《オーバーロード:前編》集結
「そろそろ皆來そうですよね」
濡れたタオルで顔の汗を拭いながらアウラが話しかけてくる。
プライマル・ファイヤーエレメンタルとの戦闘結果はアウラの勝利。桁外れの破壊力と耐久力を持つプライマル・ファイヤーエレメンタルだったが、周囲にいるだけでもける炎ダメージを完全に無効にし、見事な回避を披したアウラの前では巨大なマトだったようだ。
逆に一撃でも當たれば、アウラの力のかなりを奪っただろうが、複數の防魔法を発していたのが上手く働いていた。魔法職のモモンガから評価しても見事な立ち回りだった。
「――そうだな」
モモンガは左腕にはめたバンドに目を落とす。約束の時間にはまだなっていないが、遅れてくるような守護者はいないだろうし、時間的には何時きてもおかしくは無い。
「ぷぅ」
一息ついたといわんばかりのため息をつきながらアウラが、元の汗を拭い始める。拭った先から汗が珠を作り、薄黒いを流れ落ちる。
モモンガは黙って、アイテムボックスを開く。
そこから最初に取り出したのは、魔法のアイテム――ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター。
ガラスだろうき通った材質でできたピッチャーには、新鮮な水がなみなみとっており、中のった水の冷たさのためか、周りには水滴が無數についていた。
そして続けてグラスを1つ取り出す。
バカラのグラスに負けずとして劣らないグラスに、新鮮な水を注ぎいれる。
「アウラ。飲みたまえ」
「え? そんな悪いです、モモンガ様に……」
パタパタと手を顔の前で振るアウラに、モモンガは苦笑を浮かべた。
「この程度気にするな。いつも良く働いてくれているささやかな謝の表れだ」
「ふわー」
照れたように顔を赤らめるアウラに、グラスを差し出す。
「ありがとうございます、モモンガ様」
今度は斷らずにタオルを肩にかけると、アウラをそれを両手でけ取り一気に飲み干す。が大きくき、の端からこぼれた水滴が艶やかなを流れ、元に消えていった。
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「ぷはぁー」
「もう一杯いるか?」
「お願いします!」
一瞬で空になったグラスの中に再びピッチャーから水が注がれた。ピッチャーの中の水は減ってはいない。先ほどと同じ水量を保っている。
アウラは落ち著いたのか今度はゆっくりと水を飲む。
モモンガそれを見ながら自らのに手を當てた。頚椎に薄皮がついたような。
このになってからの渇きを覚えていない。睡眠もだ。アンデッドがそんなものをじるわけが無いのは理解できるが、それでも気がついたら人間を辭めたというのは冗談にしか思えない。
モモンガは空いた手で自らのをる。
人間のときと比べて全の覚が鈍い。ってみても薄い布が途中にあるような覚の鈍さだ。その反面、知覚はかなり優れている。視力も聴力も非常に高い。
骨で構築されたすぐにも折れそうななのに、一本一本が鋼よりも頑丈そうにも思える。
かなり人のとは違うはずなのに、まるで生まれたときからこのであったかのような満足とも充実ともいえないものがある。だからこそ恐怖もじないのだろう。
「ふぅー」
「もう一杯いるか?」
「えっと。もう満足です」
にこりと笑うアウラに頷くことで返すと、モモンガはけ取ったグラスとピッチャーをそのままアイテムボックスにれる。
「……モモンガ様ってもっと怖いのかと思ってました」
「そうか? そっちの方が良いならそうするが……」
