《オーバーロード:前編》初依頼-2
冒険者ギルドはモモンが昨日來たときとは違い、幾人もの武裝した冒険者達の姿があった。フルプレートを著ている戦士がいれば、軽裝鎧に弓矢を持つ者、神を纏い何らかの神の聖印を下げる者、ローブにスタッフを持つ魔法使いもいる。
カウンターで付嬢を相手に仕事を選択したり、もらった羊皮紙に書かれている仕事容に関して仲間で相談したりもしている。まさに冒険者のギルドに相応しい活気にあふれた姿だ。
モモンがっていくとその部屋にいた冒険者の視線が集まり、そしてすぐに熱を失ったように離れていく。さほど相手にするまでも無いということなのだろう。それでもまだ數人のローグ風の人間の意識がモモンをトレースしているのが、鋭敏な覚を持ってすれば察知できる。パーティーの耳や目ともいうべきローグ職の軽い警戒心の表れだろう。敵意は當然無い。
モモンは気づいて無い振りをしながらカウンターに近づく。
幸運なことにちょうど話が終わったのか、幾人かいる付嬢の、イシュペンの前が空くところだった。
「おはようございます」
両者の挨拶が同時に起こり、ハモる。イシュペンのやるな、こいつという表がなんとなく癪に障るがモモンはそれを営業スマイルで覆い隠す。イシュペンの視線がモモンの両手に向かうが、直ぐに目を逸らす。特別疑問には思わなかったのだろう。
「えっと旋風の斧の方々はつい先ほど來たばかりですよ」
「そうだったんだ。早く來たつもりなんだけど」
時間からすれば30分も早いのに、旋風の斧という冒険者パーティーは既に來ているという。分的に低いモモンの方が遅いというのはあまりいただけない。
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「ではご案しますので、こちらにどうぞ」
イシュペンが立ち上がり、他の付嬢の後ろを通りながらカウンターから出てくる。手で簡単に隠せるような薄い真鍮板のようなものを摑んでいる。
モモンはイシュペンの案に従い、隣の部屋にった。
そこには幾つもの扉があり、恐らくは打ち合わせ用の個室が並んでいるのだろうという予測が立つ。
ドアは音れのしないようかなりがっしりとした作りだが、それでもモモンが本気で意識を集中させれば、僅かな音を拾うことは可能だ。それに部の微かな気配も。
イシュペンが案してくれたドアには、何らかの文字の彫られたプレートがかかっていた。文字は読めないので理解不能だが、おそらくは在室中とか使用中とかの言葉の意味合いだろうと見當がつく。実際、ドアにプレートがかけられた部屋はこのほかにも幾つもあるが、そのどれもが室に人の気配をじ取れた。
「その前にですね」
イシュペンは持ってきていた薄い鉄板をモモンに差し出した。
「メンバーカードです」
真鍮でできた小さな板には文字と數字が掘り込まれている。恐らくはモモンを示すものなのだろう。もし知る人間が見ればドッグタグを思い出したかもしれない。メンバーカードの片隅には小さなが開いている。
実際カウンターにいた冒険者達を思い出してみると、は々あったが皆首から同じようなものを下げていた。恐らくはこのは鎖か何かを通すためのものなのだろう。
「これは一?」
「これはモモンさんを簡単に説明したものです。この番號がモモンさんに振り當てられた番號で、この番號を付で言ってもらえれば素早い検索が可能ですので」
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「ふーん」
「材質はノービスとFがブラス、Eがブロンズ、Dがアイアン、Cがシルバー、Bがゴールド、Aがプラチナ。そして最高位たるA+でミスラルです。まぁ、名譽職ともいえるA++だと最高位のレア金屬アダマンティンらしいですけど」
「ふーん」
「あ、その空いたにこれを通して、首から下げてください」
イシュペンがポケットから出した細い鎖をそのに通し、首からぶら下げる。モモンは再びその真鍮製のメンバーカードを凝視した。
「……魔法か何か付與されてるの?」
