《オーバーロード:前編》會談-4

一通りの話を聞いた後で、デミウルゴスが瞳を閉ざした。アインズは心は恐る恐るだが、態度には出ないように注意をして問いかける。

「やはり不味かったか?」

「はい」

デミウルゴスの即答を聞いて、アインズはやはりと思う。

「……アインズ様の優しさが裏目に出ました。上位者としての態度を取って行けば、あのような結果にならなかった可能もございます」

「そうか……」

予測は出來ていたが、斷言されると気が重い。

しかも激に駆られて殺すというのはとんだ失態だ。今まで殺すよりも生かしていたほうが何かに使える。そういう意思で行していたのにも関わらず、なんで重要なときにそういった行を取らないのか。

王國と事を構えるのは最終的には仕方が無いかもしれない。しかし、まだまだ未知の部分が多い中、敵対行に出るつもりは無かった。この結果、ナザリックの存続に関わるような展開になったら、かつての仲間にどのように謝罪すれば良いのだろうか。

「しかしながら……王國側の行々稚拙なもの事実」

アインズはあごをかし、続けろとジェスチャーを送る。

「馬車の準備や使者の送り方。基本的にナザリックを重要視していないのが読み取れます」

「セバス」

「はっ。私もデミウルゴスと同じ意見を持ちました」

「そうか。ではどうする? 我々重要視しないのであれば同じことが繰り返されだけだ。いや、確かに次回はより上手く行くだろう。しかし、スタート時點の評価の低さはどうにかしたいものだな。それに蒼の薔薇の件もある」

「……それであれば、アインズ様。手段の一つとして私がお勧めしたいのは王都にモンスターを送り込むことです」

「何? 蒼の薔薇にぶつけるのか?」

「その通りでございます。70レベル臺のモンスターを送り込み、王都で暴の限りを盡くさせます。これを蒼の薔薇が倒せるなら、かれらの実力はそれだけあるということ。蒼の薔薇が逆に全滅したなら、それはそれでナザリックに敵はいなかったと知るということ。アインズ様がそのモンスターを殺して名を売るというのも良いかもしれません」

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アインズが本當に警戒しているのはユグドラシルプレイヤーの存在。

その存在がどの程度いるか不明の段階で、人の大量殺戮等をして敵に回すという愚は犯したくは無い。正義の味方を気取るユグドラシルプレイヤーとは戦いたくは無いのだ。

しかしこれだけ報を集めても、れや不安があるという現狀に不満をじているもの事実だった。

アインズはしばらく考え、それからデミウルゴスに頷いた。

「そうするか」

その言葉にデミウルゴスは酷薄な笑みを浮かべた。凄慘な景が頭の中に浮かんでいるのだろう。

「では何を送り込むかは私の方で決定しても?」

「そうだな……。そうしてくれるか?」

「かしこまりました」

どれほどおぞましく、多くの人間に絶を與えることの出來るものを送り込むか。デミウルゴスはそれを考えただけでもわくわくとしてくる思いを堪えられないようだった。

そんなデミウルゴスに失敗はないとは思っていても、一応念はれて針をさした方が良いと判斷し、アインズは警告を込めた低い聲で呼びかける。

「……デミウルゴス。承知しているとは思うが、我々が送り込んだと言う証拠を握られないようにしておかねばならない」

「はい、十分注意を払って送り込みたいと思います」

「…………」

アインズよりも優秀なデミウルゴスがこうも言い切るのだから問題は無いだろう。アインズがそう考えた時、魔法の発と共になんらかの糸のようなものが繋がる。

慣れた《メッセージ/伝言》の発である。

アインズは嫌だなと思いながら、送ってきた相手であるユリの聲に耳を傾ける。

一通り聞いた段階で、デミウルゴスとセバスの両者が自分に注目していることに気付く。《メッセージ/伝言》が飛んできたということを理解していたのだろう。

「……はぁ」アインズはため息を1つ。それからデミウルゴスを眺めた。「《メッセージ/伝言》だ。バハルス帝國の先れが來たそうで、皇帝があとししたら來るそうだ」

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「ほう」

デミウルゴスが歓心の聲を上げる。セバスも僅かに目を見開いた。

友好的ではない隣國まで、一國の頂點が出向いたということに対する驚きの表れだ。つまりは皇帝はナザリックに対する重要知していると言うこと。ワーカーを送り込んできたのが帝國の貴族であるということを考えると、その辺りのことも何かあるのかもしれない。

