《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》エリバン王國兵士クズミゴ

迷いの森の途中に広場を見つけると、エルトたちのグループはそこで野宿をすることにする。

既に日も落ちており、いくつかの場所では焚火を起こしていた。

その焚火の周辺では、本日活躍した冒険者やエルトがくつろいでいた。

「悪いな、料理を任せちまって」

ラッセルは片手をあげると、拝むようにセレナに言った。

「構わないですよ。今日は結局1度も戦わなかったので」

迷いの森に進行すると、淺い場所では現れないようなモンスターと遭遇したのだが、エルトや冒険者が倒してしまった。

で予備戦力の出番はなく、ラッセルなどの中心パーティーの他、南東・南西パーティーも力に余裕がある。

「それに、私料理はすきなんで」

正しくは、エルトに食べて貰えるのが嬉しくて好きになったのだが。

セレナは水の霊に命じると綺麗な水を鍋へと注ぐ。

「さて、捌いておいたフォレストウルフのを煮込みますね」

セレナが作っているのは本日倒したフォレストウルフのを使ったシチューだ。

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そこらに自生している食べられる植を鍋に放り込み、をくわえる。

ハーブなどは香辛料の役割を果たし、の臭みを消しつつも味わいを引き立てた。

「にしても、他のグループの連中には見せられねえな。野宿でこんな飯にありつけるとは……」

ラッセルはそう言いつつ良い匂いが漂ってくる鍋を見ている。もうしで出來上がるとなったところで…………。

「早くしないか! 一何時間待たせるつもりだっ!」

振り向くと、王國の兵士たちが立っていた。

その立ち振る舞いは完全に冒険者を見下すものだった。

「なぜ王國兵士の俺がこんな危険な森にこなければいけないのだ。しかも野宿だと?」

どうやら今回の調査に不満があるらしい。元々は城勤めの兵士が街の外に出るのは珍しい。だが、今回は他國からの要請もあったので冒険者に任せきりというわけにはいかなかった。

結果として、兵士の中でも城からいなくなっても困らない人間が選ばれて調査に向かう事になったのだ。

「もう出來ているのだろう。さっさと食わせないか」

兵士の1人が近寄ってきてシチューをよそおうとする。

「ちょっと、まずは今日一日戦って疲れている人たちからに決まってるでしょ」

そんな王國の兵士の態度にセレナはむっとすると答える。

「なんだ貴様。私に逆らうのか! エルフの分際で!」

ところがセレナのその態度が気に障ったのか兵士は怒りだした。

「まぁまぁ兵士さん。こんなところまで同行大変ですよね」

「そうですよ。フォレストウルフのは滅多に食べられないので一杯食べてくださいね」

ラッセルと同じパーティーの冒険者が慌てて間にる。

「ちょっと! あんたねぇ……」

セレナが険しい顔をして言い返そうとすると……。

「落ち著け」

エルトが肩を叩いてそれを止めた。

「エルト。だって……」

なぜ止めるのか?

悲しそうな表を浮かべるセレナに、

「ラッセルさんの兵士昇格がかかってるんだ」

年齢からして今回のチャンスを逃した場合、ラッセルが王國に登用される道は殘されていないだろう。

だからこそラッセルの仲間も下手に出ているのだ。

セレナはエルトと目を合わせる。そしてその表をみて落ち著くと……。

「わかったわ。兵士さんたちから配るわよ」

そう言うと配膳をするのだった。

「全く、國のお偉いさんは命令するだけでいいから楽だよなぁー」

シチューを食い大聲で愚癡を垂れ流す兵士。

「クズミゴ殿、ここは迷いの森。あまり大聲で騒がれてはモンスターが寄ってきてしまいます」

夜はモンスターたちの活が活発になる。これだけの人數がいれば警戒して襲ってこないだろうが、迷いの森の異変を考えると油斷できない。ラッセルは注意をするのだが……。

「なんだ貴様は、私は査定権を持っているのだぞ!」

その言葉に周囲の視線がクズミゴへと向かう。

「まったく。料理も期待したほどではないし、貴様らの態度ときたら。我が王國は貴様らにキャンプをさせるために雇ったわけではないのだぞ。文句を言う暇があったら周囲を見回ってモンスターがいたら倒してくるぐらいしたらどうだ!」

「……いやなやつ」

セレナはぽそりと呟く。

この場の全員がラッセルの昇格をんでいて歯向かうことができない。

クズミゴはそれを知っているのか、自分の立場を振りかざす。

「いいか? ベースに戻った時に余計なことをいうんじゃないぞ? もっとも、貴様らのような冒険者の言うことなど誰も信じないだろうがな」

が嫌われているのを自覚しているのかそんな言葉を口にした。

結局クズミゴは周りに散々不満をぶつけ続けていたのだが、冒険者が持っていた酒を呑むと酔いつぶれて寢てしまった。

こうして調査一日目は波を予させつつ過ぎていくのだった……。

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