《【書籍化】薬でくなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖は錬金師に戻ります―》魔力石をつくってみます

次に用意するのが水晶だ。

「あ、良かった。頼み忘れてたから、丸いのが來たらどうしようかと」

箱の中には、結晶の形のままの水晶がごろごろっていた。

「それにしても、そうとう沢山作ってほしいのね……。いえ、必要なんだけども」

水晶の箱は四つもあった。私が頼んだ量よりはるかに多い。

「とりあえず、できるだけやっちゃおう」

私は一つ一つ、翡翠のを混ぜたインクで、水晶の表面に魔法図を書いていく。

乾くように、作業臺にならべていきつつ、十個ほど作った時だっただろうか。

「もう初めていたのか」

突然聲がして、ひぃぃっ! と飛び上がるほど驚いた。

え、扉が開く音とかしたっけ!?

顔を上げると、戸口にディアーシュ様とナディアさんがいた。

ディアーシュ様の表は冷たい。

え、まさか最初からじっくり見たかったとか? 私怒られるんだろうか。

脳裏に、ぱっと容赦なく殺されたラーフェン王國の兵士の姿がよぎった。

「ももも、申し訳ございません! あの、長い時間を拘束するのもと思いまして、肝心な部分だけお見せしようかと準備をっ!」

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起立してがばっと頭を下げた。

謝罪で許してくれなかったらどうしよう。怒られるだけではなく、不快だからと取引もなくなって、ぽいっと放り出されたら……。

なにせ私は後ろ盾のないだ。

子供の姿で放り出されたら、孤児院に行くしかない。

しかもアインヴェイル王國の狀況から、すんなり孤児院にもれるかどうか……。

怯えていると、ディアーシュ様のため息が聞こえて、思わず震えそうになる。

「時間はあるから気にするな。そして責めているわけでもない。で、今は何をしているんだ?」

淡々とした調子で聞かれて、私は急いで答えた。

「はい。錬金を行うために必要なものを、作ったところです」

「錬金に必要なものを、作る?」

「錬金質を掛け合わせるだけではありません。鉱などの素材や大気、大地にある魔力を集めて新たなものを作り出す技です。そのために、魔力図を刻んだ専用のを使います」

これがその一つだと、さっき作った錬金盤を指差した。

「ただこういったものは、お店で買えないので、自分で作るしかありません 。なのでひとつひとつ、必要な魔力図を刻んでいって、使える道にして行くのです」

本當は他にもたくさん作るものがあるけれど、まずは魔力石を作るだけなので、錬金盤があれば大丈夫。

「誰にでも、すぐに作れるようになるものなのか?」

ディアーシュ様のお尋ねに、私はハッとする。

そうか、ディアーシュ様は錬金師をたくさん増やそうと思っているんだ。だから、 誰でもすぐにできるようになることなのかどうか知りたいんだと思う。

殘念ながらと、私は首を橫に振った。

「本人の魔力の質に合わせて、々と調節しなくてはならないのです。そのためには、ある程度の勉強が必要になります。薬師なら、その時間を多なりと短できると思いますが」

とにかく魔力図を覚えなくてはならない。

覚えたら、どう組み合わせるのか? という知識も必要になる。

さらには魔力図を描く、インクの作り方、必要な鉱石の種類を覚えなくては。

薬師ならば、鉱石の種類を覚えることや、いくらかの魔力図を知っているので、普通の人が覚えるよりも早いはず。

おそらくこういうことが聴きたいんだろうなと、推測しながら答えてみた。

案の定、 ディアーシュ様は頭の中で何事かを考えるように、數秒だけ黙り込んだ。

「分かった。魔力石を作ってみてくれ」

「承知いたしました」

私は箱の中を探し、他に必要なものを揃えていく。

水盤を窓辺に置き、緑のインクで魔力図を描いた紙を置く。その上にこれもインクで魔力図を描いた水晶。

新たに準備した青い蛍石のをふりかける。

ここに、石の下だけがかぶるように水を満たした。

「このまま待ちます」

見つめていると、しずつ水の中にある紙に描いた魔力図がキラキラと輝き出す。

そのにが移っていくように、水晶もふりかけた鉱石もり始めた。

「まぁ……綺麗」

ディアーシュ様の後ろから覗いていたナディアさんが、思わずといったように呟いた。

魔力石を作る工程は、キラキラとして綺麗なので私も大好きだ。

ディアーシュ様はいつも通りの無表

冷たい目で見ているので、っている水晶が凍り付くんじゃないかとし不安になるぐらいだ。

石の方は、りながら変化が始まる。

水晶の中に、描いた文字と一緒に蛍石の輝きが溶け込んでいく。

くるくるとまざり、そのしずつ青に変え、さらに深みを増していく。

青のが行き渡ったところで、が消えた。

水の中には、文字が消えた紙と、その上に殘った青い水晶が殘されている。

「できました」

水の中から取り出した私は、し拭いてディアーシュ様に差し出した。

「お確かめください」

無言でけ取ったディアーシュ様は、その中から魔力を取り出そうとしたようだ。

彼の手の上に、小さな炎が現れて消える。

「確かに、魔力石になっているな」

私はほっとした。

ディアーシュ様に認めてもらえた。

先生に弟子にしてくださいと言いに行った時ぐらいに、張した……。

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