デミウルゴスは頭の中で無數の可能を検討し始める。

「しかし、どんな目的を持って來たのか」

アインズの呟きにデミウルゴスは一瞬、怪訝そうな顔をする。考えるまでも無く答えは1つしかないだろうから。

その一瞬の表の変化を鋭くアインズは捉える。

「デミウルゴス、答えよ」

「アインズ様にお會いしにだと思われ――」

「――愚か」

アインズの叱咤が飛び、デミウルゴスが直させる。

「その先を知りたいのだ。何故、皇帝は直接來た? どういう狙いがその後ろにある?」

「それは……」

デミウルゴスには答えられない。當たり前だ。報がない中、そこまで答えられるはずが無い。可能ならば幾つか考えられるが、自らの主人にそのようなあやふやな話をするのはデミウルゴスのむところではない。

自らの主人が真に考えていたところまで見抜けず、結果として自分が無禮な行為を行ったと知り、デミウルゴスは恥のあまりに自害をむほどだった。

だからこそ、安堵の息をらすアインズの表はつかめなかった。

「良い。良いのだ、デミウルゴス。々意地悪な問いかけであったな。自らが下らない失態を犯したことで、不機嫌になっていたようだ。許してしい」

頭を下げたアインズに、デミウルゴスもセバスも大きく慌てる。

「何をおっしゃいます! アインズ様のお優しさに付け込んだ、奴らが薄汚いだけ!」

「その通りです。私の王都の一件があったからこそ、波風を起こさないようにと考えていただけたお優しさは充分に理解しております」

アインズは僅かに驚いたようにセバスを見つめ、それから力なく下を向いた。

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「気付いてしまったか」

「元より……」

デミウルゴスはセバスとアインズを見比べ、何故アインズが使者に対して下に出たのか、その真意を摑んだような気がした。

セバスが行った行為は決して悪いことではない。しかしそれは片側から見た場合だ。

あの店がどのような経緯を持って経営されていたのかは不明だが、経営を維持できたということはなんらかの権力者との繋がりがあったからだろう。そんな店に襲撃をかけ、人を浚ったという行為は確実に権力者の恨みを買った筈だ。

もしアインズが王國の救世主と紹介されていれば、その行為は談の1つになるが、そうでなければ厄介ごとになる可能は充分にある。もし権力者が貴族であった時、さらに強い力を王國で持っている場合は特に厄介だ。

無論、これはセバスと言う人を表に出さなければ問題にはならないかもしれないが、絶対ににできるかと問われたなら首を傾げてしまう。

というのはれると考えたうえで、計畫を立てるほうが正解なのだから。

相手の今回の出方を考えると王國の救世主という線は消えている。ならばセバスというカードを一枚渡している狀況では、下から出る方が厄介ごとにはならないはずだ。下手に怒らせて、カードを悪いように切ってこられた場合、困る可能だってあるのだから。例えば犯罪者であるセバスを引き渡せのように。

アインズの取った行は、力でどうにかしようと考えないのであれば、部下を守るということを前提に自らを投げ打った良策だ。

デミウルゴスに続き、同じ思いを抱いたセバスも震いする。

アインズが自らの部下をどれだけ大切にしているか、充分に理解できるために――。

自らの部下の忠誠心がゲージを破壊して上昇している中、アインズは流れないはずの汗が大量に流れているような、そんな幻覚に襲われていた。

まさに綱渡りだ。

そしてこれ以上の會話は何かボロを出しそうな気がすると判斷したアインズは、全てを終わらせるようにもっていくことを決める。ただ、その前にセバスに対する謝罪はする必要がある。

