《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第51話 帽子職人・ラディメリア

「常連のおじいちゃん、どうしてヴァイスさんじゃ相手にされないんですか? ヴァイスさんは優しいし、とっても強いのに」

ヴァイスさんとリリィちゃんは、おじいちゃんから帽子職人さんの居場所を聞くと出掛けてしまいました。

ヴァイスさんは気にしてないみたいでしたが、私はおじいちゃんが言っていた言葉が気になっていました。ヴァイスさんが何か危険に巻き込まれてしまうような、そんな騒ぎがするのです。

「よりにもよって、あやつとはな…………」

おじいちゃんはグラスを空にすると、難しい顔で呟きます。私はすかさず新しいお酒を作っておじいちゃんの前に置きました。

「リリィちゃんのお帽子は、手にらないのでしょうか……?」

ヴァイスさんは、リリィちゃんのお帽子を手にれる為に帝都からやってきたと言っていました。帝都の場所は正確には分かりませんが、遠い所なのは間違いありません。

折角遠路はるばるアンヘイムに來て下さったのに…………目的を達出來ないのは悲しいです。

なにより…………可い帽子を被ったリリィちゃんを私も見てみたいです。無事に帽子を手にれられたら戻ってくるとヴァイスさんは言ってくれました。

「難しい、じゃろうな…………何故なら」

「何故なら…………?」

私は息を呑んで続きを待ちました。

「あやつは、ラディメリアはな…………人間が────大嫌いなんじゃよ」

壁の一面はそれ自が棚のようになっていて、そこには様々な種類の帽子が飾られていた。そのどれもがそこまで奇抜なデザインではないのにも関わらず、ひと目見ただけで非凡なセンスをじさせる。稀代の帽子職人という噂は、どうやら本當だったらしい。

部屋の奧には魔法書やその他數多くの魔法が置かれている。そんな店と工房が一になったような部屋で、椅子に踏ん反り返った一人のと相対する。

「帽子? 構わないよ」

はラディメリアと名乗った。歳は恐らくフウカと同じくらい。俺よりは年上だろうが、エルフの中では若者に區分されるだろう。何より、自らの才能を信じてやまないその自信満々の表は若者の特権だ。

ローブなのかドレスなのか判斷に困るデザインの服からは元や長く白い腳が惜しげも無く外気に曬されていて、十代の頃なら目のやり場に困ったかもしれない。

癖の強い紫の長髪が背の高いつば広の帽子からぼさっとあふれ出ていて、マントのようになっている。帽子職人だけあって、質の高そうな帽子を被ってるな。期待出來そうだ。

「…………いいのか?」

酒場の爺から聞いていた話と真逆の対応をされ、思わず聞き返してしまう。

ラディメリアの店は大通りからかなり歩いた先、丁度森と人里の境目あたりにあり、俺はその道すがら何十もの渉パターンを考えていた。何を言われようと帽子を作って貰う自信に満ちあふれていたというのに。

「なんだい、その反応は? 帽子を買いに來たんだろう? や、作ってしいんだったか」

ラディメリアは軽快に笑い、俺の反応を待たずリリィに視線を移した。気が付いたリリィがぴん、と背筋をばす。

「可いね。あなたの娘?」

「りりーだよ!」

「リリィちゃん。いいね、サイコーだ。リリィちゃんはパパの事、好き?」

ラディメリアは椅子に座ったまま、前かがみになりリリィと目線を合わせた。

「うん! りりーね、ぱぱだいすき!」

「そーかそーか…………いいね、サイコーだね」

ラディメリアに頭をでられ、リリィがくすぐったそうにをよじる。

同じエルフだからなのか、単にラディメリアが子供好きだからなのか分からないが、ラディメリアはリリィを見て骨に機嫌が良くなった。リリィも初対面のラディメリアに対して全く警戒心を抱いている様子はない。やはり同族同士、シンパシーのようなものをじているんだろうか。何にせよ、気さくなエルフのようで何よりだ。

「それじゃあリリィちゃん、隣のお部屋で頭のサイズ測ろっか」

奧に控えていた助手らしきエルフに、ラディメリアが目線で指示を飛ばす。助手エルフはリリィの手を取ると別室に消えていった。

ラディメリアは助手が消えていったドアが完全に閉じられたのを確認すると────

「人間のお父さん────悪いけど娘は預かった」

────そこには、どす黒い闇に瞳を染めたラディメリアがこちらを睨んでいるのだった。

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