《無職転生 - 蛇足編 -》23 「焼きおにぎり」

目覚めると、薄暗い寢室から誰かが出て行くのが見えた。

誰か、などと他人行儀な言い方をすべきではない。

時間のスケアコートだ。

彼は私の目覚めを確認すると、ああして無言で部屋から出て行くのだ。

「ふぁ……」

私はあくびを一つした後、を起こした。

「……」

私の名前は七星。

七星靜香。

別の世界からこの世界にやってきた子高生。いわゆる転移者(トリッパー)だ。

元の世界に戻るために転移魔の研究と実験を繰り返していたが、どうやら今すぐには帰れない上、この世界に長時間いると病気になって死ぬ……と判明したため、ペルギウスの配下『時間のスケアコート』の時間停止能力を使って時間をスキップしつつ、月に一度だけ目覚める、という狀況が続いている。

月に一度の目覚め。

1日は短い。水浴びをして、ご飯を食べながら世界の狀況や、起きた出來事を説明してもらえば、終わってしまう。

そのうえ、私の主観で言えば12日で1年だ。

あっという間に月日が過ぎていく。

そのことに、以前の私だったら焦りの一つも覚えただろう。

だが、最近はルーデウスのおもあってか、心穏やかに過ごせている。

……のだが、一つだけ問題がある。

スケアコートの時間停止能力だ。

この能力には一つ、大きな欠點があったのだ。

「……お腹すいた」

そう、時間停止から目覚めた時、とてもお腹がすくのだ。

ペルギウス曰く、私が異世界人で、魔力が存在しないのが原因だろうから、大きな実害は無いとのことだ。

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本當に実害が無いかどうかは信じるしかないけど、とにかく目覚めた時はハラペコになる。