セバスは悪くも無いのに、悪者にしているような気がするから。

「すまないな、セバス」

アインズは頭を下げる。その行為は2人を驚愕させるには充分だった。何故、自らの偉大なる主人は頭を下げるのか。

「本來であればセバスに目立つような行為を取らせなければ、このようなことでお前を悩ませるはずは無かったはずだ。あの時の私の考えが甘かったと言わざるを得ない。だからお前が気にすることは無いのだ」

デミウルゴスもセバスも瞳の端にるものを宿す。

なんという寛大かつ慈悲に溢れた方なのかと思って。

――この方だからこそ最後まで殘ってくれたのか。

自らたちを生み出した至高の存在は姿を隠した。しかしそれでもなお、最後まで殘ってくれた――自らたちを捨てないでくれた方がいる。

その思いはデミウルゴス、そしてセバスの忠誠心をより高め、もはや狂信という領域まで到達させる。

2人が己の思いを燃え上がらせている中、アインズは許してくれたのかと判斷し、口を開く。

「さて、皇帝が何故……私に會いに來たかは不明だが……デミウルゴス!」

デミウルゴスは一禮をする。アインズの言いたいことは命じられずともわかる。

「では準備の方は私にお任せいただけるでしょうか?」

「ああ。任せるとも、デミウルゴス」

「畏まりました! そのご期待にお答えできるよう、全力を盡くしたいと思います!」

デミウルゴスの熱意に満ちた返答。

アインズは心の中で拍手喝采をデミウルゴスに送る。

引きけてくれてありがとう。もし演技をしてないなら、そうんでデミウルゴスの手を握っただろう。

そんな思いをおくびにも出さずに、アインズは重々しく頷く。

「では、全権をゆだねる。したいようにするが良い。ナザリックにある大半のものの使用を許可しよう」

「ありがとうございます、アインズ様。ではアインズ様もお召しをお代えください」

「む?」

アインズは自らの來た白や金に彩られた服を見る。

「アインズ様はやはり闇と共にあってこそ、栄えるお方。その服も良いものですが……」

「……セバス。デミウルゴスと相談の上、服を見繕ってくれ。ただ、裝飾過多なのはちょっと……」

「畏まりました」

2人の聲が揃って聞こえる。アインズは安堵したように、デミウルゴスに軽く聲をかける。

アインズの心の中では、すべてデミウルゴスが終わらせてくれるだろうと判斷して、すでに終わった話となっていたのだ。

「では、デミウルゴス。私がすべきことは何かあるか?」

「いえ。アインズ様は玉座に腰掛、來訪した者たちにナザリック大地下墳墓の主人として、絶対なる支配者としてお相手されるだけでかまいません。あとの雑務は我々が」

「…………?」アインズは目をぱちくりさせる。「やはり私が相手をしなくてはならないか」

「おお、アインズ様。やはり弱者たる人間の相手はお好きにはなれませんか。しかし、相手が禮儀を盡くしてきたのです、こちらも禮儀を取るべきでしょう。たとえ、下等な蟲けらといえども」

いや、そういうことではなく。

アインズはそう言いたい気持ちをぐっと押さえ込む。重役會議に新社員を出すなよ、とべればどれほど楽か。しかしそういうわけにはいかない。アインズはこのナザリックのトップに座する者なのだから。

王國の失敗で、あと時抱いた覚悟がどこかに吹き飛んでいる。

アインズは己の駄目さ加減にしょんぼりとしながら、再び覚悟を決めようと自らに聲援を送る。

――頑張れ、俺。

――負けるな、俺。

しばかり自分が馬鹿なような気がするが、それでもなんとか皇帝を迎えれる覚悟は湧き上がる。

「そうか。では私は準備を整えたらあちらで待つとしよう」

6臺の豪華な馬車が草原を疾走する。

草原という場所にも係わらず、その馬車は驚くほど上下しない。それはその馬車が外見のみならず、様々な場所に驚くべき金額を注ぎ込んでいるからだ。

まずは車の部分。これは快適な車<コンフォータブル・ホイールズ>といわれるマジックアイテムである。さらに車部分にも軽量な積荷<ライトウェイト・カーゴ>という魔法的な改造が施されている。

