《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》冒険者登録

「ねえ、どうするの?」

乗合馬車組合を出るとセレナが早速俺に聞いてきた。

外國に出るための手段についてだろう。

「考えられる方法としてまずはこの國で冒険者ギルドか商人ギルドに加盟して実績を上げること」

ひとまずこれが一番現実的な手段だろう。

時間はかかるだろうが、もしかするとアリシアに手紙が屆いてなんらかの接をしてきてくれる可能もある。

それまでの間に働いてお金を稼いで待つ。そうすればいずれ故郷に帰ることができるので悪くはない案だろう。

「國境といってもすべてを封鎖できているとは思わないのよね。森とかにって抜ければ私たちなら何とかなるわよ?」

そんな俺の考えに対し、セレナは抜け道をささやく。

「いや、やめておくべきだな」

「どうして?」

「俺たちが越えなければいけない國は全部で3つある。そのすべてに都合よく森があるわけでもないだろう。途中で計畫を斷念しなければならない可能が高い以上リスクしかないからな」

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「そっか……ごめんね余計なことを言って」

そういうとセレナの耳がし垂れる。どうやら落ち込んでいるようだ。

俺はセレナの頭をでる。らかな金髪とセレナの暖かさが心地よい。

「俺のためを思って言ってくれたんだ。余計なことじゃない。これからも何か思いついたらどんどん意見してくれ」

1人の思考では限界がある。こうして傍で提案をしてくれる人間は貴重だし……。

「ん?」

何より、セレナと一緒にいるということに俺はいつの間にか安らぎをじていた。

「冒険者登録を2人分お願いします」

結局、ひとまず冒険者として活することを決めた俺たちはこの街の冒険者ギルドのドアを開けた。

「はい、お2人様ですね、戦士と……えっ?」

俺たちの格好をみた付嬢はまず俺を見て腰に下げている剣から戦士と判斷する。そしてその視線を橫に立っているセレナに向けたところで固まった。

「どうかしましたか?」

俺が聞くと付嬢は我を取り戻した。そして……。

「い、いえっ! エルフの方が登録するのは珍しいので……」

「そんなに珍しいんですか?」

「そうですね、この國ではエルフの冒険者は全部で5人いますが、いずれも優秀なハンターであったり霊使いです。そちらの……」

「セレナよ」

名前を聞いた付嬢は言葉を続けた。

「セレナ様はもしかして霊を使役できるか神がかった弓の腕前を持っていたりされるのですか?」

「神がかった弓の腕前はわからないけど、霊とは契約しているわ」

その言葉に周囲で聞き耳を立てていた冒険者たちが湧きたった。

「すげえな、俺たちの街もとうとうエルフの冒険者を獲得できるのか」

霊魔法があれば楽にこなせる依頼もあるからな」

「それにしたってあの貌だぞ。是非ともお近づきになりたい」

そんな聲が聞こえてくる。

「それで、俺たち2人の登録は問題ないのですか?」

そんな周囲の興とは別に、俺は淡々と登録を進める。

「あっ、はい。むしろ大歓迎です」

歓迎されているのはセレナのようだ。付嬢と冒険者の好意の視線が明らかにセレナに向かっている。

「それでは、こちらの用紙に記をお願いします」

俺とセレナは紙をけ取ると記をするのだった。

「では容の確認です。登録者はエルトさんとセレナさんですね。エルトさんは剣士でセレナさんは霊使い。これで間違いないですか?」

「ああ」

「ええ」

確認事項を1つずつ潰して行く。

「それでは初期登録費用に1人5000ビルお預かりしますがよろしいでしょうか?」

付嬢の言葉に俺は10000ビルを渡した。

「確かにけ取りました。それでは冒険者カードを発行しますので、そちらのクリスタルに手をかざしていただけますか」

俺たちは言われたとおりに手をかざすと、カードが出てきた。

「そちらが冒険者カードになります。今後討伐したモンスターはすべてそちらに記録される仕組みになっております。また、そちらのカードに依頼料が振り込まれます。冒険者が提攜しているお店では財布代わりに使用することもできますので紛失にはお気を付けください」

流れるような説明だ。毎日多くの冒険者に話をしているので慣れているのだろう。

「エルトさんとセレナさんは冒険者に登録したばかりなのでギルドランクはFからのスタートになります。冒険者ランクは依頼をけるときの目安になります。Fランクの依頼を10回達するとEランクに、Eランクを10回達するとDランクにと上がっていきます」

補足として連続して同じランクの依頼を3度ミスすると降格するらしい。

これはペナルティがないとわざと仕事をけたまま放置する輩が現れたりするからだ。

「次にパーティーについてです。低ランクのうちは冒険者は単獨で行することが多いです。簡単な採集依頼であったり低ランクモンスターの討伐だったり。ですが、ランクが上がるにつれて討伐対象や採集するアイテムのレア度があがります。そうなったときに1人で依頼をけると失敗するリスクがありますので、大抵の冒険者はどこかのタイミングでパーティーを組むようになります」

「それって、誰とでも組めるのかしら?」

セレナの質問に付嬢は首を橫に振る。

「組めるのは自分と2つ離れたランクまでですね。パーティー登録の際にそれぞれパーティーランクが決まります。こちらも同じくFランクが最低でパーティーで5回依頼をこなすごとにランクが上がりますが2回失敗すると降格になります」

「なるほど、組む以上ミスは連帯責任になるわけですね」

俺の言葉に付嬢は頷く。

「ここまでで何か質問はございますか?」

理解しているかの確認に俺はせっかくなので質問をする。

「高ランクになれば外國へ出るための分証を発行してもらえると聞いているんですが、どのぐらいのランクになればいいんですかね?」

「個人であればCランク。パーティーでならBランクからになりますね」

FランクとEランクは駆け出し冒険者の扱いになるが、Dランクで一人前。それより上はベテランに數えられるようだ。

そう考えると短時間でランクを上げるのは中々に難しそうだな……。

俺がそんなことを考えていると、

「短時間でランクを上げたいんだけど方法はないの?」

セレナが質問をした。

「基本的には既定の回數依頼をこなしてもらうのが一番早いですね」

當然のけ答えをした付嬢だが後に言葉を付け足す。

「ですが、例外があります」

「どんな例外?」

「災害級などの高ランクモンスターを狩ることですね。これらのモンスターは國や街に大きな被害をもたらします。これを狩ることができれば特例として冒険者ランクを上げることがあります」

その際にはギルドマスターの承認が必要ですけど、と付嬢は答えた。そして……。

「ですが、災害級なんてそれこそドラゴンとかそんなレベルですからね、おいそれと街や平原に現れたりしませんのでほとんど意味はないかと」

確かに迷いの森を出てからというもの強力なモンスターはいなかった。俺たちが沈黙していると付嬢は頷くと。

「以上が説明になります。それではエルトさん、セレナさん。お2人の活躍を冒険者ギルドは期待しています」

そういうと笑顔を向けるのだった。

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