「いいえ? 何も込められてませんよ」
「ふーん。このメンバーカードを魔法の対象にするとか、ギルドとかってそういったことってしないの?」
「ギルドがそういったことを行うなんて聞いたことはありません」
「なるほど……」
これを目標に位置の追跡みたいな報収集系の魔法が可能かどうか。イシュペンは知らないだけというのは充分考えられる。その辺りの魔法知識はモモンの上司ともいうべきセバスが調べる手筈となっている。
ならば調べが付くまで出來る限り大人しくしておくのが良策か。それともモモンが調べるか。その辺りは臨機応変に対処すべきだろう。
モモンはイシュペンに禮を述べると、それを元のポケットにしまい込む。
イシュペンはしまうところを確認すると、並ぶドアの1つの前に立ち、ノックを數度。それから中に聲をかける。
「失禮します。ギルド付の者です」
返事を待たないでイシュペンはその扉を開けた。
「モモンさんをお連れしました」
その部屋にいたのは4人の男だ。首からは青銅でできただろうメンバーカードを下げている。皆、年齢は若く20歳にもなっていないのではないだろうか。
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ただ、年齢には似合わないような落ち著いたじが漂い、くつろいでいるように見える中にも警戒心を張り巡らしているのが、モモンにはじられた。皆、武は下ろしているが、それでも瞬時に武裝を整えることは出來るような位置取りだ。
それは潛り抜けてきた死線の中で培ってきたものだろう。
無論、その4人に比べ遙かに強者であるモモンからすれば、そんな行為は赤ん坊が肩肘張ってる程度の微笑ましいものでしかない。
なんと脆い奴らなんだろうとモモンは目を細めようとして、意志の力で押さえ込む。
モモンからするとこの一行の厚さが紙のようにしか思えないのだ。Eランクというから多は期待したというのに、ゴミ當然だ。ちょっと魔法を使えば、一撃で殺すことも容易いだろう。
もちろん自分と同じように擬態しているということは考えられるのだが、それを見抜くだけの力は持っていると自負しているモモンからすると擬態しているとはとうてい思えない。その程度の腕しか事実持っていないようにじられる。
もちろん、モモンよりも遙かに強く、守護者に匹敵するだけの能力を兼ね備えているという可能は捨てきれない。だが、そんな可能は空から隕石が降ってきて、モモンに當たるぐらいの可能だろう。
これがEランクだとすると――この程度では重要な報を手にれるまで、どれだけ時間が掛かることになるか想像ができない。単なる村人といいう設定を捨てるべきだろうか。そこまで思考し、モモンは自らの考えを捨て去る。
派手な行は慎めよ、というのは後に主人の私室に呼ばれた際に下された命令だ。主人の言葉に逆らうメイドは屑だ。ならばモモンに己の判斷で行する必要は無い。
モモンは笑顔を浮かべ、中の人間に頭を下げた。
「モモンです。はじめまして」
イシュペンに続いてモモンが室にる。
その部屋は4メートル四方のさほど広くない部屋だ。
中央に小さな円卓があり、それを囲むように6つのイス。そして部屋の隅にイスが幾つか置かれていた。壁にかなり巨大な背負子が立てかけてあった。あれが恐らくモモンが運ぶものだろう。
何條もの金屬製の細帯が互いに重なりながら、皮や編んだ鎖帷子の上をそこそこ覆った鎧――帯鎧<バンデッド・アーマー>を著用した戦士風の男。
きやすそうな軽皮鎧<ソフトレザー・アーマー>を纏い、イスの橫に弓や矢筒を置いた盜賊風。
宿屋の主人が言っていた皮の服というのはこんなじなんだろうなと理解できる、鎧を著用しているとは決していえないような軽裝をした優男。
そして盜賊風の男に良く似た裝備だが、皮鎧をさらに厚手の皮で補強された厚手皮鎧<ハードレザー・アーマー>を著た男がイスに座っていた。
4人の冒険者の品定めするような視線がモモンの全を嘗め回す。その中で最も視線がとどまった時間が長いのは、モモンが嵌めた無骨なガントレットか。
