《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》調査報告
調査隊が森にってから1週間が経過した。
幸いというべきかベースを襲いに來るモンスターは殆ど存在せず、詰めている騎士や兵士は淡々と仕事をこなしながら報告を待っていた。
そんな中、見張りの兵士が森の方を見ていると…………。
「誰か戻ってきたぞ」
まだ遠目に映る程度だが1人の人間がこちらへと向かってきている。
「あの鎧は……我が國の兵士か」
自分達もに著けているものなので間違いようがない。
「誰か、馬を出せ! 戻ってきた兵士を迎えに行くんだ!」
指示が飛び、ベースは1週間ぶりの張に包まれるのだった。
「それで、一何があったのだ?」
ベースを取りまとめている騎士は目の前のクズミゴへと質問をした。
鎧は泥やら粘やらで汚れており、髪は粘の何かで固められている。
必死で逃げてきたのだろう、を清潔に保つ余裕が無かったのかクズミゴからは異臭が発せられていた。
誰もが鼻をつまむなか、クズミゴは涙を流すと訴えた。
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「迷いの森の奧地にアークデーモンがおりました!」
「なっ!? アークデーモンだとっ!!!」
デーモンとはこの世界で邪神に次ぐ天災として認識されている。
過去に様々な國がデーモンの暗躍により滅んでいる。
「それは……真の話なのか?」
にわかには信じがたく、騎士はクズミゴに確認をとった。
「間違いありません。此度の迷いの森の異変はアークデーモンの仕業だと本人が言っておりました」
クズミゴの言葉に騎士は事態が深刻であることを把握した。
「流石にそれは見過ごせん。誰か、至急王國に早馬を飛ばしてくれ。騎士団の派遣を要請するんだ」
アークデーモンといえばSランク認定されているモンスターだ。発見したのなら國が総力を挙げてでも始末しなければならない。
今こそ世界の危機に立ち向かうべきと騎士は判斷をする。そして…………。
「そういえばあの方達は?」
騎士は逡巡するとイルクーツ王國から訪れた王の存在を思い出した。
「今は席を外しております」
を清めるために近くの泉に行っているのだ。
「では戻り次第護衛の半分をつけて王國へと引き上げてもらう」
Sランク相當のデーモンが存在するのだ。他國の姫君を危険な場所に置いておくわけにはいかない。
「クズミゴ兵士長」
「はっ!」
騎士が名指しで呼ぶとクズミゴはかしこまった態度をとった。
「此度の報、誠に大義であった。貴君の報が無ければ王國はデーモンによって滅ぼされていたやもしれぬ。私が國に戻ったらこの功績を王國に報告するつもりだ」
「あ、ありがたき幸せです」
クズミゴは俯くと歓喜に震えた。アークデーモンに遭遇した瞬間から死を覚悟した。
その場を逃げ出すことに功したが、危険なモンスターがいつ襲ってくるかもわからない迷いの森。
目印を辿り、最低限の休養しかとらずに足をかしたが、ずっと生きた心地がしなかった。
迷いの森を抜けた時には「これでようやく助かった」と涙を流したものだ。
その甲斐もあってか自分は今評価されている。
アークデーモンの報は値千金に匹敵する。かつて他國の敵將の首を取って出世した兵士の中には騎士長まで上り詰めた人間もいるのだ。
(ようやく、俺にも運が向いてきた)
誰からも見えぬようにクズミゴは下卑た笑みを浮かべていると…………。
「ときにクズミゴ兵士長。他の調査隊の人間はどうなったのだ?」
ビクリとが震える。クズミゴは冒険者や同僚の兵士を囮にして逃げてきたからだ。
だが、クズミゴが揺したのはその一瞬だった。
「じ、実は他の者たちは私を逃がすためにアークデーモンと戦い……」
俯き悔しそうな聲を出してみせる。
「ですが、彼らの助力無くしては私はこうして報を屆けることができなかったのです」
目に涙を浮かべ訴えるクズミゴに騎士は悔いた顔をすると……。
「そうか、辛いことを聞いてしまったな」
騎士は優しい目でクズミゴを見た。そして……。
「あとのことは我々に任せてゆっくり休め」
その言葉を聞いた瞬間クズミゴは勝利を確信する。
(やったぞ、あいつらはアークデーモン相手に生きて帰れるはずがない。俺が持ち帰った報で國が救われる。つまり、俺は救國の英雄になるんだ)
これまで危険な任務や大変な仕事を他人に押し付けてきたクズミゴだが、自分がこうして兵士になったのはこの時のためだったのだと確信した。
「勿なきお言葉。ですが、私も流石に疲れておりますゆえ、お言葉に甘えさせていただきたく思います」
後のことは王國の騎士が対処するだろう。クズミゴはようやく安心して眠ることができると気を抜くのだが…………。
「たっ、大変ですっ! 騎士様!」
「どうしたっ!」
兵士の1人が相を変えて現れた。
クズミゴはそんなもの知ったことかとばかりに休もうとするのだが。
「調査隊が戻ってきました! 見る限り、全員無事なようです!」
「ふぇっ?」
どうやらクズミゴの安息はまだ遠いようだった……。
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