《オーバーロード:前編》知識

「なんじゃ、そりゃ?!」

「! どうかしましたか、何か」

「あ、いや、こちらの話です。すいません。興してしまって」

一瞬、素に戻ったアインズはすぐさま演技にる。もし人間のをしていたら脂汗がどばっと流れたところだろう。

村長は面食らったようだったが、すぐに表を元に戻す。

すでに村長の頭の中での魔法使いは変人――もしくは多変わった者という位置づけになっているのかもしれない。それなら意外に幸運か、なんということをアインズは考える。

「お飲みでも用意しましょうか?」

「ああ、いや、結構」

村長の質問に手を立てて斷りをれる。

先ほど夫人にれてもらった白湯に湯気はもう立っていない。一口も手をつけてはいないのだ、これ以上用意してもらうのも悪すぎる。

この部屋に夫人はすでにいない。外の仕事――々な片付けを手伝いに出てもらった。

今この部屋にいるのは村長とアインズだけである。

スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをアイテム・ボックスに仕舞いこんだアインズが最初に聞いたのは周辺國家だ。

そしてそれの答えは聞いたことも無い國の名前だった。

當初、アインズは々と違和を覚えていたが、それでもユグドラシルの世界を基本に考えていた。ユグドラシルの魔法が使えるのだから、それは當たり前の思考だ。

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だが、まるで聞いたことの無い地名が彼を出迎えたのだ。

なんだ、そのバハルス帝國って。なんだ、そのリ・エスティーゼ王國って。そんなものは北歐神話では聞いたことが無い。

グルグルと視界が回り、崩れそうになるをガントレットを嵌めた手でテーブルを押さえることで維持する。まるで知らない世界に來てしまっただけだ。理解はできるが納得するのが難しい。

そしてその衝撃は思ったよりも大きいかった。

アインズは冷靜になれと、先ほど教えてもらった周辺國家と地理に再び思い出す。

まずバハルス帝國とリ・エスティーゼ王國。これは中央に山脈を挾むことによって國境を分けている。そして南方、山脈の切れる辺りに大森林。そしてそれが終わる頃にこの村や城塞都市があるという。戦爭はこの城塞都市を取り合う形で行われるのが基本だということだ。実際、帝國がこの數年何度か小競り合いをこの城塞都市で行っているらしい。

実際、帝國が城塞都市の近くに陣地を形しつつあるという。再び戦爭が起こるのではないかという話だ。

そしてその城塞都市からさらに南方にもう1つ國家がある。

スレイン法國。國家間の領土関係を簡単に説明すると丸を書いて、その中に逆になったTをいれると大雑把だが分かりやすいだろう。左がリ・エスティーゼ王國、右がバハルス帝國、下がスレイン法國。それ以外にも國はあるらしいのだが、村長の知ってる限りはこんなものらしい。

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そして國力までは小さな村の村長では分からない。

つまり、それは――

「失態だ」

――先ほどの騎士はスレイン法國の可能も充分に考えられるということではないか。大森林近辺を通って一気に王國部に戦爭を仕掛ける帝國の作戦の一環という可能も考えられるが。

騎士を全員解放したのは間違いだった。數人捕まえてすべて報を引き出すべきだった。そこまで頭が回らなかったのはこうして冷靜になってみると愚かの極みだ。

となるとスレイン法國の可能を考えた上に、帝國側にも何らかの手を打つべきだろう。

アインズは考える。

この世界に來たのは自分だけかと。

プレイヤーが1人、2人なら問題は無い。ナザリック大地下墳墓の戦力を考えればレベル100のプレイヤー30人ぐらいなら同時に殲滅できる。アインズ自課金アイテム等の効果を合わせればプレイヤー2人と同等以上に戦えるだろう。

戦闘することを最初に考えるのは々危険な考え方かもしれない。しかしながら最悪の事態を考えずに行するほどアインズは子供ではないし、単純に問題が生じたときの対処方法を最初から考えているだけにしか過ぎない。

仲良くする分なら特別に対処方法を考える必要は無いのだから。そのときそのときの場當たり的なもので充分どうにかなる。

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問題はアースガルズの天空城を保有したギルド、ヘルヘイム最奧の氷河城を支配したギルド、ムスペルヘイムの炎巨人の誕生場というフィールドを支配したギルド。これら3つのギルドがいた場合は厄介だ。この3つのギルドはアインズ・ウール・ゴウンに匹敵する。

もしこのギルドが來てたとして、ギルドメンバーと友好的に事が進むなら良い。

だが、そうならなかったら?

