《【書籍化】勝手に勇者パーティの暗部を擔っていたけど不要だと追放されたので、本當に不要だったのか見極めます》17 祝宴にて、その3

えっ。

祝宴ともいえないような席で主役扱いされたのだ、全員が疲れきった顔をしているのも、無理はないだろう。

とりわけ――ティアナの顔は、四人の中でも特にひどく、蒼白だった。

あれだけのことがあったのに、強行軍で帰國したかと思えば、その翌日には宴席というスケジュールなのだ。

ティアナの心が持たないのも仕方ない――仲間たちはそう思っている。

しかし、彼心は、まったく違うことを考えていた。

「あ、の……ヒドゥン、そちらの方は?」

絞りだすような聲に、ヒドゥンは目も向けず答える。

「冒険者時代に、個人依頼をけたことがあっただろ。あれの依頼者だ。いまは俺の雇い主で――」

人で、婚約者のルナだ。どうもはじめまして、よろしくな」

これみよがしにヒドゥンに抱きつき、満面の笑みを浮かべるルナ。

その姿にティアナの心は荒れ、激しく燃え盛った。

(どういうこと……あんな別れ方をして、まだ半年も経っていないのに――人に、婚約ですって?)

Advertisement

自分はあんな目に遭ったのに、どうして――。

そんな理不盡な激が燃え上がると同時、ティアナは逆に、安堵するような覚も抱いていた。

(冒険者時代……だとしたら、もうそのころから……ヒドゥンは、浮気していたんじゃないの?)

彼と顔を合わせるとなって、ティアナがまず危懼したのが、別れたときにヒドゥンが抱いた誤解のことだ。

その後の旅で、それは誤解でなくなったのだが――すでにアシュラムとはそういった関係ではないし、そんなもない。

とはいえ、再會に際してそのことが、ティアナにうしろめたさをじさせていたのは間違いないだろう。

だが、もしもそれ以前から――彼のほうが先に心変わりしていたなら、その點において自分に落ち度はないのではないか。

(なによ、それ……私ばっかり気に病んで、ヒドゥンのことも心配していたのに……馬鹿みたいだわ……)

逆にヒドゥンのほうこそ、負い目をじるべきではないのか――。

「――まぁ立ち話もなんだ、座れよ」

勝手な妄想で、とりあえず気持ちを落ち著かせたティアナは、そんなヒドゥンの言葉に従うように、席につく。

目の前のから、いかにして人を取り戻すか――。

そんな不な考えに、頭を働かせながら。

ヒドゥンから話すことはなにもない。

だからこそ彼は、四人の席に足を運んだりしなかったのだ。

グラスを傾け、ルナの髪をで、そうして時間を置いたところで、ようやくアシュラムがポツリとこぼす。

「……僕たちは、間違っていたのか?」

「當たり前だ」

間髪をれず答える聲に、アシュラムは顔を上げる。

「人間にしろ魔族にしろ、善意しかないやつなんているか。俺が必要悪だと言った意味が、理解できたか?」

その言葉になにか返そうとするも、アシュラムにはできなかった。

これまでけたことのなかった悪意を、をもって味わってしまったから。

「――運がよかったな、旅が中止になってよぉ?」

そんなルナの言葉に、全員の視線が集まる。

「ぼったくりも詐欺師も泥棒も、なんでもかんでもれるようなお花畑どもだ……このまま続けてりゃ、どっかで全滅してたと思うぜ?」

おそらく反論したいのだろうが、四人は顔を伏せるしかない。

プライドの高いリネアなど顔を真っ赤にし、この屈辱に耐えている。

「まぁ、高い勉強代になったと思え。今後の人生で活かせるだろ」

なくとも、例の辺境の町に比べれば、王都はまともな治安だ。

最低限の警戒さえ怠らなければ、そう大きな被害はけないだろう。

「……そういえば、お前らはこれから、どうなるんだ?」

魔王や魔族と戦うための力、それを神託によって授かった勇者と聖だが、その力を活用する道はあるのだろうか。

ふと気になったヒドゥンのそんな問いに、アシュラムは力なく笑う。

「僕は、兵士になって國に仕えることにするよ」

「……道なかばだったとはいえ、騎士の敘勲くらいされるんじゃないか?」

「そういうのは……僕にはきっと、向いていない」

だろうな――と、自分で聞いておきながら、ヒドゥンは納得した。

騎士というのも貴族のひとつだ。

貴族同士もそうだが、騎士団の中でも、様々な悪意と戦うことになる。

現実を知ったとはいえ、アシュラムにこなせるものではない。

「だけど、リネアはそのまま騎士を続けるみたいだ」

「ええ――家の汚名を雪ぐことは、わたくしにしかできませんもの」

あえて泥の中を進むというのは、元貴族令嬢にしては思いきった道だ。

自分のミスによって仲間に深い傷を負わせたことが、彼面に大きな変化をもたらしたのかもしれない。

「私は、そのまま教會に――」

「えっ」

「えっ」

思わずルナとヒドゥンは反応を重ねてしまい、ミラにきょとんとされる。

「あの、なにか……?」

「いや、うん、まぁ……がんばれよ」

さすがのルナも、まったく悪びれた様子のないミラには、驚いているようだ。

ヒドゥンも気づいていなかったが、おそらくミラという人は、貞と信仰を並列に考えてはいない。

さらに言うなれば、売春といった行為ですら、慈に満ちた人助けの一環だと考えている節もある。

ある意味では、それも間違ってはいないのだが。

(こいつが聖だった理由が、なんとなくわかるな……)

アシュラムに対してのも、ただ聖として勇者を敬っていただけで、だからこそティアナと衝突することがなかったのだろうか。

そんなことを考えていると、正面に座るティアナと視線がぶつかった。

    人が読んでいる<【書籍化】勝手に勇者パーティの暗部を擔っていたけど不要だと追放されたので、本當に不要だったのか見極めます>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください