の城壁へ、馬車や人が長い列を作っていた。近隣の村人達だろう。

一帯が戦場になるから、住民の避難も佳境だ。

「リオン!」

外で準備をしていた冒険者の一団が、僕に手を挙げてくれる。

手を振り返してから、僕は木箱を持って城壁の塔へった。

中は小人達の作業場になっている。白小人(アールヴ)のリーダー、バリさんが微笑んで僕から箱をけ取った。

謝します」

小人達が木箱を開けると、中には拳大の魔石がぎっしり。

黒小人(ドヴェルグ)が太い腕を組む。

「妹さんを守らないとな!」

「はい。あなた方も、気を付けて!」

塔から出て、城壁を走る。丁度、新しい馬車が門をくぐるのが見えた。

中庭は樽や木箱がいっぱい置かれているばかりか、即席のテントまであって、本當に様変わりしている。

ここまでの資材が集まるには理由があった。

ユミールの狙いがこの神殿だというのは、公になっている。

戦士団の拠點にある『霜の寶珠』は封印を守る要。

実際、寶珠が砕かれれば王都の迷宮から魔が溢れだす。ユミールがここを狙わないはずがないから、守りを厚くするのはきっと理にかなっていた。

ただ、公にはできないこともあった。

ユミールの本當の狙い。ルゥに神様――フレイヤがいて、『創造の力』が宿っていることだ。

強力すぎるスキルだから、これを明かせば、今度はルゥを無用の爭いに巻き込んでしまう。

心苦しい気持ちもあった。けど、戦後にルゥに注目が集まってしまうのは、どうしても避けたい。

金貨が震えてソラーナの聲がくる。

『いよいよか……』

なんだか予がして、僕は後ろを振り向く。

服のルゥが立っていた。

「お兄ちゃん」

「ルゥ」

「こっち……來てくれる?」

作業中のみんなに目で斷って、僕はルゥの後を追った。

聖堂の裏手、いつかみんなで訓練をした場所で、妹は口を開く。

「決戦、もうすぐだね」

「うん」

ルゥは目を泳がせていた。

……どうしたんだろう?

「お兄ちゃん、いざとなったら、私がみんなを守るから」

妹はそこで言葉を切った。

の瞳を細める。

「フレイヤ様、このままだと、消えてしまうんでしょ?」

目を見開いてしまう僕に、ルゥは顎を引く。

……フレイヤのことは、僕と神様達だけのになっていた。唯一、王様には伝えたけれど、そこからルゥへ話されたとは思えない。

――言ったら、取り返しがつかないくらい、ルゥへの負擔になりそうな気がして。

「……ルゥ」

「謝っちゃダメ。わかってるよ、お兄ちゃんや神様が、言わないでいてくれたこと。でも……なんとなく、そういう魔力の変化もわかるようになったの」

「そう、なんだ」

「……魔力をる練習、最近、控えめにしてるの。フレイヤ様の負擔にならないように」

かん、かん、と小人達の槌音。冒険者の號令。

上を見ると、薬神シグリスが槍の輝きを殘して、空を舞っていた。ああして神様は、人々の作業を見守っている。

「……時々、思うの」

ルゥは吐き出すように言った。

「フレイヤ様、どうして危険なのに人の中へったのだろうって。きっと、こういう風にみんなが頑張ってるのを、オーディンに見てほしかったのだと思う」

わたしのために。

そんな言葉が、ルゥの口から聞こえた気がした。

妹はの辺りを握りしめている。

「痛いの?」

「違う。怖いの」

ルゥは首を振った。

「私……もしかしたら、オーディンの策に、賛してしまうかも」

背筋が寒くなった。ルゥは右手で左腕を摑み、俯く。

「私、お兄ちゃんが帰ってこないとしたら、辛いよ。きっと寂しくなるよ。だったら、大好きなみんなと、他の世界に逃げてしまうっていう、オーディンの考え方、しわかる」

ルゥは顔を上げて、真っすぐに僕を見た。

「でも……それじゃ、ダメなんだっていうのも、わかる」

僕はルゥと見つめ合った。

妹の肩に手を添える。

今まで、病気の時も、ちょっと喧嘩した時も、こうしてれていればルゥのことはわかった。

でも……今は、妹が僕と違う何かを考えている気がする。手を伝って気持ちが伝わっていかない。

妹は微笑んだ。

「何があっても、お兄ちゃんだけは、今度は私が守るから」

「ルゥ?」

僕は急き込んだ。

「僕だって、ルゥを守るよ! 何があっても、何に替えたって!」

「……ありがとう」

ルゥは笑った。泣きそうな、初めて見る笑顔。

僕はがいっぱいになって、妹を抱きしめる。

「……ぜんぶ上手くいくよ」

うん、とルゥは小さく呟いた。

そして終末がやってくる。

お読みいただきありがとうございます。

次回更新は9月22日(木)の予定です。

(1日、間が空きます)

【コミカライズ版 連載開始します!】

9月23日(金)からコミックノヴァ公式、9月25日(日)からニコニコ漫畫で、それぞれ連載開始します!

コミックノヴァ様に、すでに本作『神の目覚めのギャラルホルン』のバナーが出ていますので、

よければ見ていただければと思います。

(規約の都合でリンクがれなくて恐ですが・・・本當に素敵なバナーになってます!)

今週の金曜日からの連載です!

をさらに増したリオン達の冒険を、漫畫でもぜひお楽しみください!

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