《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月19日:機劇閉幕
長らくお待たせしました
ルストが裝備する殲顎緋砕(センガクヒサイ)は高火力のマグナム弾を何発もけたことで半壊に近い狀態にまで破壊されている。さらに言えば、頭部に至ってはプレイヤーの頭部が一部出している。
(判定ちっちぇえなぁ〜!)
頭ひとつ分の、さらにその一部。せますぎる"當たり判定"にエクレアは僅かに苦笑いしつつ……懐(インベントリ)から拳銃を取り出す。
「ゴブリンも倒せるか怪しい」とまでこき下ろされた販売品のものではなく、ある程度の威力は保障されているベヒーモス高級カスタムの実弾リボルバー。エクレアにとって、飾らない(・・・・)己が手で握る銃こそが真の切り札なのだ。
急廃裝によって電撃菓子3號@GGMCはバラバラに吹き飛んだ。だが縦者たるエクレアを五満足な狀態で拘束から逃がし、そしてこの一瞬一度きりのチャンスをもたらした。であるならば、電撃菓子3號@GGMCは鎧として最良最高の役割を果たしたと言える。
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「貰ったァ!」
エクレア自には”確信”しかないが、この場の二人のどちらでもない神の視點から言及するなら……彼の狙いは間違いなくルストの頭部、それも強化裝甲のヘルムにった亀裂から除くほんの僅かな隙間から見える生の部分へ正確に照準を合わせていた。
最良最高の仕事をした戦機と、最善最高のきで王手をかけたエクレア。彼のきには何一つ間違いはなかった、仮にこの戦いの全てをあらかじめ知っていたとしてもこの狀況になってしまっては同じきをせざるを得ない程に。
だから、”原因”はたったひとつ。
『そうすると(・・・・・)思ってた(・・・・)……!』
最善・最良・最高のそのきに………機を捨ててなお、勝利を貪に求めるその在り方に理解を示せる者が敵であったこと。ただそれだけなのだ。
できなかったのではなく、やらなかった。己の意志で一から十までを考え、その上で選ばない事を選ぶ。それ即ち、選んだ場合に何が起きるのかを知っているという事。
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(急廃裝は降參の意志じゃない。拳一つしか無くても生きる事を諦めない継戦の意志!)
敵手たる電撃菓子3號@GGMCが破裂した瞬間、ルストはその中であるエクレアが戦いを投げ出していないことを悟った。あるいは逃走を選ぶかもしれない、だがそれでもルストは敵が闘爭を選ぶ方に賭けた。
故に、不意打ちによる先手を取ったエクレアが銃を構え、発砲する……本來は構えて撃つまでを合わせてエクレアの「先手」であったそのきの間に殲顎緋砕(センガクヒサイ)が飛び込んだ。
「なっ」
むんず、と拳が砕けた左手でエクレアが構えたリボルバーの銃口を真正面から摑み、そのまま捻じり上げるようにして銃を奪わんとする殲顎緋砕(センガクヒサイ)に、エクレアは反的に引き金を引く。
実弾には破壊屬が付與されているが故に、殲顎緋砕(センガクヒサイ)ではなくルスト本の左手が弾け飛ぶ。だがそれすらも些事と言わんばかりに殲顎緋砕(センガクヒサイ)は止まらない。
大きくいた拳をエクレアが目で追い……それが悪手だと気づいた頃には、既にエクレアの首を殲顎緋砕(センガクヒサイ)の腳部が機械裝甲とは思えないほどになきでクラッチしていた。
『……生相手はちょっと気が引けるけど』
拳で視線を導しつつ腳部ブースターを絶妙な出力で噴かし、側転と倒立を併せたような難解なきでエクレアの首を両足で挾み込んだ殲顎緋砕(センガクヒサイ)は、そのままブースターを最大出力にする。
『……終わり、だ!』
───この時、エクレア自は自分が何をされたのかを知覚できていなかった。否、結果として何が起きたのかは誰よりも実しているが、何故そうなったのかが理解できなかったのだ……目まぐるしすぎて(・・・・・・・・)。
故に、エクレアに何が起きたのかを理解できたのは、隕鉄鏡からこの戦いを見ていた視聴者だけだった。
膝のあたりでエクレアの頭部を挾み込んだまま、片手のみで自を支える倒立狀態からブースターを噴かすことでそのまま縦に一回転。サマーソルトキックのような挙でエクレアごと一回転し、そのまま地面へと叩きつける。
宇宙ではなく地上で飛んで跳ねてを行えるということは、重力圏で自重を完全に支えられる程の推進力を持っているという事。それをグアクロバットなきのみに集約させたその一連の作はかつてはネフィリムホロウにおいて緋翼連理の武裝を全て無力化した勇者にこそ用いられたロボ殺し(・・・・)用の必殺である。