合計すると目玉が飛び出るほどの金額を費やいている馬車を引く馬。それはスレイプニールといわれる魔獣の一種である8足馬だ。それらを合計して6臺分ともなれば、費やした経費を計算するのも馬鹿馬鹿しくなるだろう。

そんな単なる金持ち程度では乗れない馬車の周囲には、見事な軀の馬に乗った者たちがいる。

総數で20人を超えていた。

皆、チェインシャツに腰に剣、背中には矢筒とロングボウという同じ武裝を整えている。

武裝自は傭兵といっても通りそうな格好だが、その規律取れたきは決して単なる傭兵に出來るものではない。その目は鋭く、周囲を油斷なく警戒している。

これほど開けた草原でありながら警戒を怠らないというのは、愚かにも思えかねないが実際は違う。下手なモンスターは致命的な攻撃を行ってくるものが多い。石化の視線を行ってくるモンスターに近寄りたいと思うものがいるだろうか? 猛毒のブレスを吐いてくるモンスターに近寄りたいだろうか?

そういった危険なモンスターを遠くから察知するには、風によらない草のきなどに注意を凝らす必要があるのだ。

そして上空に目やれば、そこにも警護の手はある。

そこにはヒポグリフと呼ばれるモンスターに乗った者たちの姿があった。

飛行できる騎乗――これらはモンスターだが――は売買するなら非常に高額になるのは説明する必要が無いだろう。彼らの目的もまた地上の者と同じで、馬車の警護である。

これほどの警護をされている馬車の中にいる人間が、大した地位で無いはずが無い。

それも當然である。

その馬車の一臺にいる男こそ、隣國バハルス帝國の支配者。鮮帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスなのだから。

ジルクニフの馬車はまるで豪華なホテルの一室を思わせた。壁や床にはらかな絨毯がり付けられ、座る場所もらかで長期間乗っていても痛くなるようなことが無いつくりだ。

実際、広くないということを除けば、ここで生活している方が快適なつくりだという人間がどれぐらいいるかは想像もできないほどだろう。

そんなところにいるのは4人の男。馬車とも言えば4人も乗ったら狹くじるというイメージが強いが、それは本當に贅沢な馬車に乗ったことの無いイメージにしか過ぎない。

4人の男はみなゆとりあるスペースを保っていたのだから。

そんな男のうちの1人は當然、この馬車の主人である皇帝、ジルクニフである。その顔に微妙な笑みを浮かべつつ、報告を楽しみながら聞いている。

そしてもう1人。それは皇帝に報告をする者。

白く長い髭を生やした老人であり、その名を近隣諸國で知らないものはいないとされる、生きる伝説。フールーダ・パラダイン。

そして皇帝の橫にはバインダーに書類を挾み込んだ。ロウネ・ヴァミリネン。

そして最後は金屬製の全鎧にを包んだ男だ。流石に馬車の中にあってはそのヘルムは外しているために、その髭の生えた野生的な素顔が出している。

彼こそ帝國4騎士といわれる者の1人、『雷』バジウッド・ペシュメルだ。

「以上の時刻より、ナザリック大地下墳墓の周辺を監視しているものから報告がございません」

「なるほど、すべて殺されたか」

気楽そうな皇帝の言葉だが、隣に座ったロウネは僅かに眉をかす。彼ら1人1人はかなりの金額を投資して育した、帝國でも類を見ないほどのエリートだ。そんな簡単な言葉で済ませられる出費ではない。