相手のギルドがどれぐらいのメンバーを最後まで維持できたかは知らない。それでもアインズに匹敵するだけの能力を保有するプレイヤーが何人かはいるだろう。となると相手のギルドの戦狀態にならないように行する必要がある。その一方で戦力の拡大と報収集を行う。

もし仮にプレイヤーが大量にきていた場合、纏まるか、個人行を始めるかのどちらかに分かれるだろう。日本人の國民的気質からすると纏まるほうが多いと思われるが。そのときはできれば參加させてもらいたいものだ。『アインズ・ウール・ゴウン』に関係の無い部分であればいくらでも譲歩できる。

問題はその集団がこちらを目の敵にする場合だ。ありえないと思うが無いとも言い切れない。

まず、正義や義憤に駆られての場合だ。この行為を避けるために、まずはできる限り敵対するような行為――例えば被害等をこの周囲に出すのは抑えるべきだろう。殺戮とか頭の悪いことをしていれば、誰だって不快に思う可能があるだろう。無論相手を納得させるだけの理由があれば別かも知れないが。この村のように襲われていたのを助けるためだ、とかだ。

つまるところ、これからの行には何らかの大義名分があった方が便利となってくることは間違いが無い。つまり私はしたくなかったんだけど、仕方がなかったんだ方式だ。

次にアインズ・ウール・ゴウンに恨みがあった場合。このときは戦闘は避けられないだろう。それに対する対策は練っておく必要がある。これは今後の課題だ。

そして愚策はナザリック大地下墳墓への引き篭もりだ。

援軍が無い狀態での篭城戦がどれほど愚劣かはアインズですら想像に難しくない。

「……やはり間違って無いか」

「先ほどからどうかされましたか?」

「いえ、なんでもないです。思っていたのと々違うために取りしてしまいました。申し訳ありません。それより次に貨に関して教えてくれないでしょうか?」

「はい、わかりました」

村長は銅貨を數枚テーブルに置く。

易共通貨――貨は商売の神のシンボルが車ですので片面に車。もう片面に商會ギルドのシンボルが彫ってあります」

金貨は無いということなので、銅貨を見せてもらう。裏を見返して、彫ってあるのを確認する。

さきほどの話に出たコウキンカ――金貨。

略して金貨である。これは商會ギルドが価値を保障するため最も信頼度の高い貨として流通しているという。

重さは10g。大きさよりは重量が価値を決めるのだが、だいたい直徑で30mm。

貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨、それに1/4銅貨である黃銅板があるとのこと。白金貨は基本的にあまり使われない。村長夫婦でも生まれてから見たことが無いという話だ。つまりは商人、貴族といった存在が使うものと考えてれば良いだろう。

貨の変換は1000銅貨=100銀貨=10金貨=1白金貨

貨の金銭的価値は1銅貨が日本円にすればおおよそ1000円。1金貨で10萬円だ。

基本的に職人等が1日の労働で得れる賃金は、銀貨1枚行くか行かないか。農夫はもっと安くて換算すると銅貨6枚ぐらいだとか。

価はある意味高い。陶でできたコップとかが2銅貨とかする。その反面、食料品等は安い。

第一次産業は安く、第二次産業は高いという合か。

アインズは安堵した。取り合えずは金銭的な負擔をじることは當分なさそうだ。

ユグドラシルの貨幣なら1G(=1,000,000,000)に屆きそうなぐらい持っている。仲間達が殘してくれた寶庫の金までは手を出さないで済みそうだ。

1Gという単位は大金のようかもしれないが、ユグドラシルの最高クラスの武の個人商店での販売価格は100M(100,000,000)をゆうに超える。これにオーバーエンチャントデータされてると、1Gでも買えない場合がある。アインズの持っている防でも1Gを越えるものは幾つかあるように。

モンスターという存在もいるそうだ。大森林奧にも魔獣と呼ばれる存在もいるし、エルフ、ゴブリンに代表される亜人種たちもいる。亜人たちが國家を作っている場合もあるそうだ。

そんなモンスターを報酬次第で退治しているのが冒険者と呼ばれる存在。魔法使いとかも結構いるらしい。無論、村長は実際は見たことが無いので、村に來た商人達の噂話程度だが。ただ、大きな都市に行けば冒険者のギルドがあるというのは本當のようだ。

