《【書籍化】薬でくなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖は錬金師に戻ります―》の襲撃 2

(でも、公爵様一人で倒すのには多すぎる)

私は足が震えた。

公爵様は強い。ほぼ普通に魔法が使えているみたいだけど、他の人達は騎士にしては弱いように見える。

例外はいるけど……。

カイだけは、善戦してる。あれ、魔法だけなのかな?

蹴りの一撃で魔狼の腕を吹っ飛ばすとか、剣を盾に弾戦してるみたいな気が……。強化の魔法にしては、なんか強すぎ?

そんな二人がいても、三十は多すぎた。

二人を避けてこちらにも來てしまい、他の騎士達がなんとか防しているだけになっている。

「リズ、私も出ます。萬が一の場合に備えて、あなたも一緒に外へ。馬車の中にいると、逃げられなくなるわ」

アガサさんが馬車から降りて剣の鞘を払った。

「アガサさん、剣が使えるのですか?」

「それもあって、公爵様が砦へ移される時は、私が召使いとして同行しているの。でも私も魔法がほとんど使えないから、時間稼ぎしかできないの。だから私が盾になっている間に逃げて。そうしたら、いずれ公爵閣下が助けて下さるはずだから」

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そしてアガサさんは私に向き直ってしゃがみこみ、私を抱きしめてくれる。

「子供が死んではいけないわ。あなたにはこの先、沢山の時間を過ごすことができる。生きて、できたらアインヴェイル王國に何か一ついいことをしてくれたら嬉しいわ」

死地に行くようなことを言い、アガサさんは私から離れた。

し距離を開けた場所で、私を背後に庇うように立ち、向かってくる魔を見る。

「どうしよう、どうしよう」

私は心の中で右往左往する。

アガサさんも攻撃魔法は難しいらしい。なのに私を守るだなんて。

公爵様は快調に魔を切り飛ばしているけど、數が多いからしばらくかかるはず。

近くで倒れている兵士さんも心配だ。

何か……。

私ははっと思いついて、地面に転がっていた石で魔法陣を刻む。

その上に、側にあった白い石を置いた。

石英だ。

「水晶の代わりになるはず」

そして私は、指先をかじって石にをたらしてれ、最後に魔法陣にもう一本線を加えた。

パチッと火花が散るように、石がる。

そのままは淡く石に宿った。

私はぎゅっとをかみしめて、石の中に自分の魔力を送る。

本來なら、水晶で行う魔力石を作る錬金だ。

石英は水晶にとても近しい石だと、錬金の先生に聞いていた。だからできると思う。

魔力が上手く流れない中、ぐっと押し込むようにした後、が消えた。

すると石英が、淡い青のに変わっている。

「アガサさん。これを使ってください。魔力石です」

「え!?」

目を丸くして私のやることを見ていたアガサさんに、石を渡す。

「これを使えば、不足分の魔力が補われて、魔法が使えるかもしれないので、試してください」

「わ、わかったわ」

うなずき、アガサさんが困した表のままで魔法を使う。

「盾よ!」

アガサさんがそう言うと、彼が指さした方向にいた騎士の前に、の盾が現れた。

毆りかかっていた魔狼の拳を、騎士の直前での盾が防いだ。

負傷しなかった騎士は、魔狼の腕を切り飛ばし、心臓を貫いた。

「よし」

私は同じ方法で、さらに三つの魔石を作った。

「アガサさん。これ、二つは他の人にも」

「ありがとう!」

効果を知ったアガサさんは、け取ってすぐに近くの騎士に渡す。

それで一気に、こちらの戦力が増強され、狀況が変わった。

次々と魔狼が討ち取られて行く。

公爵様が半分を切り倒した頃には、私の周囲に近かった魔狼の半分も倒されていた。

自分の近くに立ち上がる魔がいないことを確認した公爵様が、こちらの殘った魔を倒し、あっという間に敵の數がわずかになる。

「これで、大丈夫」

へろへろと、私はその場に座り込んだ。

私もそう魔力が沢山ある方じゃない。だからもう空っからで、だから目が回りはじめた。

が傾くのをじつつ、見えた景は、魔狼が一匹だけ殘っている狀況。

そちらに騎士達がかかっていく中、公爵様がこちらに走ってくる。

「公爵様、ちょっと焦った顔もできるんだ……」

筋が死んでる人だと思ってたけど、人並みに変化もできるらしい。

なんて失禮なことを考えつつ、私は意識を失った。

※※※

「おい!?」

目の前で、子供が倒れる。

最近拾った、薄く桜がかった髪

今や敵國といっていいラーフェン王國の人間ではあったが、あちらで殺されかけていたことと、まだ人にも達していない年齢だということ、なにかしら報が得られそうだという理由もあって、手元に留めることにしたのだが。

目を閉じて橫たわるは、息はしている。

死んだわけではなく、眠っているようだ。

「閣下、私が」

近くにいたアガサが、駆け寄っての様子を確認した。

「気絶しているだけのようです。良かった……」

ほっとするアガサに、私は尋ねた。

「一何があった? この娘はどうして倒れたのだ」

「はい、実は……」

アガサが語ったのは、驚くような話だった。

三十もの魔狼をどう防ぎ、アガサ達をどう逃がすのかと考えている間に、急に騎士達が本來のような魔法を使い出したので、驚いてはいたのだ。

何が原因かと思えば、拾ったリズが、魔力石をこの場で作ったという。

「一どうやって」

「よくわかりません。何か地面に描いて、石を拾っていたのですが。ああ、手を怪我していますね」

アガサの指摘に指を見ると、小さく切ったような傷があった。

まだ乾いていないところを見ると、し深い。

を利用する魔法でも使ったのか。

「何にせよ、意識が戻ったら聞き取りをするしかないな」

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