「え? 今のほうがいいです! 絶対いいです!」
「なら、このままだな」
勢いあるアウラの返答に目を白黒させながらモモンガは答える。
とはいえモモンガからすれば今の格も演技しているものでしかない。今の自分は最高峰のギルド、アインズ・ウール・ゴウンの長としての役割を演じているだけだ。決して恥ずかしくないように。
「も、もしかして私にだけ優しいとかー」
ぼそぼそと呟くアウラに何を言えば良いのかわからず、モモンガはアウラの頭を軽く數度、ぽふぽふとでるように叩く。
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「えへへへ」
大好を前にした子犬の雰囲気を撒き散らすアウラ。そこに――。
「――おや、わたしが一番でありんすか?」
言葉つかいの割には若鮎のような若々しい聲が聞こえ――影が膨らみ、噴きあがる。
その噴きあがった影からゆっくりと姿を現す者がいた。
全を包んでいるのはらかそうな漆黒のボールガウン。
スカート部分は大きく膨らみ、かなりのボリュームを出している。スカート丈はかなり長く、完全に足を隠してしまっている。フリルとリボンの付いたボレロカーディガンを羽織ることによって、元や肩はまるで出していない。さらにはフィンガーレスグローブをつけていることによって、殆どのを隠してしまっている。
外に出ているのは一級の蕓ですら彼を前にしたのなら恥じるほどの端正な顔ぐらいものだ。白い――健康的というのではない白蝋じみた白さ。長い銀の髪を片方で結び、持ち上げてから流している。
年齢的には14、もしくはそれ以下か。まださが完全には抜け切れてない。可らしさとしさがじり合ったことによって生まれた、そんなの結晶だ。
は多年齢には不釣合いなほど盛り上がっている。
「……わざわざ《ゲート/異界門》なんか使うなって言うの」
モモンガの直ぐ側から呆れたような聲が聞こえる。その凍りつかんばかりのを含んだ聲に先ほどまでの子犬の雰囲気は無い。あるのは満ちすぎて毀れまくった敵意だ。
最上位の転移魔法を使ってこの場に姿を現せたは、モモンガの橫で殺気だつアウラに一瞥もくれず、をくねらせる様にかしながらモモンガの前に立つ。
から立ち上る香水の良い香り。
「……くさ」
アウラがボソリと呟く。続けて、アンデッドだから腐ってるんじゃない、と。
アウラの言葉が聞こえているだろうにも変わらず、真紅のルビーを思わせる瞳に愉快そうなを込め、
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「ああ、我が君。わたしが唯一支配できぬしの君」
すらりとした手をモモンガの首の左右からばし、抱きつくかのような姿勢を取る。
真っ赤なを割って、濡れた舌が姿を見せる。舌はまるで別の生きのように己のの上を一周する。開いた口から馨しい香りがこぼれ落ちる。
もしこれが妖艶ながやれば非常に似合っただろうが、彼では々年齢がたりてないようにじられ、ちぐはぐから生じる微笑ましさがある。大、長が足りないのでばした手も抱きつくというよりかは、首からぶら下がろうとしているようにしか見えない。
それでもに慣れていないモモンガには充分な妖艶さだ。一歩後退しそうになるが、意を決しその場に踏みとどまる。
心中に沸き上がるこんなキャラだっけ? という思いは消せないが。
シャルティア・ブラッドフォールン。
ナザリック大地下墳墓第1階層から第3階層までの守護者であり、全アンデッドの支配者たるトゥルーヴァンパイアだ。
「いい加減にしたら……」