ぺっこぺこだ。

丸一日、何も食べなかったかのような飢えが、私を襲うのだ。

今日もまた、私は目覚めた直後、すぐに何かを食べなければ倒れてしまいそうな飢を覚えた。

しかし、食事はまだだ。

私は寢臺から降りて、部屋を出た。

目指す場所は、洗い場……すなわち風呂場だ。

水浴びはペルギウスの居城に滯在する上で、必須の行だ。

なにせペルギウスは、きれい好きだ。

この凄まじく広い城の中には、ゴミ一つ落ちていない。

當然ながら、そこに滯在する人間も、汚くてはいけない。

奇麗にしていなければ、シルヴァリルに疎ましい目で見られてしまう。

だから私は風呂場に直行し、空腹を我慢しつつを洗う。

手ぬぐいと石鹸を手に、寢ぼけ眼をこすりながら、ごしごしと。

それが、この城に滯在する者の最低限のマナーだ。

水浴びを終えてサッパリした後、空腹でへたり込みそうになる足に活をれつつ自室へと向かう。

寢室とは別の、自分に割り當てられた部屋だ。

そこには、誰かがいる。

ルーデウスやザノバ、あるいはシルフィやアイシャといった人が私を待っていて、相手をしてくれるのだ。

頻度としては、ルーデウスが一番多いか。

「やあナナホシ、おはよう」

今日もまた、ルーデウスだった。

私は彼の姿を見ると、安堵する。

彼は、この飢に終止符をうってくれる存在なのだ。

そう、彼は私が空腹狀態にあると知ってか知らずか、いつも料理を持ってきてくれる。

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カラアゲやカレー、クリームシチューにとんかつ。

元の世界でよく食べていた料理を再現し、持ってきてくれる。

たまに変なのも來るが、それでもまずくはなく、ちょっと違うねと笑いの種になる。

「すんすん……」

今日は、部屋の中に香ばしい匂いが充満していた。

ああ、この匂い……ああ。

今日はなんだろう……。

「ごくり」

口の中に唾が溜まってきて、思わずを鳴らしてしまった。

お腹もグーと鳴った。

はやく食べたい。

私の胃にを支配されたかのように、フラフラとテーブルの方に近づいた。

「おはよう」

ルーデウスはテーブルを窓際まで移させ、その上に七のようなものを置き、何かを焼いていた。

三角形の形をしただ。

彼はうちわを左手に、ハケと菜箸を右手に持ち、そのを転がしながら、何かを塗っていた。

ハケについたのは、黒に限りなく近い、こげ茶

そして、それが塗られた三角形のが七の上に置かれると、チリチリという音と共に、香ばしい匂いが周囲に充満する。

間違いない。

あの黒い……醤油だ。

「今日は焼きおにぎりにしよう」

私はその言葉に承諾するかのように、席についた。

テーブルを移させたせいか、窓の外がよく見えた。

ペルギウス自慢の庭園に、白い雲海。

ファンタジー世界ならではの絶景が広がっている。

いや、元の世界でも、行く所にいけば見れるのかな……? マチュピチュとか。

確か、日本にもマチュピチュってあるんだっけ。

「……」

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見ると、テーブルの上には布を掛けられた一枚のトレイがあった。

そっと布をめくってみると、そこには白いおにぎりが並んでいた。

流石に海苔は無いようだ。

「焼きおにぎり……初めて食べるわ」

「えっ? 食べたことないの?」

「うち、あんまりおにぎりって作らない家だったから」

「は~……おにぎりをねぇ……」

ルーデウスは得心がいったような、いってないような、微妙な顔で頷いた。

でも、あの顔には覚えがある。

ジェネレーションギャップをじている時の顔だ。

でも、私の家がそうだってだけで、運會や社會見學の時におにぎりを持ってくる子はたくさんいた。

年代のせいじゃないはずだ。

「さ、どうぞ」

コトリと音を立てて、一枚の皿が私の前に置かれた。

そこには、湯気を立てる、二つのおにぎりがあった。

「味噌もあるぞ。飲むか?」

ルーデウスはそう言うと、足元から大きな鍋をテーブル上へと持ち上げた。

鍋の蓋を開けると、ふわりと味噌の香りが漂った。

私は返事をしなかったが、ルーデウスは私の返事などわかっているとばかりにお椀を取り、オタマを使って中を注ぎれた。

お椀が木製なのは、彼のこだわりなのだろう。

味噌ったお椀が目の前に置かれると、その味が想像され、口元が緩んでしまう。

もちろん、この世界の味噌を飲むのは、今回が初めてではない。

すでにルーデウスは何度も持ってきてくれている。

かつてのように、ダシがっていないということもない。

持ってくる度に、完度が上がっているようにも思える。きっとルーデウスの家では、シルフィやアイシャが頑張ってくれているのだろう。

「いただきます」

私は手を合わせて一禮。

その後、焼きおにぎりを食べようとして、一瞬迷った。

すぐ脇には、ナイフとフォーク、そして箸が置いてある。

どれで食べてもいいよ、という配慮だろう。

「……」

だが、私はあえて、素手をばした。

お行儀が悪いのはわかっている。

だが、おにぎりと言えば素手、というイメージが強かった。

素手でおにぎりを食べる作に、憧れていたのかもしれない。

アツアツの塊を指先でつかみ、持ち上げて口に運んだ。

カリッとした食

パリパリのおこげを奧歯で噛みしめると、醤油の香ばしさが口中に広がった。

さらに、噛み跡から見えるのは、ホカホカの白いご飯だ。

醤油と白米が合わさった時の味が、脳の片隅に思い浮かぶ。

私は口中のものを飲み込む前に、二口目をがぶりと噛み付いた。

「……!」

途端、口の中に強い刺激をじた。

中に、何かがっている。

酸っぱい。

これはもしかして……。

「梅干し?」

「そそ。こないだ、アリエルの所にいったら、庭園を自慢されてな。その中に梅……に良く似た木があったんだ。試しに実を幾つか持って帰ったらこれが大正解でさ」

「へぇ……」

ルーデウスはその後、梅に良く似た木の名前や由來、持って帰ろうとした時にアリエルに「誰を毒殺するのですか?」なんて言われたという逸話を語りだしたが、私は興味がなかった。

