《【書籍化】勝手に勇者パーティの暗部を擔っていたけど不要だと追放されたので、本當に不要だったのか見極めます》06 理知的な敵対國

な、なんという冷靜で的確な判斷力なんだ!

そのころ、王國家から大陸をいだ東端に位置する、魔王國にて――。

「――我々は今後、人間たちとの和平を視野にれ、外を進めることになる」

會議の席にて、魔王が口にしたその方針に、出席者たちは騒然とする。

「へ、陛下、そのようなっ……」

「まぁ聞け――確かに、お前たちが慌てるのも無理はない。急な話でもあるし、仕掛けてきたのは人間の側なのだからな」

宣戦を布告し、軍を起こしての侵略でないとはいえ、魔王に抗しうる勇者という存在を送り込もうとしている以上、それは立派な戦爭行為だった。

しかもその原因が、魔王ですら統治できない魔たちの暴走、それによる被害を、魔族の扇だと決めつけた、いわば言いがかりである。

そもそも魔というのは、魔族の流れを汲んでいるとはいえ、分類的には野生となんら変わりない。

それらがどんな生態を持ち、どんな被害を人間に與えるかは、研究において明らかになっていたとしても、魔族の制下に置かれるわけではなかった。

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そんな言いがかりで戦爭を仕掛けられたというのに、なぜこちらから折れ、人間と和平を結ばねばならないのか――。

魔族の名高い勇士、名士、重鎮たちから不満の聲が上がるのもやむを得ない。

「我々とて勇者に刺客を差し向けてはいるが、侵攻への影響は皆無だった。その時點で余はすでに、和平の道を模索し始めておったのよ」

すべては、罪なき魔族に被害が出ないよう、民の平穏を願っての考えである。

だが、勇者たちの侵攻速度や、こちらから差し向けた刺客等の被害を考えれば、戦力的には人間が勝っていると思われた。

ゆえに、その時點で和平を結ぼうとすれば難題をふっかけられ、不利な條件でれるしかなかっただろう。

「では――ここにきて、戦況が変わってきたと?」

「うむ。なにがあったかは知らんが、勇者はどうも、辺境の地で足止めをくらっておるようだ。王國側に見えるきな臭いきも、我らには有利に働くであろう」

そちらも困っているようですし、いかがですか、ここらで手打ちとしませんか――ということだ。

「しかし、そうであればっ! 逆にこちらから攻めることも――」

「馬鹿者が!」

派の一部が聲を上げるも、魔王の叱責が空気を揺るがし、會議室はシンと靜まり返る。

「いや、すまぬ……だが、よく考えてもみよ。人間たちの開戦機を見るに、我らには相互理解が足りなかったのではないか?」

數百年前の、魔大戦と呼ばれる戦爭の影響もあり、人間と魔族は積極的な流を持たず、國などとうに絶たれていた。

その無関心さが、魔を魔族と同一視するという誤解を生み、今回のような悲劇を生むことになったのだ。

「やむを得なかったとはいえ、すでにこちらからも刃は向けてしまった。だがいまは、互いにその刃をおさめられる狀況にある……停戦の好機なのだ」

「ですが、人間がそのように考えてくれるかどうか……」

「なに、心配はいらぬ。現狀を鑑みれば、そう考えざるを得ないはずだ」

人間が戦力的に優位だった原因は、ひとえに勇者たちの存在だ。

その勇者が戦力にならないとなれば、仮に全面戦爭にいたった場合、魔族の攻勢をけて、確実に耐えられるという保証がなくなる。

「権力爭いや貧富の差、犯罪など、部の爭いの種は絶えぬが……なくとも為政者として、民を不幸にしたいと願いはせぬだろう」

あえて國民に負擔をしいずとも、平和的に本の原因を取り除けるなら、そのほうが國全の負擔がなくなるのだ。

「では陛下、こちらからは魔の研究果を、和平の條件にされると?」

「そのつもりだ。各地で多発するそれらの被害は、我らとて他人事ではない。協力できることがあるなら、互いに手を結ぶのが上策であろう」

抜本的な解決――とまではいかないが、十の被害を半分にできるとなれば、それでどれほどの民が救われることか。

場合によっては人材を派遣し、魔への対応を指導するとともに、あちらからも人材をれ、研究の幅を広げたい。

最終的に、魔を本格的に統制する方法でも見つかれば、それに勝る平和の道はないだろう。

「余の考えは以上だ。押しつけるつもりはないが、この會議で結論はだすつもりでいる……反対意見のある者は、遠慮なく申し出るがよい」

勇者たちに刺客を差し向け、大勢の部下を失った魔族もいるが、彼らとて平穏を願わぬわけではない。

そして魔王も、その不満を呑み込めとは命じない。

和平を目指し、しでも平等な條約を結べるよう、會議は踴り――ゆっくりとながら、妥協點を探して進むのだった。

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