重く低い聲に初めてシャルティアは反応し、嘲笑の笑みを浮かべながらアウラを見た。
「おや、チビすけ、いたんでありんすか? 視界にってこなかったから分かりんせんでありんした」
ぴきりとアウラは顔を引きつらせ――
「うるさい、偽」
――弾を投下する。
「……なんでしってるのよー!」
あ、キャラが崩れた。
「一目瞭然でしょー。変な盛り方しちゃって。何枚重ねてるの?」
「うわー! うわー!」
発せられた言葉をかき消そうとしているのか、ばたばたと手を振るシャルティア。そこにあるのは年相応の表だ。
「あんたなんか無いじゃん。私はし……結構あるもの!」
その瞬間、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべるアウラに押され、一歩後退するシャルティア。さりげなくをかばっている。
「……あたしはまだ76歳。いまだ來てない時間があるの。それに対してアンデッドって未來が無いから大変よねー。長しないもん」
シャルティアはぐっ、とき、さらに後退する。言い返せない。それが表に思いっきり出ていた。アウラはそれを確認し、亀裂のような笑みをさらに吊り上げた。
「今あるもので満足したら――ぷっ」
「おんどりゃー! 吐いた唾は飲めんぞー!」
ぷっちーんという音がモモンガには聞こえた気がした。
シャルティアのグローブに包まれた手に黒い靄のようなものが揺らめきながら滲み出す。
アウラは迎えうたんと先ほど使用していた鞭を手に持つ。
モモンガは呆れかえりながらも、両者を止めようと息を吸い込んだところで――
「サワガシイナ」
人間以外が無理やり人の聲を出している、そんな歪んだ質な聲が2人の諍いを斷ち切った。
聲の飛んできた方、そこには何時からいたのか、冷気を周囲に放つ異形が立っていた。
2.5メートルほどの巨は二足歩行の昆蟲を思わせる。悪魔が歪めきった蟷螂と蟻の融合がいたとしたらこんなじだろうか。長の倍以上はあるたくましい尾には鋭いスパイクが無數に飛び出している。力強い下顎は人の腕すらも簡単に斷ち切れるだろう。
2本の腕で白銀のハルバードを持ち、殘りの腕でどす黒いオーラを撒き散らすおぞましいメイスとブロードソードを保持している。
白銀に輝く質そうな外骨格には冷気が纏わり付き、ダイアモンドダストのようなきらめきが無數に起こっていた。
ナザリック大地下墳墓第5階層の守護者であり、凍河の支配者――コキュートス。
ハルバードの刀を地面に叩きつけると、その周辺の大地がゆっくり凍り付いていく。
「方ノ前デ遊ビスギダ……」
「……この小娘がわたしに無禮を働いた――」
「事実を――」
再びシャルティアとアウラがすさまじい眼を放ちながら睨み合う。
「……シャルティア、アウラ。私を失させるな」
びくりと、2人のが跳ね上がり、同時に頭をたれる。
「「もうしわけありません」」
「ああ」
モモンガは鷹揚に頷くと、現れた悪魔に向き直る。
「良く來たな、コキュートス」
「オ呼ビトアラバ即座ニ、方」
白い息がコキュートスの口からもれている。それに反応し、空気中の水分が凍りつくようなパキパキという音がした。プライマル・ファイヤーエレメンタルの炎に匹敵する――いやそれ以上の冷気。周辺にいるだけで低溫による様々な癥狀が襲い、損傷をけるほどだ。
しかしながらモモンガには何もじられない。というよりもこの場で炎や冷気、酸という攻撃に対しての耐や対抗手段を持ってない者は存在しない。
「この頃侵者も無く暇ではなかったか?」
「確カニ――」
下顎をカチカチと鳴らす。笑っているのだろうか?
