《【書籍化】勝手に勇者パーティの暗部を擔っていたけど不要だと追放されたので、本當に不要だったのか見極めます》09 王の判斷

2X歳、王です。

王宮に置かれる執務室にて、王は小さくため息をもらす。

手元にあるのは、魔王國から送られてきた親書。

悪い報せというほどではないが、王のんでいたものではない。

(ですが――このあたりが時なのかもしれませんね)

フッと息をもらし、王は返書をしたためるべく、筆を取った。

數名による旅路とはいえ、遠征の距離を思えば、費用は莫大になる。

にもかかわらずアシュラムたちは、それを最低限でいいと言ったのだから、王家としては願ったり葉ったりの狀況だった。

それを可能にしているのが、冒険者から引っ張ってきたスカウト職の男だということを、王は知っている。

そして、彼が旅をやめられない理由が、同じように仲間に加わった魔士のにあることも。

どちらかさえ押さえておけば、旅路に問題が生じることなく、國庫への負擔も最低限で済む――はずだった。

(……だというのに、ここで追加の費用をかけさせるなんて、彼らはなにをしているのでしょう)

とはいえ、自分たちで送り込んだ勇者の支援なのだから、拒めるわけもない。

大臣たちの苦々しい顔を疎ましく思いながらも、王はやむなく決裁し、送金せざるを得なかった。

(まさかとは思いますが、彼をパーティから追いやったのではないでしょうね)

経験不足や生活力を補うために許可した、冒険者の仲間なのだ。

逆に言えば、そうした案があることを聞いていなければ、勇者を魔王國に送り込むという方針すら、王は採択しなかっただろう。

その彼が、もしいなくなったのだとすれば、この先の旅がうまくいくとはとても思えない。

あるいは――同行する騎士の生家を取りつぶさなければ、そこから援助をださせれば、功の目はあっただろうか。

(……まぁ、無理でしょうね)

伯爵のパトロンはより早くに死んでおり、その煽りをけて、伯爵家の家計はすでに火の車だったというではないか。

なにより、くだんの悪徳商人や伯爵が生きていれば、さらに多くの民たちに被害を與え、國が傾いていた可能もある。

あれらは、つぶしておいて正解だった。

「いずれにせよ、すでに終わったことです――」

返書をしたため、封蠟し、王は筆を置く。

こちらの政局は大きく荒れ、勇者の旅も滯り、これ以上の軍事行は難しい。

そこに折よく、魔王から和平の申しれがあったのは好都合だ。

(……いえ、そうではありませんね)

こちらの事を把握しているからこそ、あちらも和平に舵を切ったのだ。

その老獪な手腕には、舌を巻くしかない。

(まるで為政者のお手本ですね……私が相手をするには、強大すぎましたか)

若くして即位し、いまだ未婚ですらある王は、経験も味方も、なにもかもが不足している。

當初の予定どおり、國民の目を外に向けさせ、その隙に大きな腫瘍を摘出できた――今回は、それでよしとするほかない。

(それにしても……今後はこのような強引な手を使わず、國政を正常化しなければなりませんね)

和平が立すれば、勇者を利用した外の余波は、なからず政にも影響をおよぼすだろう。

それを乗りきれるか否か、自分の真価はそこで問われることになる。

想像するだけで頭が痛くなるが、わかっていて劇薬を使ったのは自分だ。

(彼たち――ギフティアとは、まだまだ長い付き合いになりそうですね)

未來のことは、ひとまず意識外に放り投げ、王は新たに筆を取る。

役目を果たした勇者たちへ、帰還命令を屆けるために――。

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