そんなことより梅干しだ。

元の世界では、あまり食べなかったものだ。

さほど好きでもなかった。

しかし、どうだろう、この酸っぱさと、梅獨特の風味は。

既に口の中にご飯が一杯にあるというのに、さらに津波のように湧き出てくる唾

は口中をトロトロにし、白米と梅干し、そして醤油味のおこげを混ぜあわせていく。

白米と梅干し、この二つがよく一緒に食べられている理由が、今わかった。

私は口中のものを飲み込む前に、三口目にかぶりついた。

はしたなくも口中一杯に焼きおにぎりを頬張ると、ほくほくのご飯と、醤油味のついたおこげ、そして梅干しの酸っぱさが合わさった。

ああ……味しい。

「んっ……」

飲み込む瞬間にに一瞬突っかかったため、味噌で流し込む。

薄味の味噌は、梅と醤油の味を洗い流し、口の中をさっぱりと爽快にさせてくれる。

「ほふっ……」

息継ぎをしながら、食べると飲むをループさせる。

すると、あっという間に一つめの焼きおにぎりが無くなった。

味しかった。

「次のはおかかだ。原料は鰹じゃないからちょっと風味は違うけど、うまいぞ」

おかか。

それはよく食べていた。

特に稚園の時、ふりかけの定番といえば、たまごとおかかだった。

あの味を再現したというのか……。

早く食べたい。

「なあ、ナナホシ。食べながらでいいんだけど」

「ん?」

「ちょっと相談があるんだ」

嫌な予がした。

彼は時折、相談事を持ってくる。

子供がどうだとか、ちょっと妻と口げんかしちゃったけど何が悪かったのか、とか。

もちろん、私も世話になっているだ。

出來る限り頑張って、自分の考えを言う。

何かの參考になればと思って。

でも時に、返答に困るような、重い相談をされることがある。

私にそっくりの人形を作ってきて、実はこれエッチなこともできちゃうんだ、とか。

シルフィに中々第三子が出來ないんだ、とか。

そういう時も一応、何かしら答えはするけど、參考になっている気はしない。

私は、人生経験のない子高生にすぎないのだから。

「なに?」

「実は、ルーシーが……」

ルーシー。

ルーデウスの長

私の記憶にあるのは、小さくて耳が長くて元気一杯で、し恥ずかしがり屋の、あのルーシーだ。

もう、隨分長いこと會っていない気がする。

今、何歳ぐらいなんだろうか。

ていうか、あのルーシーが、一どうしたというのだろうか。

まさか、グレて暴走族になったとかじゃあるまい。

夜な夜な馬で路地を走り回り、喧嘩に明け暮れた挙句、周囲の盜賊を併合してグレイラット連合を作り全國制覇に乗り出すも、最終的にはどっかの軍隊に制圧されて、今は鑑別所にいるとか……。