「――トハイエ、セネバナラヌコトモアリマスノデ、然程、暇トイウコトモゴザイマセン」
「ほう。普段は何しているんだ?」
「何時如何ナル時デモオ役ニ立テルヨウ鍛錬ノ日々デス」
コキュートスは外見からは想像できないが設定上は武人である。格もコンセプトデザインも。
このナザリック大地下墳墓においても武の使い手という區切りでは第一位の戦闘能力保持者だ。
「お――私のためにご苦労」
「ソノ言葉1ツデ報ワレマス。――オヤ、デミウルゴスガ來タヨウデスナ」
コキュートスの視線を追いかけると、そこには闘技場り口から歩いてくる影が1つ。
充分に距離が近づくと、影は優雅な禮をしてから口を開く。
「皆さんお待たせして申し訳ありません」
長は2メートルほどもあり、は沢のある赤。刈り揃えられた漆黒の髪は濡れたような輝きを持っていた。
赤い瞳は理知的に輝き、無數の邪悪な謀を組み立てているのが手に取るように分かった。
こめかみの辺りから鋭い、ヤギを思わせる角が頭頂部に向けてびており、背中から生えた漆黒の巨大な翼が彼が人ではないことを表していた。
鋭くとがった爪のはえた手で一本の王錫を握り、真紅の豪華なローブにそのしなやかなを包む姿はどこかの王を彷彿とさせる威厳に満ちていた。
周囲に揺らめくような淺黒い炎を撒き散らすその悪魔こそ、デミウルゴス。
ナザリック大地下墳墓第7階層の守護者であり、防衛時におけるNPC指揮という設定である。
「これで皆、集まったな」
「――モモンガ様、まだガルガンチュアが來て無いようですが」
人の心にり込むような深みと、引き込まれるようなはりのある聲。
デミウルゴスの言葉には常時発型の特殊能力が込められている。その名も支配の呪言。心弱きものを瞬時に自らの人形へと変える効果のある力だ。
とはいえ、この場にいるものにその特殊能力は効果を発揮はしない。効果が発揮するのはせいぜい40レベル以下。最高レベルで製作された守護者には効かないのは當然。
そのためこの場にいるものにとってすれば、せいぜい耳あたりの良い聲程度にしか過ぎない。
「……ガルガンチュアを知ってるのか?」
「無論です。第4階層守護者――戦略級攻城ゴーレム、ガルガンチュア。この中に知らぬものはおりません」
ガルガンチュアはユグドラシルというゲームのルールにちゃんと存在するゴーレムであり、別にアインズ・ウール・ゴウンの手によってゼロから作り出されたものではない。
あくまでも攻城戦に使用できるもの。本拠地を守るのには決して使えない。ただ、テキストタグ上では第4層守護者と設定づけられているし、置き場に困って第4層の地底湖に沈めているのだが。
「あれは守護者というわけではない。あくまでも守護者の地位を與えたゴーレムだ」
「左様でしたか。失禮いたしました」
「……我ガ盟友モ來テナイヨウデスナ」
ぴたりとコキュートス以外の全員のきが止まった。
「……あ、あれは、あくまでもわらわの階層の1部の守り手にしか過ぎぬ」
「そ、そうだよね~」
シャルティアに引きつるような笑みを浮かべ、アウラが同調する。
「……恐怖公か。あれも守護者ではないが……知っていたほうが良いか。あれにはコキュートス、お前の方から伝えろ」
「承リマシタ、方」
「では、我が主君。守護者は皆、揃いました。下命を」
デミウルゴスの言葉にあわせ、全員が一斉に跪く。
「では……まず良く集まってくれた」
「我ら、皆、モモンガ様にすべてをささげた者。當然のことでございます」
代表してデミウルゴスが返答を述べた。やはり他の守護者に口を挾む気配は無い。完全にデミウルゴスが守護者代表という扱いなのだろう。
「お前達の忠誠は嬉しく思う。私がどれほど強く喜びをじているのかを話しても良いのだが、殘念ながら守護者を全員集めたのはそれとは別件なのだ。私の方も完全に理解しているわけではないので、多意味が分からない點があるかも知れないが、心して聞いてしい」
モモンガはそこで一息つくと、右腕のバンドに視線をやってから全員を見渡す。
「現在、ナザリック大地下墳墓のすべてが不可思議な事態に巻き込まれているように思われる」
「……不可思議な事態というのは」
「正直私もよくは分からないのだ。だが、何らかの異変を私はじた。だから、私はお前達を全員集めたのだ。何かじないか?」
