《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》野宿
「ごめんね、エルト。よく考えたらエルトは早く人間のいる場所にいきたいんだったわよね?」
虹ニンジンの採集を終えてその場を離れると、セレナがそんな話をしてきた。
「いや、あそこで手にれた虹ニンジンが何かに役立つ可能は高いからな。決して無駄じゃなかったぞ」
早い時間に村を出発したのだが、虹ニンジンの採集に手間取ったおかげで半日が経過した。
結局、その日はあまり進むことが出來ずに現在はこうして野宿の準備をしているところだ。
「味しいのです。やっぱりニンジンは生をかじるのに限るのですよ」
その橫ではマリーが幸せそうにニンジンを食べていた。
「エルト、次は鍋を出してもらえるかしら?」
セレナに言われた俺はストックの中にれてある鍋を取り出した。
「ありがとう。本當に便利な能力よねそれ」
セレナは現在、食事を作っている。
鍋を置くと霊に命じ水を出し、下から火をつける。そこに野菜を投した後は燻製を取り出しナイフで削りながられる。
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「普通はこんな道を持ち歩けないから保存が効いた燻製ぐらいしか食べられないんだけどね」
鍋を混ぜながらセレナは火の霊に命じて火加減を調整している。
「いや、セレナがいて助かった。俺もマリーも料理はできないからな」
肝心の能力があったとしても料理の腕は一朝一夕でに付くものではない。
もしこれが2人旅だったなら俺たちの食事はそれこそ燻製と水だけになっていただろう。
「ふふふ、ありがとう。そう言ってもらえると付いてきて良かったのだと思えるわ」
セレナはふわりと笑うと俺を見る。火の揺らぎが影となり見つめてくる瞳が印象に殘った。
「そういえば疑問なんだけどさ。虹ニンジンって本來はかなり広い範囲を探索しないと1本も見つからない超高級食材なんだよな? それなのになんであんなに一杯生えてたんだ?」
市場に全く出回らないわけではないが、専門のハンターがチームを組んで眼に探して何とか手にれられるレア度なのだ。こんなに大量に採れる場所があるのなら値崩れしてしまわないのだろうか?
「それはですね、虹ニンジンは一定以上の魔力が溜まる場所に低確率でしか生えないからなのですよ」
その質問にマリーが答える。
「なるほど、そうすると迷いの森は魔力が溜まりやすい?」
「それもあるのです。モンスターは悪い魔力をに取り込んで兇悪化した生き。迷いの森は魔力が濃いので現れるモンスターは強力なのです」
「つまり、人が立ちらないこの場所だからあんなに群生していたってことなのか?」
「なのです。虹ニンジンが生えたその橫が魔力の溜まり場であるなら低確率で株分けがされてそこにも虹ニンジンが生える仕組みになっているのですよ」
つまり、意図的に魔力の溜まり場を作ってそこに植えておけば増える可能があるということだろうか?
「でもさ、もしそうだとしてもおかしい點があるのよ……」
「なんなのですか?」
セレナが料理の手を止めるとマリーに質問を投げかけた。
「北の谷は私たちエルフの間では有名だったし、そこからあの場所はそんなに離れていなかったわ。話を聞く限り増えるのに結構な時間が掛かるんでしょう? 私はまだ17歳だからそんなに生きてないけど、村長や兄さんあたりは長く生きてるんだからあそこを知っていなかったのは不自然だわ」
確かにその通りだ。迷いの森は確かに方向覚が狂いやすく普通に歩いていたら自分の居場所を見失ってしまう。だが、エルフの村で育った人間が自分たちの生活圏からし離れた場所のことをしらないものなのだろうか?
「その答えなら簡単なのです。立ちろうとする者を遠ざける結界が張ってあったのです」
「それなら俺たちはなんでっていけたんだ?」
それが本當なら辿り著けないはずなのだが……。
「そんなの決まっているのです、マリーや主人さまには効かなかったからなのですよ。認識を阻害する系統の結界は雑魚相手には効果があるけど、霊王のマリーや主人さまの認識を歪めることはできないのです」
「ざ、雑魚……?」
マリーの言葉に悪気はないのだろうがセレナは頬をひくつかせる。
「さらにあの結界は2重になっていてってきた侵者の魔力を吸い取って地面に還元するようになっていたのです」
「そんな危険な場所があるのは不味くないか?」
フィルやヨミさんがってしまう可能がある。俺はそう考えたのだが……。
「安心するのです、マリーが結界ごと壊しておいたのです」
「なら安心ね。良かった……」
セレナはをなでおろすと息を吐くのだった。
「それで、結局のところ結界を張るってことは誰かがあそこを管理していたってことになるのかしら?」
野菜と燻製がったスープを飲みながらセレナは先ほどの話を再度する。
「だと思うのですよ?」
「一誰が何の目的でなのかしら?」
ってきた者の魔力を吸うというトラップからして悪意がじられる。
「気にするだけ無駄なのです、守りたかったのならマリーに破れないような結界を用意するべきだったのです」
霊王相手に無茶を言うなと思った。マリーは味しそうにセレナが作ったスープを飲むとそう答えるのだった。
「さて、明日に備えて寢るとするか」
食後の後片付けが終わるとあとは寢るだけ。布を使って天幕を張ると俺たちはそこに橫になった。
まず俺が橫になるとマリーがその上に乗ってくる。
「セレナも橫になった方が良いぞ。狹いから俺の隣になるけど我慢してくれ」
布の大きさの関係で2人分の広さしか確保できていない。なのでマリーは俺の上に橫たわっている。
「ううん、ついていくと言ったのは私だから構わないわ。それに……………………エルトの隣とか嬉しいし」
「ん? 何?」
最後の方は小聲だったので聞き取れなかった。
「な、何でもないわっ!」
セレナは耳を赤くすると俺の隣に寢転がる。そしてそのままこちらを向くと……。
「なんかこういうのって楽しいね」
俺と目が合うと笑顔を見せた。
「それじゃあ主人さま、マリーが結界を張るのです。何かが近寄ってきたらマリーには分かるので安心してほしいのですよ」
マリーによる風の結界は便利で、中にいると快適な溫度が保たれるので布なしでも寒くない。更に敵が近づいてきたら知できるという高能だ。
「わかった、ありがとうな」
俺はマリーの頭をでると……。
「えへへへ、このぐらい楽勝なのですよ」
マリーの嬉しそうな聲を聞きながら眠りに落ちていくのだった。
★
「ば、馬鹿な……結界が破られて……どうなっている!?」
數日後、例の虹ニンジンの群生地を訪れた者がいた。
「まさか人間たちがこんな森の奧深くにってこられるはずがない……」
その者は奧へと歩いていくと…………。
「なっ! 虹ニンジンがすべて無くなっている!?」
あれだけあった虹ニンジンが見る影もなくなっており、男は目を見開いた。
「虹ニンジンで軍団を強化し國を亡ぼす計畫がれたのか? だが、しかし……」
近隣の國から迷いの森に人間がったという報告はきていない。
「このままでは上に……デーモンロードに粛清されてしまう……」
今回の作戦は魔人王が長年をかけて準備した計畫だった。最近邪神の波が途絶えた。何があったかは分からないが邪神が沈黙している間に力をつけ、立場を逆転させるのが魔人王の狙いだ。
「この魔力の殘滓は……こいつが虹ニンジンを持ち去った?」
いずれにせよ大量のニンジンを運んでいるのだ、すぐに追いついて見せる。
「このアークデーモンのテリトリーを荒らした報いは必ずけてもらうぞ」
赤い瞳をらせるとアークデーモンは南に向かって飛び立つのだった……。
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