「クライブ君と付き合いだしたんだ」

「……」

クライブ。

は、確かクリフとエリナリーゼの息子だったはず。

ルーシーにとっては、なじみか。

「ごめん、二人って今、何歳だったっけ?」

「ルーシーが14歳で、クライブ君が12歳」

14歳と12歳。

クライブの方がちょっと若いが……。

でも、誰かと付き合うというのであれば、決して早すぎるということは無い。

私は12歳の頃は、誰かとするなんて、欠片も考えなかったけど。

しかし、よかった。

どうやら、今回はそれほど重い話ではないようだ。

「反対なの?」

「別に反対してるわけじゃないけど」

「じゃあ、何が問題なの? 相談なのよね?」

「いや、父親として、何か言っといた方がいいかなって思って」

父親として何か……。

「何を言うつもりなの?」

「いや、こう、もいいけど、勉強もちゃんとしなさいとか。避妊はちゃんとしなさいとか」

「最後はやめといた方がいいわ。大切なことだけど、下世話すぎるし」

「あ、はい」

もし、私が彼らの立場なら、どうだろうか。

13歳前後、中學一年生ぐらいの頃にクラスの誰かと付き合ったとして、そのことを父親に口うるさく言われたら……。

私だったら嫌だと思う。

そんなのわかっている、としか言えないし、場合によっては反発しちゃうだろう。

ルーシーがどうけ取るかは、わからない。

でも、ルーシーはルーデウスに認めてもらおうと頑張っていたはずだ。

何分、昔のことだから、最近どうかはわからないが……でも、真面目な子だから、今も頑張っているだろう。

それが、ちょっとした息抜きをした途端に父親から小言がきたら、どうだろう。

普段頑張ってて、疲れたからと羽をばした途端に、父親が「もっと勉強しろ」と口うるさく行ってきたら。

……やっぱり、嫌なんじゃなかろうか。

なら、今は放っておいたほうがいい。

でも、13歳前後という若さでに興じて、勉強やスポーツに戻ってこれるのだろうか。

私はについて詳しく知らないから、なんとも言えない。

ただ、世の中であれほど熱中する人が多いのだから、戻ってはこれないだろう。

うーん……。

「そうね、言い方次第だと思うわ」

「言い方」

「學校を卒業するまでは、節度あるお付き合いをしなさい……とか」

こういうのは言い方次第だろう。

頭ごなしに否定したり、興味ありすぎる風な態度は、よくない。

そして、確かグレイラット一家は、7歳から魔法大學にかよっていたはず。

卒業する頃には、ちょうど人になる。

その後なら……まあ、自己責任だろう。

「あ、なるほどね。節度か。いいワードだな。わかったよ。ありがとう」

ルーデウスは、ほっとしたような顔で、息をついた。

どうやら、今回はうまいこと相談に乗れたようだ。

結果としてどうなるかわからないけど。

「まあ、食べてくれ。次はどっちにする? 梅? おかか?」

ふと、自分の皿を見ると、おかか味がなくなっていた。

先ほどの相談事を聞いた時に、食べてしまったのだ。

味が全然わからなかった。

味しかった、という覚は殘っているが。

よし、次はもっと味わって食べよう。

「おかか」

「ほい」

ルーデウスは、白いおにぎりにハケで醤油を塗りつけ、七の上に置いた。

數秒後、チリチリと醤油の焦げる匂いが周囲に漂い始める。

香ばしく、そしてほんのりと甘い香りだ。

おにぎりを二つ食べたばかりだというのに、私の口中に唾が溜まりはじめた。

「室で飯を焼くなど、貴様には常識が無いと見えるな」

と、そこで部屋に誰かがってきた。

白をベースにした豪華な裝にを包んだ、銀髪の男。

ペルギウスだ。

背後には、シルヴァリルの姿もある。

「ああ、これは申し訳ありません。換気はしているのですが……」

「良い。貴様に常識がなかろうが、我がケイオスブレイカーは火にも強い。この程度なら、染み一つ出來ん」

「寛大な判斷、謝いたします」

「ふん」

ペルギウスは鼻を鳴らすと、席についた。

「して、何を食べている?」

「焼きおにぎりというものです。握って固めた米に、醤油や味噌を塗り、焼いて食べるのです」

「ほう、聞く限り、そこらの冒険者が食しそうな代だな」

「庶民の食べですから」

「一つもらおうか」

ペルギウスはいつもこうだ。

最初は調理法が貧乏臭いとか、見た目が悪いとか言う。

でも、食べないという選択肢は無いのだ。

ルーデウスはそれを「わかっています」とばかりにけて、焼いていた二つのおにぎりの片方を、ペルギウスの前に置いた。

私の前にも、おかか味が置かれる。

「手で食べるのか?」

ペルギウスは私の汚れた指先を見て眉をひそめたが、

「ご自由に」

ルーデウスの返答にナイフとフォークを手に取り、焼きおにぎりを切り分けた。

そして、切り分けた塊を、フォークで口の中へ。

優雅な所作だ。

