《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》グロリアの涙
「あははははは、お疲れさまでした」
目の前ではサロメさんが苦笑いを浮かべている。
「本當に疲れたのはギルドにってからなんですけどね」
「うっ……」
王都から護衛依頼をけて戻ってきたのがつい先程。道中、他の冒険者との相も良く、パーティー行のコツなどを教えてもらったり今後に生かせそうな話を多々聞くことができた。
今日はギルドに顔を出し、冒険者カードを提出した後はのんびり過ごそうと考えていたのだが、ドアを開けたところ、多くの冒険者が殺到してきたため中々付に辿り著くことができなかった。
「どうして、皆、俺が戻ってくると知っていたんでしょうかね?」
じっとりとした視線をサロメさんへと送る。彼は両腕をスカートの前で組むと気まずそうに目を逸らした。
「すまない、うちの若い職員が口をらせたみたいでな」
そう言うと、サロメさんの代わりにギルドマスターが頭を下げる。話を聞く限り、他のギルド職員が、どうやら俺とサロメさんの通信を聞いていたようだ。
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「まあ別にいいですけど、冒険者ギルド経由でなくても俺が武闘大會で優勝したことは記事になっていたみたいだし」
集まってきた冒険者たちはそのことを引き合いに出していたので、姿を見せたらどちらにせよ群がってきたので大差はない。
「サロメさんも気にしないでください。これはお土産です」
「ううう、申し訳ありませんでした」
年上に頭を下げられると気まずいものがあるので、俺は土産に用意した酒を渡しておく。
「ってこれっ! 『チェリーワイン』じゃないですかっ!」
「何だとっ⁉ ティム、俺の分はないのか?」
二人は予想以上のリアクションをするとバッと俺に顔を向けてきた。
「希モンスターが低確率でドロップするレアアイテムで、貴族ですら滅多に手にらないワインだ。飲むと爽やかな花の香りが口いっぱいに広がるとか……」
「わ、私がもらったんですからねっ!」
ワイン瓶を抱くと必死にギルドマスターの視線から逃れようとするサロメさん。
まるでしの我が子を護るような姿勢なのだが、初対面のウイング氏と同じ態度なので、思い出してはついつい笑いそうになった。
「実は俺のユニークスキルのお蔭で、レアアイテムが出やすくなってましてね。市場に卸すわけにもいかないので、裾分けです」
ウイング氏とは毎晩のようにこのワインを酌みわしていたが、良い酒というのは親しい人にも勧めたい。
これまで親になってくれたサロメさんにはこのくらい贈ってもよいだろう。
「ティムさん、ありがとうございます! 一生ついて行きますよ!」
「酒一本で大げさな……」
極まった様子を見せるサロメさんに俺は苦笑いを浮かべた。
「それで、更新手続きや例の(・・)手続きが終わるまで三日かかるけど、その間はどうする?」
ギルドマスターの問いかけに俺は悩む。々手続きがあるので三日かかるのは妥當な線ではある。
「一応、仮のギルド証を発行すればダンジョンにも潛れますよ?」
俺がダンジョンに潛りたいと考えていると思ったのか、サロメさんが気を利かせて提案をしてきた。
し考える。ガーネットやフローネには危険域まで行かないようにしながらダンジョンに潛ることを許可している。
であるなら、俺もしくらいは潛って戦闘経験を積むべきだろうが……。
「いえ、止めときます」
今の俺は注目を集めすぎている。ここのダンジョンのモンスターは五層まで既に攻略済みだ。わざわざ潛らなくても良いだろう。
「取り敢えず、適當にぶらぶらする予定なんで、後のことはお願いしますね」
「解りました。お任せください」
サロメさんはワイン瓶を抱きながら満面の笑みを浮かべて返事をした。
「さて、飯にでも行くとするか……」
護衛依頼で戻ってきたのが晝前で、冒険者ギルドで々やっていたせいで晝時を完全に外してしまっている。
ギルドを出た俺は、味しそうな匂いが薄まりつつある繁華街を歩いていた。
「ん?」
ふと、何かが引っ掛かり『索敵』のスキルを使う。すると、後ろに青い點が二つあり、一定距離を保って俺についてきた。
最近気付いたのだが、この青い點の輝きにも意味がある。濃いの方がより親しいと思ってくれている相手らしく、ガーネットはもの凄く青く、フローネは水に近い。
後ろからつけてくる二人は、片方はガーネットにも劣らぬ青い點で、もう一つもそれに近いをしていた。
俺はし足を速めて進むと、曲がり角にる。そしてそこにあった荷箱のにを隠した。
「あれっ? どうして……」
「うそっ! 見失ったの?」
つけてきた二人の正が判明する。グロリアとマロンだった。
「よっ、二人とも。久しぶりだな」
おろおろと狼狽えている二人に後ろから聲を掛ける。
「ティム君⁉」
「ティム⁉」
「後ろをつけるのはあまり良くないぞ」
「うっ、ごめん。なんて聲掛けるか悩んでるうちにティムがどんどん進んでいっちゃうからさ……」
「別に、普通に聲かけてくれればいいのに……」
そう言えばと、ふと思い出した。この二人は、俺が危篤という偽報を得たとき他の冒険者と違い、俺を助けるために行してくれたのだという。
「二人ともありがとうな。俺が死にそうだという話を聞いて、ダンジョンに挑み続けたんだろ?」
事を話すわけにはいかなかったので仕方ないが、彼たちが必死に行してくれたのはサロメさんより聞き及んでいる。
サロメさんからはそれはもう何度も「禮を言ってください」と念押しされた程だ。
それくらいこの二人は必死になってくれていたので、俺も罪悪を覚えている。
「べ、別に……。あんたのためだけじゃないけどね。私たちも冒険者としてやり直してるから鍛える必要があったし、たまたま目的が一致したってのも……」
マロンらしからぬ態度。彼は杖を両手で持つと恥ずかしそうにもじもじとしていた。
「その辺の苦労話は置いておいて、これから飯を食いに行こうと考えてたんだけど一緒しないか? 積もる話もあるだろうし」
いつまでもこんな路地裏で立ち話もなんだ。俺は彼たちを飯にう。
「私はいいけど、グロリア。あんたもそろそろ何か話しなさいっ! ひっぱたくんじゃなかったの?」
「まあ、仕方ないか」
ふらふらとグロリアが近付いてくる。俯いており、路地裏が暗いので表までは解らないが、彼にはそれをする資格がある。
俺が覚悟を決めていると、
「ティム……君?」
ふわりと風が吹き、良い香りが鼻腔をくすぐる。グロリアの顔が間近に見えるのだが、彼は目に涙を一杯溜めていた。
「ティム君! 本當に生きてて良かったよぉ~~!」
不意に抱き著かれる。元がグロリアの涙で濡れ冷たくなり、腹部にかけてらかいものが押し付けられる。俺は、グロリアの行に驚き、が熱を持ち始めた。
「ま、マロン何とかしてくれないか?」
まさか泣かれると思っていなかったので、どうしてよいかわからない。
「それがお詫び代わりなんだから、諦めなさいよ」
「ヒックッ! ヒックッ!」
目の前にはグロリアの頭がある。俺は子をめるように彼の頭をで続けるのだった……。
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