互いの顔を見合わせ、デミウルゴスが代表して口開く。
「いえ、申し訳ありませんが我々にはじられませんでした」
「そうか……」
「どのようなじをけ取られたのですか?」
「説明するのも中々難しい……」
モモンガは口を閉じて話を流そうとするが、守護者達が説明を待っているのに気づき、適當な話をでっち上げる。
「……揺らめきだな」
「揺らめきですか」
再び守護者同士で互いの顔を伺い、それからデミウルゴスが口を開いた。
「やはり我々には知できなかったようです。魔法的なものなんでしょうか」
「すべてが不明だ。各階層に異常は無いか?」
「第7階層に異常はございません」
「第6階層もです」
「第5階層モ同様デス」
「第1階層から第3階層まで異常はありんせんでありんした」
「――モモンガ様、早急に第4階層の探査を開始したいと思います」
「任せる」
「では地表部分はわたしが」
「……それは待て。時間に帰ってくるかと思ったのだが……現在セバスに地表周辺を探査させている最中だ」
ざわりと空気がく。
1つは絡め手無しの真っ向勝負においては最強であり、コキュートスですら追いつけない存在を、偵察という簡単な任務に出したことに対する困だ。もう1つはセバスほどの人材を送り込んだことによる、モモンガの異変に対する警戒心の強さへの危機だ。あっただろう無數の選択肢からセバスを選んだことへの。
ただ、モモンガの観點からすれば、セバス以外の選択肢はなかった。
まず今までいた世界から大きく変わった中で、忠誠心を持っているように見えたこと。
次に報がまるで無いという狀況下では、最高の戦闘能力を保有しているもの――生きて帰れそうなものを送り出すのは當然のことだ。
そして外見的に人間にそっくりであり、セバスであれば警戒はされても即座に戦闘行為になりそうも無いと予測してだ。デミウルゴスやコキュートスでは上手くいく可能自が低いだろう。幻影魔法等でごまかせればという考えもあったが、見破られた場合、噓をついて近づいてきた相手と仲良くしてくれるとはとうてい思えない。第一、その時は魔法が本當に発するかどうか不明瞭なところがあった。
以上の理由からセバスが適任だと思ったのだ。
「そろそろ戻ってくるとは思うのだが……」
その言葉がフラグになったのか。何気なく闘技場り口に視線を送ると、歩いてくるセバスの姿を発見した。
時間を指定しなくても、必要とされる頃に戻ってくるとは、流石は一級の執事。
「――遅くなりました」
「いや、構わん。それより周辺の狀況を聞かせてくれないか?」
「――」
セバスは跪く守護者に一瞬だけ視線を送る。モモンガは鷹揚に頷いた。
「……非常事態だ。これは當然、各階層の守護者が知るべき報だ」
「了解いたしました。まず周囲1キロですが――草原です」
ナザリック大地下墳墓周辺は毒すらも発生する沼地だった。それが草原というのはどういう冗談だ。そう言いたげな顔がちらほら見える。しかしそんな無意味な質問は誰もしない。なぜならセバスが主人に噓をつくはずがないと皆確信しているからだろう。
「生息していると予測される小を何匹かは見ましたが、人型生の発見はできませんでした」
「その、小はモンスターだったりするのか?」
「いえ、プレリードックのような戦闘能力が殆ど皆無のような生きでした」
「牧歌的なイメージでいいのか?」
「牧歌的……単なる草原です。特別に何かがあるということはありません」
「そうか……ご苦労」
どこに転移をしたのか不明だが、警戒のレベルを上昇させたほうが良いのは事実だろう。人の敷地にいきなり無斷で乗り込んできたら怒るだろう。普通のの持ち主なら。
だが、そこで諍いが生じた場合禍が必ず殘る。彼我の戦力がはっきりしない狀態で、そんな狀況に陥ることはごめん被りたい。
「シャルティア」
「はい」
「各層の警戒を厳重にせよ。ただし、侵者は殺さず捕らえろ。できれば怪我もさせずにというのが一番ありがたい。それと侵者が來た場合は各階層の守護者に伝達すること。それにあわせて各階層のネガティブダメージを切っておけ」
「了解しんした」
「デミウルゴス」
「はっ」
「周辺を詳しく偵察する斥候に相応しい者を幾か選抜しろ。目的は報の収集であって、戦闘行為ではないことを充分に理解できる頭を持つ者だ。お前が直接行することは現狀では許さん」