指先と口元を汚している自分が恥ずかしくなる。

「いかがですか、ペルギウス様」

「ふむ……」

一口食べて、ペルギウスは眉をひそめた。

口に合わなかったのだろうか、

「ペルギウス様、いかに異世界の料理とはいえ、無理に食べる必要は……」

シルヴァリルがそんなことを言い出した。

食べてもいないくせに……。

こんなに味しいのに……。

「いや、懐かしい味だ」

「懐かしい?」

「かつて、ラプラス戦役の頃、兵士の糧食に似たようなものがあった。固く焼いたパンをソースに浸し、焦げ目がつくまで焼いて食べるのだ」

「……」

「やたらと濃く、決してうまいものではなかったが……しかし、當時のことを思い出す」

ペルギウスは目を細めて、窓の外を見た。

そこにはとりどりの花が植えられた庭園と、白い雲海が広がっている。

ペルギウスが過去にどんな思いを持っているのか、私は知らない。

彼は武勇伝はよく話すが、悲しい過去はあまり話さないのだ。

「ルーデウス」

「はい」

味であった」

「お末さまでした」

私は二人のやりとりを見ながら、おかか味のおにぎりを食べていた。

あ。

また味わうのを忘れてしまった。

まあ、味しいのは間違いないんだけど……。

もっとじっくり味わいたかった。

しかし、これで3つ目。

そろそろお腹も膨れてきてしまった。

満腹は味覚の天敵だ。

どれだけ味しいものでも、お腹が一杯の時に食べると、味が落ちてしまう。

特に、味の濃いものはそうだ。

あと1個。

それが、私の胃袋がおいしく味わえる限界だろう。

最後はおかかにするか。

でも、おかかはすでに二つ食べた。

梅の方がいいだろうか。

まてよ、半分ずつ塗ってもらうというのはどうだろうか。

いや、梅とおかかでは焼き時間が……。

「さて、締めにしましょう」

ルーデウスはそう言うと、テーブルのやかんを持ち上げた。

彼はやかんの外側に手を當てて、數秒ほどじっとしていた。

すると、やかんの口から湯気が出始めた。

何をしているのかと思ったが、どうやら魔を使って溫めていたらしい。

ここまで匂いは漂ってこない。

中にっているのはなんだろうか。

「焼きおにぎりといえば、最後はコレです」

ルーデウスは焼いていたおにぎりをにいれ、やかんの中を注いだ。

ふわりと香った匂いで、私はやかんの中がわかった。

お茶だ。

しかし、その香りは紅茶のものではない。

緑茶だ。

「お茶漬け!」

思わずんでしまった。

「お茶なんて、あったのね」

「あぁ……まあ、紅茶も緑茶も、原料は同じだしね」

焼きおにぎり、元の世界では食べたこともなかったが、こんな食べ方があるのか。

そして、お茶漬けといえば、締めの定番。

お腹が一杯でも十二分に味しく味わえる。

「さあ、召し上がれ」

私は箸を手に取り、お茶に浸った焼きおにぎりを割り開いた。

清涼のある緑茶の香りが、食を増進させる。

「いただきます」

私は一心不に、お茶漬けをかきこんだ。

緑茶はおこげをふんわりとらかくし、醤油の濃い味を中和してくれている。

サラサラとした食は、まるで飲みのようにスルスルと口の中を通過していく。

さらに、おにぎりの中にっている梅を割れば、梅茶漬けだ。

これなら、いくらでもってしまう。

「ふぅ」

あっという間に完食。

食べている時はいくらでも食べられると思うが、いざ食べ終わるとお腹は一杯で、満腹と満足を満たしている。

視界をしはずすと、庭園と、雲海。

さながらピクニックにでも來て、お腹いっぱい食べたかのような、そんな気分。

幸せだ。

「ペルギウス様の庭園って、綺麗ですよね」

ぽつりと呟くも、ペルギウスは返答をくれない。

當然という顔で、茶漬けをゆっくりと口に運んでいた。

ルーデウスも何も言わず、おにぎりを焼かずに食べていた。

「……」

靜かな時間。

時折、ルーデウスが味噌をすする、ズズっとした音が響くぐらい。

この島にはたくさんの木々があり、花がある。

けれども鳥はいない。その他の小もいない。

それがなんとも不思議な気分にさせてくれる。

こんなところで、おにぎりを食べ、お味噌を飲んでいる。

それが、とてつもなく幸運なことのように思えてきた。

私がこの世界にきてしまったのは、どう考えても不幸な出來事だというのに。

でも、不幸中の幸いというには、あまりにも幸せな一時だった。

「ルーデウス」

「ん?」

「私、絶対に帰るから」

「頑張れよ」

もし、無事に帰ることができたら、世界中のこういう所をめぐってみよう。

んなれたおにぎりを持って。

水筒にお味噌れて。

小さな容で醤油を持って行き、現地で付けて、許されるならその場でちょっと焼いて食べよう。

そう思うのだった。

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