《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》クズミゴの処分

俺達は迷いの森を抜けベースへと戻ってきた。

奧へ向かった時と同じように集団で行をし、を休める。

だが、アークデーモンを倒した俺とセレナがいたお蔭か、皆は気楽な様子で森をあるいていた。

道中、俺とセレナは皆から詰め寄られて質問をされたのだが、ラッセルさんが「恩人にたいしてしつこく聞くな」と止めてくれたので助かった。

「それで、冒険者のエルトといったか? 君の口から報告を聞きたいのだが……」

だが、皆なぜか俺に従い始めたせいでリーダーにさせられてしまい、現在はこうして騎士の元へと代表で立たされている。

「はぁ、まあ」

テントの中には騎士數名をはじめとしてクズミゴがいた。どうやら迷いの森から無事に逃げ帰ってきたようだ。

「大の報告はそちらのクズミゴさんから聞かれているのではないですか?」

俺が名指しをするとクズミゴがビクリと肩を震わせる。

「うむ、そうなのだがな……」

どうにも歯切れが悪い態度だ。

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「まあ、話せと言われるのでしたら報告しますけど」

俺はそういうとどこまで話すべきか考えるのだが……。

「いやあ、君たち無事でよかった! 私も心配したのだよ!」

クズミゴは親しげな笑みを浮かべると俺に近寄ってくる。

すると鼻が曲がりそうなぐらいの臭いが漂ってきた。

「『ここは俺たちに任せて先に行け!』あの言葉を信じて俺は決死の覚悟で迷いの森を駆け抜けた。本當に命懸けだったが、お蔭でこうしてアークデーモン出現を上に報告することができたのだ」

臭いに耐え切れず眉をひそめているとクズミゴは俺の手を取り握手をしてきた。

騎士と俺の間にり視線を遮る。

で俺の視界にはクズミゴが映るのみ。

クズミゴは笑顔を浮かべると俺だけに聞こえるように呟く。

「俺に話を合わせろ。俺に任せればお前たちが気にかけていたラッセルとかいうやつを兵士にしてやる」

その必死な様子に俺は首を縦に振る。するとクズミゴは気持ち悪い笑みを浮かべると離れたので……。

「それで、報告はどうなのだ?」

騎士に再度問いかけられた。クズミゴが頷く中俺は、

「俺たちは森の奧でアークデーモンに遭遇し、これを討伐しました。以上です」

「「「「なっ……!?」」」」

俺の報告にその場の全員が驚くのだった。

「えっと……その討伐したというのは撃退して逃げ延びたという意味だろうか?」

騎士が額に汗を流しながらも俺に聞いてくる。

「いえ、言葉通りの意味です。俺達冒険者が協力して討伐しました」

「噓をつくんじゃない! お前たち冒険者ごときがあのアークデーモンに勝てる訳がなかろう!!」

クズミゴが俺の報告に噛みついてきた。

「どうして噓だと思うんですか?」

「俺は目の前であいつを見たんだ。あれは人間がどうにかできる相手じゃない」

「確かににわかには信じがたいな。もし本當だというのなら何か証拠はないのかね?」

騎士の言葉はもっともだ。確かに証拠も無しに倒したといたところで信じてはもらえないだろう。

しどいてもらえます?」

「それは構わないがどうするのだ?」

俺の言葉に戸いつつも場所をあける騎士。

「これが証拠です」

俺はストックしてあったアークデーモンの翼を取り出した。

「これは……本か?」

周囲の騎士たちの目が開く。

クズミゴなどアゴが外れそうになっていた。

「一どうやって……とその前に、良くぞやってくれた。君たちこそ救國の英雄だ!」

どうやらこの騎士の人はクズミゴと違ってまともらしい。

事態を把握して討伐した人間に敬意を払えるようだ。

「1つお願いがあるのですが」

「聞こう。言ってみたまえ」

俺は前置きをすると騎士にお願いをする。

「今回の討伐で率先して皆を守ろうとしたリーダーがいます。俺たちが誰1人失うことなくアークデーモンを討伐できたのはその人のお蔭です。なので、その人を兵士に登用していただけないでしょうか?」

「自分が死ぬかもしれない強敵を前にその膽力。そのような傑がこの國にも埋もれていたのだな。私の名で約束しよう。アークデーモン討伐の立役者の名は何という?」

「ラッセルです。冒険者ギルドでは良く初心者の面倒を見てくれる人のある人です」

「わかった。では、その人を間違いなく登用するようにしよう」

「ありがとうございます」

その言葉に俺は口の端を緩める。そして…………。

「実はもう1つ報告があります」

「ん。何かね?」

俺はクズミゴを見る。するとクズミゴは顔を青くした。どうやら気付いたようだ。

先程頷いた俺だが、ラッセルさんの登用については騎士が確約してくれている。

「騎士殿! 皆疲れておりますゆえ。殘りの話は休息をとってからの方が……」

「いえ、問題ないです」

「問題ないと言っているが?」

俺と騎士の視線がクズミゴに向かう。クズミゴは顔を真っ赤にして俺を睨みつけてくるのだが。

「それで、報告というのは?」

「や、やめっ――」

クズミゴが摑みかかってくるのを躱すと俺は言う。

「そこのクズミゴさんですが、アークデーモンを俺たちに押し付けて1人で逃げ出したんです」

「なんだと!? どういうことだクズミゴ兵士長!」

恐らく俺たちが生きて帰ってこないと思ったのだろう。クズミゴの態度からそう察していた俺はここで真実を暴した。

「仲間を置いて逃げたのかクズめ!」

「兵士の片隅にも置けないゴミが!」

他の騎士からも罵倒が飛ぶ。クズミゴは……。

「お、俺は悪くないっ! 王國の兵士として犠牲を出してでも報を持ち帰っただけだ!」

開き直ったクズミゴ。確かに普通なら勝てない相手だ。誰かが狀況を報告に行く義務があったのだろう……。

「ちなみにこの男。さっき俺に『黙っていれば兵士に登用してやる』と言ってきました」

その言葉で騎士たちの視線がクズゴミを見るような目にかわる。

本當に仕方なくその場を離れたのならそのような言葉は口にしない。それを全員理解したからだ。

「ち、違うんですこれは……その……」

自ら堀った墓にたいする言い訳を述べようとするのだが……。

「クズミゴよ。貴様の処分に関しては城に戻ってからだ。組織として利己に走った敵前逃亡は厳罰になる。判斷を楽しみに待つんだな」

「あばばばっば……」

クズミゴが白目をむく。の間にシミが広がった。どうやら失したようだ。

「そいつを連れていけ」

そう言うと騎士たちに引きずられてクズミゴは退場するのだった。

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