「私をかさない理由は渉相手になるかも知れない不特定多數のを悪化させないため、と考えてもよろしいのでしょうか? つまりは無理やりな報収集は厳ということで」
「その通りだ。私達は確かに最強である。だが、この周辺では私達の100倍ぐらいの強さを持つものが基本だとしたらどうする? それともそんなことはありえないと、己の常識で推し進めるか?」
「いえ、モモンガ様のおっしゃるとおりです。注意に注意を重ね、信頼の置ける斥候を用意しておきます」
「アウラ」
「はい!」
「人間が住めそうな家を第6階層に作れ」
「……えっと、どういうことでしょう?」
「捕虜ヲソコニ置クトイウコトダロウ」
「コキュートスの言うとおりだ。第9階層にはれたくないし、他の階層では々な面で辛い。第6階層が最も適しているのだ」
「確かに」
他の階層を思い出していたアウラがこっくりと頷く。
「捕虜の収容所と同じ意味だ。監視等はできるような場所に作るんだぞ」
「了解しました」
「あと、一応はお客様扱いだ。掘っ立て小屋は止めてくれ」
「はい。一見すると立派な家を建てます。何人ぐらい収容できるようにしましょう?」
「そうだな……10人ぐらいで構わない。――コキュートス」
「ハッ」
「お前の信頼できる最鋭のシモベを第9階層に降ろし、警備させよ。どの箇所でどのように警備させるかはセバスと相談せよ」
「ハ! オ任セヲ!」
「セバス。メイドたちを第10階層の警備に回せ。どのような手段を用いて相手が一気に潛してくるとも限らん。各階層の警備ともども注意を払え。それとコキュートスのシモベの件もあわせて頼む」
「はい、承りました」
「守護者及びそれに付隨するシモベ――各階層10までの10階層への侵を許可する。何かあった場合は伝えに來い」
「そして最後だが、私は名を変えようと思っている」
ざわりと空気が揺らぐ。
モモンガという名はアインズ・ウール・ゴウンのギルド長の名だ。多數決を重視したギルドでありながら、己の意志のみですべてをかす人はギルド長には相応しくない。
ならば名前を捨てよう。
「新しい名は後ほど伝える。さて、各員早急に行を開始せよ――」
モモンガの號令で、一斉に立ち上がりき出す守護者達。そのきは力に満ち、なんびとたりともそれを押しとどめることができない、そんな威厳があった。
そんな景を前に、モモンガはに打ち震えていた。
自分の命令を聞いてくれるから? 違う。
強そうだから? 違う。
綺麗だから? 違う。
アインズ・ウール・ゴウンの仲間達が作ったNPCがこれほど素晴らしかったからだ。あの、黃金の輝きは今なおここにある。皆の意見の――思いの結晶がここにあることに喜びを覚えていたのだ――。
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。もう一度もらった命。啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。 前世の知識を持った生き殘りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、アルファポリス、ツギクルにも投稿しています。
8 108久遠
§第1章クライマックスの35話から40話はnote(ノート)というサイトにて掲載しています。 あちらでの作者名は『カンジ』ですのでお間違いなく。表紙イラストが目印です。 ぜひぜひ読んでください。 また第2章は9月1日から更新します。第2章の1話からはまたこちらのサイトに掲載しますので、皆様よろしくお願いいたします。失禮しました~§ 「君を守れるなら世界が滅んだって構いやしない」 この直來(なおらい)町には人ならざるものが潛んでる。 人の生き血を糧とする、人類の天敵吸血鬼。 そしてそれを狩る者も存在した。人知れず刀を振るって鬼を葬る『滅鬼師』 高校生の直江有伍は吸血鬼特捜隊に所屬する滅鬼師見習い。 日夜仲間と共に吸血鬼を追っている。 しかし彼にはもうひとつの顔があった。 吸血鬼の仲間として暗躍する裏切り者としての顔が………
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