「今回は遅れてしまい、申し訳ありません」
り口でぺこりと頭を下げたモモンを、戦士風の男が宥めるように口を開く。
「いや、気にしないでください。モモンさん。ちょっと朝っぱらからごたごたしまして」苦笑いを浮かべ「単に我々が朝からどこかの娘さんがヒステリーを起こされただけですので」
それにあわせて袋が破裂したのか、他の冒険者達からも不満がこぼれ出す。
「せっかく英気を養うと言う意味で最高級の宿屋に泊まったのに朝っぱらから、アホな娘に起こされてな。ほんと、腹が立つ」
「どこの商人だかしらんが、あんな娘を持って大変だな。執事のじいさんもかなり苦労していたみたいだしな」
「まぁ、おかげであの豪華な朝食は只になったんですから、寛大な気持ちで許してやりましょうよ」
「――とりあえずイスにかけてください。取り合えず自己紹介も兼ねた依頼の容や、今回の仕事の中を話したいので」
意外だ。
モモンは自らが想像していた人像との乖離に驚く。
もっと上段から見下ろすようなじで扱われるかと思っていたのだが、非常に友好的に事を進めようという意思がけている。イシュペンがいることとはあまり関係がなさそうだ。
モモンは空いたイスの1つに座るのを見計らい――
「では私はこれで」
「ああ、ありがとうございました」
――イシュペンがドアを閉め、出て行く。最後に親指を上に立て、にやりというやけに男らしい笑いを殘して。
「気にられてるんですか?」
「何ででしょう……」
殘された4人の冒険者の視線がモモンに集中した。その中で戦士風の男が代表として立ち上がった。
黒髪黒目。特徴のこれといってない平凡な顔立ちだが、右の頬に並行して走る深い傷跡があった。鎧にも様々な傷跡が殘り、幾つものモンスターとの戦いを生き殘ってきたのだろう。
「とりあえずはモモンさん、初めまして。私がパーティー名『旋風の斧』のリーダーをさせてもらっているペテル・モークです。とりあえずは簡単な自己紹介とさせてもらおうと思います」
「で、あちらがチームの眼や耳であるレンジャー、ルクルット・ボルブ」
皮鎧を纏った盜賊風の男が、軽くおどける様に頭を下げる。全的にやせ気味で、やけに手足が長く、蜘蛛を髣髴をさせるフォルムだ。ただ、その細いは無駄なものをかなり削った結果によるものだろう。
やはり髪も目も黒い。
「そして魔法使いであり、チームの知識代表。ニニャ――『ザ・スペルキャスター』」
「よろしく」
もしかすると全員の中でも彼が一番若いのだろうか。まだ大人というには若々しすぎる笑顔を浮かべて、軽くお辭儀をしてくる男。
金髪碧眼。は他のメンバーがそこそこ焼けているのに対し、白い。
顔立ちもこのパーティーでは一番の形だ。男のしさというより中的なしさ。聲も男のものにしては若干甲高い。
ただ、浮かぶ微笑はまるで仮面のように顔に張り付いているだけのものだ。作り笑いとも違う何か。あまり良いものではないのがモモンはじ取れるが別に気にする価値も無いのでそのまま流す。
服裝も他のメンバーが鎧を著ているのに、彼1人だけ皮の服を著ている程度。その代わりにベルトには様々な奇怪なものをぶら下げているのが機の影から見えた。奇妙な形の瓶や、変わった形の木製細工等を。
「しかし、その恥ずかしい二つ名やめません?」
「え? 良いじゃないですか」
不思議そうなモモンに注釈をれるようにルクルットが口を出す。
「いや、天才とかいわれるぐらい有名な魔法使いなんだよ、こいつ」
「へー」
「10年かかるところを4年だっけ? まぁ魔法使いじゃないからそれがどれぐらいすごいのかいまいちピンと來ないんだけどな」
「本當に葉えたい夢があって、死に狂いで努力すれば何とかなりますよ」
「なんともならないと思うけどなー。やっぱ才能は重要だよ」
「まぁ、それも否定は出來ませんが……」
確かに全員の中では多分強いんだろうなという気配がある。だが、それでもモモンのレベルからすると下過ぎて実力のほどが分からないぐらいなのだが。