そんなロウネの雰囲気を変化を、隣も見ずに理解したジルクニフは、淡い期待をそぎ落とそうと薄い笑いを浮かべたまま、フールーダに問いかける。

「じい。それ以外の理由で連絡がつかなくなった可能は?」

「ありえますな。4つのチーム全てを同時に巻き込むような、巨大な魔法的防手段を講じられればそうなるのでしょうな」

「その可能は?」

「……空から太が落ちてくるような可能ですな」

「そうか。世界中が常時真っ暗になるよりは、殺された――は言い過ぎにしても無力化されたと考えた方が安心できるな」

「無力化ですんでいると助かるのですが」

算盤を弾いて用いたような、質な聲。そんなロウネの考えをジルクニフは笑い飛ばした。

「買い戻すのに非常に金が掛かるぞ? それよりは見捨てた方が安くないか?」

「確かにそうです。……しかしながら見捨てれば彼らの士気が下がるかと?」

ジルクニフは初めて笑みを消す。

「侮りすぎだ。そいつらもその程度の覚悟は承知の上だ。そうだろ?」

「おっしゃるとおりです」

「ただ、またカードを持たれたのは痛いな」

これでワーカーに続いて2枚目だ。

しかしながらジルクニフはしばかりの楽しみもじていた。

カードを持たれたとしても、別に問題は無い。カードゲームだって使ってこないカードに警戒する人間はいないだろう。重要なのは、相手がどのようにそのカードを切ってくるか。その一點に集約される。

ジルクニフが楽しみに思っているのは、未知の相手の手を覗き込むことのできる瞬間だ。

「……それよりも陛下。危ないんじゃないですか? 先行して俺達だけで様子を見に行きましょうか? 何か様子が変わっていると厄介ですし」

皇帝に対しての言葉遣いとしては、失格の印が押される禮儀の無い喋り方だ。

バジウッドは元々、王國の最強の戦士ガゼフ・ストロノーフと同じく平民上がりである。そのため々と修正されたが、それでも時折喋り方に育ちが出てしまう。しかしこの場においてそれを注意する者はいない。

バジウッドがここにいるのは皇帝をお喋りで楽しませるためにではない。買われているのはその高い戦闘能力。ならば言葉程度大した問題ではない。そう、バジウッドはその腕でジルクニフを守れば良いのだ。

だいたい喋り方に品が無くとも、バジウッドは別に馬鹿ではない。4騎士の唯一の平民出であり、まとめ役に就いているのは伊達ではないのだから。

「早馬は送っているのだろ?」

「はい。既に『ロイアル・エア・ガード』を送っています」

「私の弟子も同行させております。《メッセージ/伝言》が帰ってこないところを考えると、まだ著いてないのでは無いでしょうか?」

「今の移速度だとナザリック到著は何時間後ぐらいだ?」

「はい」ロウネが懐から時計を取り出し、その時刻を確認する。それから口を開いた。「およそ1時間後かと」

「まぁ、ならば4騎士を出したところで、あまり意味が無いだろう」

「どういう意味ですか?」

「最初からこっちを害する気持ちなら、対処の仕様が無いということだ。まぁ、運次第じゃないか」

ピラピラと軽く手を振るジルクニフを除く、全員が顔を見合わせる。

自らの皇帝である、ジルクニフは微妙に変なところがある。

悪い意味ではないが、自らの命を軽く考えている気配がある。もしくは自らの命が奪われるはずが無いと高をくくっているのか。

馬鹿なことなために命を投げ出すという意味ではない。すべきことのためであれば、自分の命も賭けのチップになるということだ。問題はすべき事と言うのが、常人だと微妙に思ってしまうこともそれに含まれるということだ。

つい最近であれば、ガゼフ・ストロノーフを帝國に勧するために、周囲を騎士に守られていたとはいえ、戦場にって聲をかけたこともそうだ。

「それよりは王國の使者がナザリックに到著したせいで、會えなくなるというのが一番詰まらんな」

「……運次第といわれましたが、その可能はどの程度で?」

「うん? ああ、あの化けがどのようにくかだな」

ジルクニフが警戒心を表に、化けと呼ぶはこの周辺國家にたった1人しかいない。

「……ラナー王がですか?」

「ああ。あれがこっそりいていたら厄介だな。あれは人の気持ちが理解できない分、純粋なメリットを的確に提示する。アインズ・ウール・ゴウンを引き込むにたるメリットを用意してるだろうな。……いや、道の1つとして相手の気持ちも使用するんだから、本當は理解できてるんじゃないか? あの気持ち悪い、誰か暗殺してくれないものか」

