《【書籍化】薬でくなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖は錬金師に戻ります―》その日の宿で

魔力。

それは、この世界の立時から存在する力だ。

霊も人もその力を使っている。

使う者によって良くも悪くもなる力で、最初は魔が主に使っていて、やがて人がその技を編み出したので『魔』の文字がっている。

今では神殿で『この力をだたしく使うため、自分を律することが神の試練』なんて教えていたりする。

それに強い魔力を持つ魔王は神として畏れ崇められている。

人の國に猛威を振るわないようにと、欠かさず供をささげられたりしている魔王もいるらしい。

そんな中、長く魔王と呼ばれ続けているのは、人の世にあまり干渉しないものの、時には大きな破壊をもたらした者達。

だけど人が來ないような場所に居るので、崇めるよりも敬して遠ざかるしかない。

各王國の辺境地にいるらしい。

(ラーフェン王國だと、闇の谷に住んでるというけれど)

サリアン殿下がくれたのは、魔王の薬というのだから、ラーフェンの魔王の作ったものだと思う。

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だから効果が出て當然だ。

一方で人の持つ魔力は千差萬別。

平民などは、コップを水で満たすとか、薪に火をつける程度のことしかできない。

それでも火打石を使ったり、が辛い時に井戸から水をくみ上げるよりは楽だ。

貴族はもっと大きな魔力を持つ人間がほとんど。

王族なら、サリアン殿下のように姿を隠す魔法を使い、牢にいた私にをこっそりと與えることだって可能だし、魔は魔法だけで倒せる。

下級貴族でさえ、聖になる前のアリアでも、やろうと思えば火球の魔法なども使えたはずだ。

(やだこわーい! とかぶりっ子のふりして魔法は練習してなかったみたいだけど)

アリアが霊を惹きつける力をに付ける機は、容易に想像できた。

私と差をつけるため、継母が蝶よ花よと育てたアリアが、見知らぬ國へ駆け落ちして、貴族らしい生活が送れず苦労する狀況に、満足できるはずがなかったから。

元の生活に戻りたくて、なんでもいいからと自分が崇められる方法に飛びついたんじゃないのかな……。

急にあんなことになったのだから、ものすごく怪しい手段じゃないのかなと私は疑っているけど。

結果、それが大當たりだったわけだ。

駆け落ち相手はどうなったんだろう。

金銭が盡きて、生活が苦しくなったところで男は見切ったのかも。

自分が裕福になった後も、一緒にラーフェン王國に戻らなかったところからして、執事の息子は捨てられたままか……。

(真実のだったなら、今も駆け落ち相手と一緒にいるはずだものね)

それはさておき。

私の魔力はアリアよりも低かった。

正直、実母が亡くなった後、継母とアリアを家に迎えたのは、そのせいだと思う。

継母を後妻に迎えてからは、父は私にやたらと素っ気なくなったし……。

たぶん、魔力のない娘が嫌だったんだろう。

自分でも魔力がないことには悩んでいた。

そして継母の仕打ちの數々から、このままでは結婚なんて夢のまた夢だと気づき、私は聖になる數年前から、錬金を習い覚えることにした。

一人で生きていけるようにして、家を出るために。

その程度の魔力しかない私が、あんなに魔力石を作れば、倒れるのは自然なことなのだ。

(でも仕方ない……よね)

生命の危機だった。

あの場にいる誰かが死ぬかもしれないと思うと、面識の薄い人であっても、とても黙って逃げてはいられなかった。

何度同じことになったって、私は毎回魔力石を作ってしまうだろう。

後悔はしていないけど、不安がある。

(錬金師だとわかったら、嫌がられないかしら?)

さげすまれがちな錬金は、ラーフェンでは知識があるとわかっただけで、ちょっと引かれる。

無駄なことを、と。

魔力を増やす努力をするか、魔力石を買えばいいのに……というのが貴族達の考え方だから。

一方私は『それなら魔力石作れば売れるんじゃない?』と思ったのだ。

本來なら、鉱山で発掘されるだ。

自作出來たら、多の材料費と労力で、一人で生きていけるようになる! と思って、様々なやり方を試したから……。

「でも、けっこうきつかったな……」

つぶやき、どうやら自分が完全に目覚めたのに気づいた。

が重だるくて、痛みのない筋痛にさいなまれているみたいだ。

目を開けると、薄暗い部屋の中だった。

にしても、けっこう広い。私が走り回れるくらいはある。

今日のお宿? 壁も綺麗な白漆喰で、絵が飾られていたし、ソファーやテーブルなんかも置いてある。

拾った子供に、ここまでいい部屋をあててくれるものだろうか。

「とにかくすごいいい部屋」

「恩人だからな。貢獻に値する部屋で休ませることにした。落ち著かないか?」

「へっ!?」

急に近くから聲が聞こえて、私は飛び上がるほど驚いた。

聲の主を探して起き上がれば、橫を向いて寢ていた私の後ろ、ベッドの橫に椅子を置いて座っている公爵様の姿があった。

暗闇の中で、公爵様の赤い瞳だけがっているように見えた。それは近くに置いてあった燭臺の燈りのせいだって、すぐ気づいたけど。

公爵様は淡々と説明してくれる。

「狀況を知らせておく。同行者に死者はいなかった。あれだけの數の魔に襲われて無事でいられるのは非常に珍しい。お前の協力に謝している」

公爵様にお禮を言われて、私は目を丸くするしかなかった。

「え、いえ、その……皆さん無事だったらよかったです」

まるで他人ごとみたいな言い方をしてしまったけど、公爵様にこんなに謝される何て、夢か幻みたいなので仕方ないと思う。

それよりも気になることが。

「あの、公爵様が看病してらっしゃったんですか?」

私を。

みんなを助ける役に立ったとはいえ、拾ったばっかりの他國人を侯爵様自ら看病するというのも、なかなかないことだと思う。

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