「そして最後の彼は森祭司<ドルイド>――ダイン・ウッドワンダー。治癒魔法や自然をる魔法を使い、薬草知識に長けていますので何かあったら、直ぐに相談してください。腹痛とかにも良く効く薬とかもありますから」
口周りにぼさぼさと生えた髭と、かなりがっしりとした格が、野蠻人じみた印象を抱かせる男が重々しく頷いた。とはいってもモモンの外見よりも若いのだが。非常に僅かだが草の匂いが漂ってくる。その発生元は腰から下げている袋からか。
「では、私がモモンです。今回初仕事になります。お邪魔にはならないようにしますので宜しくお願いします」
「はい、宜しくお願いします。――では早速で悪いんですが、仕事の話に移りましょうか。えっと大の話はギルドの方から伺っていると思うんですが?」
「はい。周辺モンスター討伐の際の荷運びということを伺ってます」
「そういうこと。この街周辺に出沒するモンスターを狩るのが今回の仕事ってわけ」
レンジャー――ルクルットが口を開く。
「モンスターを狩るとそのモンスターの強さに応じた報奨金が街からギルドを通して出るんだ。だから仕事の無い冒険者は基本的に巡回してモンスター退治を行うものさ」
「飯のためにな」
もっさりとした口調でドルイド――ダインが橫から口を挾んだ。
「俺達は飯の種になる。周囲の人間は危険が減る。商人は安全に移が出來る。國は稅がしっかり取れる。損する人間は誰もいないって寸法さ」
「今じゃギルドのある國なら何処でもやってることですけど、5年前はそんなこと無かったんですから驚きですよね」
魔法使い――ニニャの発言にあわせ、パーティー全員がしみじみと頭を縦に振った。
「全くだ」
「王様萬歳って奴だな」
「頓挫しましたけど、冒険者においては足稅も無くなるという方向にももって行きたかったみたいですよ」
「ほえー。冒険者をそこまで評価するとはねぇ」
「全くですね。國家に忠誠を盡くしてない武力組織なんて、場合によっては敵になりうる組織だというのに。帝國でもそこまでの寛容さは持ってませんよ」
「ほんとうにあの王様は殆ど潰されたけども、々な案を出す方だよ」
「あんな人さん嫁にしてぇー」
「なら貴族になるように努力したらどうだ?」
「あー無理無理。あんな堅苦しそうな生活はできねぇな」
「でも貴族様は良い分だと思いますよ。住民を絞り上げて、自分ののままに行して良いと國で定められてるんですから」
ニニャの微笑みの下のドロドロとしたものが滲み出ていた。モモンとニニャを除いた皆が直し、それからルクルットがやけにわざとらしい軽い口調で話しかける。
「うわー、何時もながらきつい事言うね。おまえさんの貴族嫌いは相変わらずだねー」
「一部の貴族がまともなのは知ってるんですけどね。姉を豚に連れて行かれたとしてはどうしてもね」
「……話がずれているぞ。そういう話は彼の前でする問題じゃないだろう」
ダインの修正に乗るようなじでぺテルがわざとらしい咳払いをしつつ続く。
「ゴホン。ゴホン。まぁ、そんなわけでこの周辺を散策することになります。そのため、文明圏に近いからさほど強いモンスターは出ないから安心してしいですね」
「今回が初めてって訳じゃないからなー」
ペテルは羊皮紙を持ち出すと、それをテーブルの中央に広げる。恐らく周辺の地図なんだろう。村や森、川といったものが細かく書かれている。
「基本的に南下してこの辺りを散策します」
羊皮紙の中央から始まって、南方の森の近辺を指で指し示す。
「スレイン法國國境の森林から出てきたモンスターを狩るのがメインですね。後衛まで攻撃を飛ばしてくるような道を使ってくるのはせいぜいゴブリンぐらいですか。まぁ、ゴブリンは難度10程度ですからさほど心配されることも無いです」
「まぁ、その分弱くてぶっ殺しても銀貨1枚程度だがねー」
「了解しました」
一行の余裕は、モモンは微かに疑問をじさせた。
モモンの知るゴブリンはそのレベルに応じて戦闘能力を増していく。彼ら一行ではゴブリンリーダーの1つ上、チーフクラスはきついんじゃないだろうか、という程度の能力しか持ってないように思われる。
