《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》01

皆様、いつも拙作をお読みいただき大変ありがとうございます。ご無沙汰しております すずすけ でございます。

大変遅くなりましたが、続編となる第4部を投稿させていただきます。

更新頻度は毎日とはいかず、ペースがつかめるまで週二回を想定しています。第4部に関する構想は出來上がっていますのであとは文字に起こすだけでございますが、遅筆のでございますため皆様にはご迷をおかけいたします。

加えて、今回も誤字字が多々見られ、皆様にはご不快に思わせてしまう點も多々あると思いますがご指摘いただけますと幸いにございます。本作は皆様のご協力があってり立っていると言っても過言ではございません。何卒、よろしくお願いいたします。

また本作にお付き合い下さると幸いにございます。

それでは、前書きはこの辺にいたしまして、本編をお楽しみください。

すずすけ

「おい、ルベルメル。僕はどうもこの街が好かない」

「おや、どうしたのですかダリアス様?」

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顔をしかめながら歩くダリアスの橫を覗き見るルベルメル。

ダリアスはミニタオルで首元を拭うが、彼の覚える不快はいまだ拭いきれない。

「どうしてここの風はにべたつくような気持ち悪さがあるんだ。それに臭いもだな、たまらん」

「くさい、ですか?」

「ああ、生臭い」

「ダリアス様は港灣都市が初めてでございますか?」

ルベルメルはダリアスが不快にじた空気をいっぱいに吸い込み深呼吸をする。

ダリアスらは港灣都市に向かっている途中にある。

道も整備されてはいるものの、サンティア王國のような石畳までは行かない。土を押し固めたような砂利道が続いている。

二人は周りが開けた砂利道をぽつぽつと歩く。

周りに木々はなく、あっても葉をつけていないの幹ばかりである。なんとも殺風景な景に生臭い風にダリアスは鬱な気分になってしまう。

「僕は初めてだ。父は何度か訪れていたようだが、僕は同行を許してもらえなかったからな」

同行を許してもらえなかったあの時はショックをけたものだが、今となってはどうでもいいことだな、と嘲笑するダリアス。

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やはり初めてだったかとルベルメルは小さく微笑んで自分の腕をペロリと舐める。

「ダリアス様、手か腕を舐めてみてはどうですか?」

「いきなりなんだ? 嫌に決まっているだろう汚い」

「あら、でしたら私の腕を舐めますか?」

黒く走る式が刻まれた腕をダリアスの目の前に差し出すルベルメル。

ダリアスは眉間に皺をよせてルベルメルの腕を押しのける。

「お前の腕も僕と同じく汚いだろう。なんで僕がお前の腕を舐められると思ったんだ」

「乙を汚いだなんて、ダリアス様は心が分からないのですね? さてはおモテになられなかったのでは?」

ルベルメルの軽口にダリアスは鬱陶しそうにため息をついて相手にしない。

「ルベルメル、戯言はいい。それで僕が、港灣都市が初めてだったらどうだっていうんだ?」

照れた様子もないダリアスに、ルベルメルは悲しそうに腕を引っ込める。

「港灣都市は海に臨んだ街です。吹き抜ける風は海からの風。ダリアス様が不快にじられるのはその臭いとそこに含まれた塩によるものですよ」

「海、か。聞いたことはある。これが風というものか、僕は好きになれんな」

「海を見ずして嫌いというのは時期尚早ですよダリアス様。その広大な姿を見れば荒んだダリアス様の心もきっと洗われることでしょう」

「うるさい」

ダリアスは好きになれない風を我慢しながら砂利道を歩く。

海からの風が屆いているのであれば、港灣都市もすぐそこまで來ているということだ。

もうしの辛抱。街についてまずやることはこののべたつきを浴場で洗い流すことだな、とダリアスはミニタオルをポケットにしまいながら決める。

「それにしてもどうして僕たちは港灣都市に向かっているんだ? そこには何がある」

「海を臨んだ港灣都市は貿易の中心地。他國から流れてくる食料や品などは、その多くは港灣都市を経由してサンティア王國にってきます」

サンティア王國商業區に館を構える商人のほぼ全てが商品をけ取るため、足繫く港灣都市を訪れている。

つまりそれだけの行き來が盛んに行われていることを意味する。

「お前たち『次代の明星』の目的はそこにあるのか?」

「私たち、だけではありませんよ。ダリアス様も『次代の明星』の一員なのですから」

「……どうにもまだ慣れんな。まだルベルメルとしか會っていないというのもあるが」

「慣れて下さいダリアス様。あなたは自分の意思でこちらに來たのですから」

二人が歩き続けていると徐々に建が並び立つ街の姿が見えてくる。

「私達の目的は貿易が盛んに行われている港灣都市の麻痺にあります。港灣都市の麻痺はそのまま國における品や食料の不足に繋がります。加えて貿易相手の他國との結びつきも弱くなる。それらによって生まれる市民の不満はつまるところ現國王へ向かうことになるでしょう」

「王家権威の失墜につながるか。そうなればさらにお前た——、僕たち『次代の明星』は國で混を起こしやすくなる、か」

原理としては理解できるダリアスだが、一般市民の生活とはかけ離れた裕福な暮らしをしてきた彼である。どのような不満が生まれ、混に陥るのか想像がつかない。

現國王のヴァーツラフ國王は、こんな卑劣な策を打つ『次代の明星』をこれまで抑え込み、國の安寧を維持し続けてきたのだ。王族として、その力はかなりあるのだろう。

いや、完全に抑え込めていないからこそ、今のダリアスやルベルメルのように國各地で策してしまっているのか。

ダリアスが思う以上に、ひそかに國に混の種は撒かれているのかもしれない。

「だがそれだけ大きな畫策、僕たちだけでできるのか?」

「都市には今回の協力者がいます。到著してまずは彼らと対面するとしましょう」

関所が近くなり、ルベルメルは上著を羽織り、わになっていた腕に刻印された式を下に隠した。

の臭いが徐々に強くなっていく。

ダリアスが『次代の明星』に連なって初めての仕事である。その若干の張と、初めて訪れた街に対する高揚にまとわりつく風の不快など、様々なものがれ混じった初めてのを持った。

関所の前では検問を待つ列ができていた。

ダリアスとルベルメルもおとなしくその列に並ぶ。ここで無為に騒ぎを起こす必要もない。

だが検問もかなり適當なもので、荷の確認は基本的に口頭のみ。荷馬車の場合に初めて中を確認する程度。

裁を取り繕っているものの、中を伴わない杜撰なもの。だからこそ、危険人であるルベルメルもこうやって呑気に列に並んでいられるのだろう。

「なんであれ僕はいち早く浴場でこの不快なを洗い流したいだけだな」

「あらあら。ダリアス様ったら、また私と一緒にを洗い流し合いたいのですか? やっぱり私のは初心なダリアス様にはちょっとばかり刺激的過ぎましたでしょうか……」

わざとをくねらせるようなきを見せるルベルメルに、ダリアスは深く息を吐く。

「お前、本當にいい格しているな。僕がソビ家の人間のままだったなら、今ごろお前は牢屋にぶち込まれているところだったぞ」

「でも今はもう、ただのダリアス様なのでしょう?」

「ああ、そうだ。だから、これはお前の軽口に合わせたただの戯言だよ。……僕たちの番のようだぞ」

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『隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~』

書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売!

TOブックス公式HP他にて予約付中です。

詳しくは作者マイページから『活報告』をご確認下さい。

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