《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》更なる誤解

「ここが城の客室か……思っているよりも地味で狹いんだな」

調査を終えた俺たちは城下町に到著すると報酬をけ取った。

參加した大半の冒険者たちはそこで仕事完了となり、それぞれの街へと戻って行った。

だが、俺とセレナ。それにラッセルさんは未だに解放されることなくこうして城まで連れてこられている。

「ここは兵士たちが泊る詰め所らしいわよ」

セレナの言葉に納得する。

置かれているのは古びたベッドが1つに機とクローゼットがあるだけ。城に勤めている兵士が仮眠するための場所と考えれば十分だろう。

「それにしても、ここであと數日過ごすのか。早く街に帰りたいよな」

「仕方ないわよ。流石にアークデーモンを討伐した人間だもんね、々聞きたいようなこといってたし」

現在は調査結果を取りまとめているらしく、俺たちにできることはない。

俺とセレナとラッセルさん。それにクズミゴに関しては真実を判斷する魔導を使って々質問をしたいと騎士からお願いをされていた。

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「せめて城下町を観できたら良かったんだけどな……」

現在の待機狀態にも依頼料が発生しているので、こうして待機しているのも仕事のなのだ。

「まあいいじゃない。クズミゴに比べたらまだ良い待遇なんだからさ」

確かにその通りかもしれない。待機している間は食事も出るし、こうしてベッドでゆっくり休むことができるのだ。

クズミゴは虛偽の報告と敵前逃亡の疑いの為、現在は牢へとれられているのだ。

完全に本人の自業自得なので同すらわいてこない。

「城下町の観はこの一件が片付いたらゆっくりしましょう」

セレナはベッドからを起こすと笑顔でそう言ってくる。そして……。

「どうした?」

ぼーっと惚けるように俺に視線を向けて顔を赤くすると……。

「その、調査の時に言ったじゃない?」

「うん、何だっけ?」

しどろもどろになりながらもセレナは目をちらりと俺に向けると。

「調査が終わったら……イチャイチャしたい……って」

その仕草に心臓が揺れく。流石に城の中では不味くないだろうか?

そんな俺の考えとは裏腹に、セレナは俺に近づくと抱き著いてきた。

「えへへへへ、このぐらいならいいわよね?」

セレナは見ているこっちが恥ずかしくなるぐらい顔を真っ赤にすると、幸せそうな表を浮かべもたれかかってくるのだった。

「アリス様。話聞いてますか?」

「……えっ? なに?」

城に戻ってきてからというものアリス様の様子がおかしい。

先日の泉での水浴びだが、騎士を引き連れて戻ったところ「特に何もなかった」と答えられたのだ。

「調査結果の報告待ちについてですよ」

なんでも今回の調査で重大な問題があったらしく、現在エリバン王國では會議が開かれているらしい。

私たちは來賓部屋で待機させられ、後日報告をまとめられたものを知らせてもらうことになっている。

「ああ、そのことか」

心ここにあらずといったアリス様の様子に私はたまりかねると……。

「あの、アリス様。やはり泉で何かあったんじゃ?」

意を決して聞いてみた。すると……。

「実は、この國の冒険者と思しき男と戦ったのよ」

「そ、それは大事なのではないですか?」

仮にもこの國の冒険者が王の水浴びを覗いたうえで戦いを挑んだ。不敬罪に問われるべき事件だ。

「いえ、お互いの勘違いがあったからそのことは別に気にしてないのよ。だからあなたたちが戻ってきたときも咄嗟に噓をついたわけだし」

それは賢明な判斷だろう。もしその場をうちの國の騎士が目撃していたら國家間問題になってしまっていた。

「それで様子がおかしかったのですか?」

私はようやく納得した。

「それにしてもアリス様と斬り合って無事だなんて凄い男もいるんですね」

アリス様の実力については道中で見ているので知っている。

休憩の時に騎士たちと訓練をしていたけど、騎士よりも強かった。

護衛する対象が一番強いという訳の分からなさに苦笑いが浮かんだものだ。

そんなアリス様と斬り結んだということは相手は相當の手練れなのだろう……。

「アリス様?」

ところが、アリス様は不機嫌な表を浮かべていた。

「それがさ、私じゃ相手にならなかったのよ」

不満そうにクッションを抱きしめて顔を出すアリス様。他の人たちがいるときには見せない子供じみた仕草だ。

「えっ? アリス様が負けたのですか?」

信じられずについつい率直に聞いてしまうとアリス様は私を睨みつけてくる。

「そうよっ! 本當に圧倒的で勝負にならなかったんだから! わかるアリシア? 剣を重ねるごとに防が追い付かなくなって、それでも相手は全力じゃ無かったのよ!」

気味な様子。それはどちらかというと憎い相手というよりは憧れにも似た様子を思わせた。

どうやらアリス様の様子がおかしいのは、自分を倒した相手のことを考えていたからのようだ。

「ねえアリシア。誰か心當たりないかなぁ?」

アリス様がこの様子だったのでエリバン王國とのやり取りは私が話を聞いていた。

私はそんな中で耳にした名前を思い出す。

「今回の調査で全のリーダーを引きけた冒険者が兵士に登用されるらしいですね。確か名前は……ラッセルとか」

「それだわっ! あれだけ強かったんだもの、エリバン王國も彼の実力をみて國に取り込もうと考えたんでしょうね」

そうかもしれない。冒険者から王國兵士に登用されるのは結構な出世コースなはず。滅多に起こりえないことを起こしたのだから、その人こそアリス様を倒した冒険者で間違いないだろう。

「確か、數日後にそのラッセルを含む數名が真実のオーブを使って質疑をけるようですね」

私は自分が聞いた報をアリス様へと渡すと……。

「私、その質疑に參加させてもらえないかちょっと渉してくるわっ!」

アリス様は勢いよく部屋を出て行った。

「はぁ……エルト。いつになったら會えるのかなぁ」

気になる相手ができたようなアリス様を見送ると、私は生き別れの馴染みの姿を想いうかべるのだった。

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