そういうものが出ないと確信しているのだろうか。それともこの世界ではゴブリンはその程度しか力を持っていないのだろうか。モモンの知る最弱のゴブリンはレベル3ゴブリンだ。確かにその程度ならこの一行でも倒せれるだろう。余裕かどうかまでしらないが。
一応はゴブリンという種において確認を取っておいた方が當然良い。
「……強いゴブリンというのはいないのですか?」
旋風の斧は互いに顔を見合わせ、それから何かの考えに同意に至ったのか、安心させるような口ぶりで返答する。
「大丈夫ですよ、確かに強いゴブリンはいます。ですが我々が向かう森から出てきません。というのも強いゴブリンは部族を支配する立場です。部族すべてをあげてくということは考えにくいんですよ」
「ゴブリンも人間の文明は知ってますからね。大侵攻ともなれば厄介ごとになると理解しているんです。特に強いゴブリンのような賢い上位種は」
「なるほど、了解しました。ただ、參考までに遭遇する可能のあるモンスターの一部のが、どの程度の難度か教えてはいただけ無いでしょうか?」
旋風の斧のメンバーが一斉にニニャに顔を向ける。それをけてニニャが教師のような表で指導を始めた。
「まずはボクたちが良く遭遇するゴブリンの難度は6ぐらい。ウルフが難度10ですね。その他の野生の獣では難度20後半に到達するようなものはこの辺りでは遭遇した記録がありません。最高で難度20前半です。草原で遭遇する可能で最も危険が高い人食い鬼<オーガ>で20ぐらいでしょうか」
「先ほどから聞いていると森にはらないのですか?」
「はい。森で行するのを避けるのは単純に危険度が高いからです。跳躍する蛭<ジャンピングリーチ>や巨大系昆蟲等ならまだ何とかなります。ですが木の上から糸を吐いてくる絞首刑蜘蛛<ハンギング・スパイダー>、地面から丸呑みにしようと襲い掛かってくる森林長蟲<フォレスト・ワーム>等の難度20後半のモンスターは々きついですね。ですので森にはりません。森にると一気に難度が上がりますから」
なるほど。モモンは頷く。森から草原にこぼれ落ちたモンスターを狩るということか。
「だから安心してくれよ、モモンさん。あんたは俺達が必ず守りきるからさ」
モモンは殆ど無表を維持したまま、軽い口調で安心させるように話しかけてくるルクルットに頷く。しかしながら面ではじりじりと理が黒い炎で炙られるものをじ、必死にこらえるのが一杯だった。
遙かに劣る生きにめられるこの気分。
しかもモモンが弱いと彼らは真剣に思っているのだ。セバス直屬、ナザリック大地下墳墓の心臓部たる最下層を守るように命令をけていたモモン――ナーベラル・ガンマを。
モモンは息をゆっくりと細く長く吐き出す。に溜まった熱を排出するように。
「ではモモンさん。疑問ももうなさそうですし、出発準備にりたいのですが、大丈夫だとは思ってますけど、あの背負子を持ってもらえます?」
「あ、はい。了解しました」
ペテルの指差した場所に背負子が立てかけてあった。
モモンはそこまで行くと、背負子を持ち上げる。あまりにも力をれないで持ち上げたように見えたため、その場にいた皆が驚き、僅かな嘆の聲を上げた。
「充分です、モモンさん」
「ああ、あれほど容易く持てるとは、驚いたな。外見と中ではかなり違うということか」
「村で、こういう荷は運んでましたから」
「なるほどねー。ペテル。これなら安心だな」
「ああ、そうだね。では一応の注意を。基本的にモモンさんは戦闘の際には後ろで隠れていてください。その背負子は背中の部分に薄い金屬板がってます。それを盾にすれば矢も貫通しないはずです。そして例えば私達の誰かに危険が迫ったしても、自分の安全を第一に考えてください」
「了解しました」
「では出立しましょうか――」
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8 95【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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