《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》審議による真偽
「それでは、ただいまより迷いの森の調査について審議を行います」
教會から派遣されてきた神が中央に立つのを見屆けると宰相が宣誓する。
その後ろにエリバン王國の王とイルクーツ王國のアリス王の席が用意されており、それぞれの隣には宰相とアリシアが立っている。
そこから側面には爵位を持つ貴族と騎士が並んでおり、今回の審議が國の大事であることを印象付けた。
「本日、真実のオーブを作するのは神殿から派遣されたヒューゴ司教殿です」
宰相の説明によりお辭儀をする。人の良さそうな初老の神で、中立の立場からどのような問答に対しても真実のみを告げてくれる。
「では、最初の人間を場させよ」
そう言うと兵士が2人きだし大きな扉を開いた。
すると、あらかじめ外に待機していたのか鎧をに著けた1人の兵士がってきた。
エリバン王國の新品の鎧が輝き、人相の悪い男が中央に立った。
「名前と分をあかしてください」
ヒューゴ司教の言葉に人相の悪い男は頷くと。
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「元Bランク冒険者で今はエリバン王國兵士のラッセルです」
「ええーーーっ!?」
「あ、アリス様っ!?」
ラッセルが名乗るとアリスが立ち上がり注目を集める。アリシアは慌ててそれを嗜めた。
「アリス王。なにか?」
宰相が怪訝な目で見ると、
「い、いえ……。何でもありませんわ」
取り繕うような笑顔を見せた。そんなアリスを橫目に見つつ宰相はラッセルのことを皆に紹介し始めた。
「えー、このラッセルですが、先日行われた迷いの森の調査において素晴らしき功績を挙げたため、この度兵士に登用しました」
その紹介に貴族と騎士が拍手で稱える。功績を持つ者には敬意を払う。そうでなければ自分が功績を挙げた時に周囲から認めてもらえなくなるからだ。
「ですが、この兵士登用は現時點で仮の扱いとなっています。それというのも、調査隊の報告で幾つか信じがたい話があったからです」
既に城中に広まっている噂だ。皆ラッセルに注目すると……。
「それでは兵士ラッセル。そなたの口から迷いの森の調査報告をもう一度、簡潔に話してくれないか?」
宰相が促すと同時に、ヒューゴ司教がオーブに手をかざす。周囲の人間は完全に口を噤む。なぜなら真実のオーブが作している間は全ての発言が真偽の対象になるからだ。
「はい。俺たち冒険者は國からの依頼をけ迷いの森の調査のため森の深くまでりました。道中、森の淺い部分では見かけない強さのモンスターと遭遇。それぞれのグループで討伐しつつ進みました。そして待機予定の場所でキャンプをしていたところ、ある存在が現れました」
「そのある存在とは何かね?」
「アークデーモンです」
宰相の質問にラッセルは答えた。
周囲でざわめきが起こる。貴族や騎士は真実のオーブへと視線をかす。
「噓は言っておりませんな」
ヒューゴ司教の言葉で張が高まる。
今の問答で、なくとも迷いの森の奧にアークデーモンがいたことが皆にわかった。
「それで、アークデーモンと言葉をわしたと報告にはあるが、アークデーモンはなんと言ったのだ?」
「はい。奴は言いました『今回の迷いの森の異変は全て自分が仕組んだものだ』と」
その答えにもオーブは真実と判定を下した。
「つまり、アークデーモンの狙いはこの國だったと?」
それは完全に寢耳に水の話だ。自分たちが平和だと思っていた日常の裏でデーモンが國家転覆の謀略を練っていたのだ。平靜でいられる者はない。
「し、しかしっ! そのアークデーモンはどうなったのだ!?」
その場のプレッシャーに耐えかねたのか、本來質問をする筈であった宰相を差し置いて貴族の1人が聲を荒げた。
ラッセルは戸いながらも答えるべきか悩み宰相を見る。
すると宰相は不満そうな表をしながらも頷いた。
「アークデーモンは討伐しました。やったのは俺たち冒険者です」
「……し、真実です」
「「「「「おおおおおおおおおおおーーーーーーー!!!」」」」」
ヒューゴ司教の震えた聲とは裏腹にエリバン王國の重鎮たちは笑顔を見せる。
アークデーモンといえば目撃されれば災害級の被害をもたらすSランクモンスターだからだ。
それを討伐したという話が真実だったので頼もしいとじたようだ。
「そっ、そうすると、お前はデーモンキラーになったのだな?」
興気味に貴族がまくしたてる。
「いえ、俺は――」
ラッセルがその質問に答えようとしたところで。
「兵士ラッセル。質問は以上だ」
宰相の一言が遮った。
「えっ? もうおしまいですか?」
怪訝な顔をするアリス王。彼はその質問の答えを知りたかった。
「現時點でアークデーモンが存在し討伐がされたという真実が明らかになりました。後の審議が押しているので無駄な質問は省きましょう」
その言葉でアリス王は宰相の考えを見抜く。
アークデーモンを討伐したのは目の前のラッセルではない。もしその人の名を知れると自國に勧される可能を考えたのだ。
(でもその人が多分あいつよね? ラッセルが外れだったけどまだ可能はあるわ)
「それでは次の人間をれてもよろしいですかな?」
自分が宰相の思に気付いた素振りを見せない方が良い。
「ええ、宜しくお願いしますわ」
アリス王はチャンスを伺うことにするとそう答えた。
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