本來はネフィリム、という巨大なマネキンとでもいうべきロボットの首を引きずり回して毟り取る、という斷じて生に使うものではないそれを、戦機というネフィリムの代用をもってエクレアは叩き込まれたのだ。
「ぜ、絶対これ……生に使っちゃ………ダメ、なやつ~…………」
『……加減はしてる』
「うそ、つけ~……」
噓ではない。ルストが本當に終わらせるつもりならとっくに膝か拳を叩き込んでいる。故にエクレアが幸運による食いしばりでHPを1殘し、そしてまだ生きているのはルストがまだエクレアにやってもらうことがあるからだ……厳には、エクレアそのものはどうでもいいのだが。
『……最後っ屁を目論むのは推奨しない……こほん』
それは、裝備者が生きている限りは存在し続けている。ゲーム外への接続、という質を持つが故にメタ視點における無敵を保証された隕鉄の鏡。
ルストはエクレアが展開しているそれへとそっと語りかける。
『……ネフィリムホロウ、私はそこにいる。「自分なら勝てる」と豪語できるなら來ればいい、挑戦はける……そして、ネフィリムホロウ2が発売される。シャンフロエンジンを搭載して進化したネフィリムホロウは覇権間違いなし、なんなら今すぐ予約して』
どこか遠くで発音。それが傭兵団の完全敗北を決定づけるものなのだろうと、エクレアは直でじ取っていた。
そしてなにより、こちらの一大企畫をたった二人でご破産にした上で、それすらもがこの"い"のための踏み臺でしかなかったのだという事実に、もはや苦笑いをするしかない。
「ダ、ダイレクトマーケティングかよぉ〜………」
最後の最後にせめて一発叩き込んでやろう、という悪あがきの意志すら吹き飛ぶような力に、今度こそエクレアは降參を示すかのように力した。
それに対してルストはふっ、と笑みを浮かべる。
『……リベンジならいつでもける。傭兵団全員でネフィリムホロウを始めるといい』
トドメを刺される直前、割れたヘルムから覗くその笑みにエクレアは食獣のそれを幻視した。
◇
『……モルド、何してるの?』
『あ、ルスト。いや、思ったより燃費が悪くてガス欠になっちゃって……ルストが合流するまで防固めてた』
『……ふぅん。で、倒しきったの?』
『ああうん、結構な數の家を破壊しちゃったけど……【玄武】だとちょっと過剰火力気味だった』
規格外戦機亀【玄武】。単純火力で言えば規格外シリーズの中でもトップであろう雙蛇砲を備えた鋼の亀……今は首と手足を甲羅に引っ込めたかのようにを丸めて防姿勢を取っているそれを見つめつつ、ひとまず肩の力を抜く。
『……とりあえず、ペンシルゴンからのミッションは達した』
『そうだね』
ルストとモルドは対GUN!GUN!傭兵団を目的としてサードレマ市街に配置されたが、彼らの撃破を達した時點でここに留まり続ける意味は然程ない。
無論、いるに越したことはない。だが───
『ペンシルゴンさんの言うとおり、最終盤にもなれば組織行なんてないも同じになる。個々の判斷で本拠地に突っ込んでくるプレイヤーで大混戦になるだろうし……戦機は長期戦闘は苦手だから別の戦場で程々に戦ってた方がいいと思う』
『………ん。フォスフォシエ辺りで適當に時間を潰そう』
『じゃあ【玄武】をそっちに渡すよ。インベントリアにれておけば萬が一も無いし』
【玄武】及び【富嶽】を裝備から外したモルドは、規格外エーテルリアクターを含めてルストにそれを譲渡する。
さてどう別の街まで行こうか、そんなことを考えていたモルドはふと、ルストが黒い戦機───確か「黒獅無雙(コクシムソウ)」という名であったはずだ───を裝備したままだということに。さらに言えば、複數のモードチェンジを機構として備えたその戦機で二車の如き姿になっている事に。
『……なにやってるの?』
「ええと……乗れ、と?」
『……ん。リアルじゃ私が乗せる側になるのは無理だし、レアケース』
生は人型でありさらに言えば二車の形にの方を合わせている都合上、うつぶせに近い狀態の馴染の背中にることになるわけで。
非常に複雑な表を浮かべていたモルドであったが、何を言ったところでルストが主張を曲げる事は無いだろうと早々に諦める。仮にモルドが転移魔法を持っていたとしても、味気ないファストトラベルとバイクモードに自らが変形して戦場を駆け抜ける、どちらをルストが選ぶかなど論ずるまでもないのだから。
「……ところでルスト、これってそもそも人乗せる想定だったっけ?」
「……モルド」
「うん」
「……気合でしがみついて」
噓でしょ、とモルドが呟くよりも先に黒獅無雙(コクシムソウ)がフルスロットルをれる方が先だった。
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