「それがご命令でしたら即座にイジャニーヤを呼び集めますが?」

ロウネの言葉にフールーダが微妙な表を浮かべる。

「よせよせ。あのには新たな技を発見してくれなくては困る。殺すよりは生かしておいたほうがちょうどいい。……あのその辺まで理解してるんじゃないか?」

「ありえますね」

ラナーの提案を行うタイミングは微妙に帝國のきを読んでいるのではと思うときがあった。特に、公表を惜しんでいるときなど特にその雰囲気を強くじさせる。もし、そうだとしたらラナーというは、目も耳も無い狀況で、帝國のきを知してうまく転がしているということになる。

こういった得の知れなさが、ガゼフさえも部下にしようとするジルクニフが、いまいちしがれない理由だ。

「もしラナー王いていた場合の陛下の安全は?」

「問題ないだろ、じい。俺を殺すよりは利用しようと考えるだろうさ。あのなら」

それはどうだろうかと3人――もしかしたら2人の男は思う。

現在、鮮帝とも恐れられる目の前の人の下、帝國は絶対的な組織を作ろうと邁進している。その絶対的な組織の頂點たる人を今失うことは、その歩みが一気に瓦解する可能があった。

なにより現在、皇帝の世継ぎはいまだい。

將來的に帝國がどの程度の巨大な國家となるか。それを悟れる者であれば、何を犠牲にしてもいまここで皇帝を亡き者にしようと思うはずだ。王國や法國のような近隣諸國は特に。

「まぁ何か起こりましたら、私の元まで」

「ん? じいの転移魔法か?」

「はい。それで陛下ぐらいなら問題なくつれて戻れますので」

「ならば俺たちはその盾を見事こなしてみせますって」

「私はその辺で小さくなって邪魔にならないようにします」

まじめな顔でそう言い切るロウネに微妙な笑い聲が上がった。そんな中、コンコンと馬車の扉がノックされる。馬車に僅かにかかる振は、いまだいていることを意味する証だ。

この馬車は占対策や防効果を考えて、ほぼ全面を金屬板で囲まれている。そのために外を覗くための窓というものは無い。バジウッドがき、扉に手をかける。別に問題は無いはずだが、念のための用心というやつだ。

扉を開ける。草原の新鮮な風が流れ込んできて、室の人間の髪をかすかにくすぐる。

扉の外、馬車に併走するように空を飛んでいたのは、《フライ/飛行》を使っている魔法使いであり、フールーダの高弟の1人だ。

「失禮いたします」

飛行狀態の人間が、頭を下げるというのは微妙に変な景だ。ジルクニフも苦笑いを浮かべると指示を出した。

「そこで話すのもなんだ、れ」

「ははっ。失禮いたします」

り込むように馬車にり、魔法使いは扉をしっかりと閉める。そんな僅かな時間ももったいないように、ジルクニフは魔法使いに尋ねた。

「屆いたか?」

「はっ、はい。今、《メッセージ/伝言》が――」

「――何だって?」

「はい。現在ナザリック大地下墳墓のログハウスにてメイドに陛下の來訪予定を告げたとのことです」

「で、王國の馬車は?」

「はい。現在、その姿は発見できずとのことです」

「ふーん」

考え込むように、ジルクニフはに指を當てる。隠したのか、隠す必要があったのか。どちらも考えられる。

「……それ以外に報告は?」

「以上になります」

「陛下、偵察していた人間を探さないので?」

「止せ、止せ、バジウッド。そいつらは部下が勝手に送り込んだことだ。私からの使者が探しに行ったら、私が知っていたことになるじゃないか」

ジルクニフは座席に深々と座りなおす。

「まぁ、あとすべては1時間後だ。楽しもうじゃないか」

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