そんなわけで最寄という城塞都市について教えてもらう。

この城塞都市。人口等までは村長は詳しくないそうだが、そこそこあるらしい。そして三カ國の戦爭の中心になる場所であり、かなり長い間、落ちたことの無い都市だという話だ。

報を収集するなら、そこが一番良いか。アインズはそう判斷する。

そして最後に笑ってしまう話だが――

ユグドラシルの世界であれば日本語が通じて可笑しくは無い。なぜならユグドラシルは日本発祥のゲームだからだ。それなのに完全な異界であるこの世界で、日本語が通じるのを不思議に思っていた。

そのためアインズは村長の口のきを見ていたのだが、笑ってしまうことに彼らは日本語をしゃべっていないのだ。

口のきと、聞こえてくる音がまるで違うのである。

それから幾つかの実験をさせてもらった。最初は怪訝な顔をしていた村長だが、魔法に関する実験で害は無いということを伝えると協力してくれた。

結論。

この世界は翻訳コンニャクを食べている。誰が食べさせてるのかは知らないが。

この世界の言語というより言葉というものは、相手に伝わるまでに自的に本質を翻訳されているのだ。

例えばネット用語だがwktkという言葉がある。道行くネットをして無い老人にそういって通じるだろうか? 通じないだろう。だが、この世界においてはそれが通じるのだ。

なぜならそれは言葉の本質を伝えているからだ。いわば言葉の意味合いを伝えているといっても過言ではない。口で言葉を話しかけると同時に、テレパシーで容を告げている。そんなじだ。

言葉を言葉と認識していれば、恐らくは人間以外の生きとの流も可能ではないだろうか。例えば犬とか貓でも。

問題は一それがどうして行われているのか分からないことだ。

そしてその対して村長はおかしい事だと思っていない。

それが當たり前のこと。

――つまりは世界の法則なのだろう。冷靜になって考えれば魔法――エントロピーの法則を完全に無視している世界だ。まるで違う法則が世界を支配しても可笑しくは無い。

問題はその法則をアインズのみが知らないということだ。

例え話をしよう。

真夏の暑い日、マクドナルドにってみると君の前で変わった男がコーラを買っていた。そしてその男は外に出て行った。君は氷は溶けますよ、と注意をするだろうか?

するわけが無いだろう。それは當然だ。當たり前だからである。

では仮にこの世界に魔法使いはその日に外に出ると能力が一ヶ月間封印されるという法則があったとして、アインズが外に出たとして誰か注意をするだろうか? するわけが無い。何故か? それが當たり前だからだ。

無理矢理な理屈だが言いたいことは分かってもらえると思う。

そして常識というものは無ければ致命的な失態を犯しかねない重要なものだ。

今のアインズはそれが欠けている狀態。どうにかする必要がある。しかしながら名案は浮かばない。誰かを連れてきてお前の常識をすべて言えとでも言うのか? 無茶苦茶な話だ。

すると取れる手はほぼ一つだけだ。

「……やはり街にでも行って暮らす必要がある」

常識を學ぶには模範となるものがたくさんいるのが必要となってくる。郷にっては郷に従え。昔の人間はよく理解していたということだ。

それにこの世界の魔法についても知らなくてはならない。

まだまだ知るべきことが多くありすぎる。

アインズがそう思っていると木でできた薄いドアの向こうから、土を踏む微かな音。間隔は大きいが蹴っているようではない。急いでない男のものか。

アインズがドアの方に顔を向けると同時にノックの音が室に響いた。村長がアインズの返事を伺ってくる。それに反対する理由は無い。

「構いませんよ」

「申し訳ありません」

村長が軽く頭を下げると、立ち上がり、ドアに歩いていく。ドアを開けるとを背に1人の村人が立っていた。來た村人の視線が村長にき、それからアインズへく。

「村長。お客様がいる中すいませんが、葬儀の準備が整ったで……」

「おお……」

アインズに許可を求めるように村長は視線をかす。無論、アインズにそれを止める権利は無い。

「かまいませんよ」

「ありがとうございます。では直ぐに行くと皆に伝えてくれ」

「分かりました」

村人がドアを閉め出て行くと、村長はアインズに頭を下げた。

「本當に申し訳ありません。葬儀がりましたので、し時間をいただきます」

「わかりました。……それで1つお願いしたいことが。これは村人の皆さんと相談してしいのですが――」

ちなみに13英雄に関してはさっぱり分かりませんでした。

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