《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》賃貸契約

「どうぞ。降りる際に足元にお気をつけください」

馬車で走ること數十分。到著したのは閑靜と呼んで差し支えのない場所だった。

「こちらが先程紹介しました件になります」

目の前には古びた建が立っている。歴史をじさせる佇まいはどこか懐かしいとじる。

きっと王都の栄えた雰囲気とは違い、実家に近い雰囲気がするからだろう。

「定期的に掃除をしておりますので、見た目よりはしっかりとした佇まいになっております」

扉を開けて中にると、香辛料や酒の香りが仄かに鼻を刺激した。

長い歴史の中で建に染みついているのだろう。

中にりフロアを見渡してみる。テーブルが端に片付けられていて1階部分には広いスペースがある。ドアからった目の前には付があり、その橫には2階に上がる階段がある。おそらく宿泊部屋だろう。

付の奧に見えるのは廚房らしく、その奧には裏口が見える。どうやら出口は正面のドアと裏口だけらしい。

俺はミラルゴさんに案されると建を一通り見せてもらった。

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前の持ち主が置いていったのか、家などがそのまま殘っているので住もうと思えば今日からでも住めそうだ。

「いかがでしょうか?」

口元に手を當てて考えているとミラルゴさんはみ手をしながら聞いてきた。

「いいですね。考えていたよりも良い狀態です。こちらを貸してください」

「ありがとうございます。それでは早速書類を用意させていただきます」

そういうとミラルゴさんは鞄を開けるとカウンターに書類を並べ始めた。

即決の際、その場で契約をしたいと俺が話をしていたから持ってきていたのだ。

「それで、いくらになりますか?」

支払いに関しては手付けを渡しておけば問題ない。あとは神殿から報酬がってから払おうと思っていたのだが…………。

「宰相様の手紙に支払いは王國が持つと書かれていたので不要です」

「えっ?」

まさか宰相さんがそこまで回しをしてくれているとは。この場はその厚意に甘えておくことにした。

「それで、いかがなさいますか?」

「ん。何がですか?」

ミラルゴさんの問いかけに俺は首を傾げる。

「こちらを店舗として使うのか、それともパーティーの共有スペースにするのか、いずれにせよ清掃やら修繕が必要かと思います。そちらに関してもこちらで手配をすることは可能ですが」

流石は不産のプロだけある。アフターサービスで業者を紹介してくれるつもりらしい。

「ああ、今はそういった目的で利用するつもりはありませんので。必要になったらまた頼みに行ってもいいでしょうか?」

「かしこまりました。それではこちらがこの建の鍵になります。全てお渡ししますので、紛失した場合は作り直す必要がありますので」

そういって差し出された3本の鍵を俺はけ取ると、

「どうもありがとうございました」

お禮を言うのだった。

「さて、早速始めるとするか。マリー出てこい」

「はいなのです。主人さま!」

目の前の空間が歪み、そこからマリーが顕れた。

「やっと主人さまと二人きりになれたのですよ」

嬉しそうにウサミミをかして抱きついてくる。

こいつは人間が好きじゃなく、呼ばれなければ人前では姿を見せないのだ。

知り合った當初は敵対していたが、こうして懐かれると可いと思ってしまう。

頭をぐりぐり押し付けてくるマリーの頭をでてやると……。

「周囲に人の気配は?」

「全くないのです。主人さまに害意を持つ人間、この建を見張る人間。ともに存在していないのですよ」

「なら良かった」

マリーは風の霊王だ。微霊などに命じて周囲を探るのに長けている。

迷いの森滯在時も、城にいる間も。常にマリーが索敵を行ってくれていたので俺は安心して休むことができたのだ。

「じゃあまずは建に結界を張ってくれ」

「えーと、どのぐらいの強さで張るのです?」

俺が知っている結界といえば邪神の城の壁にあった結界だ。

邪神の必殺技でなければ壊すことができず、まともに出りができない。

あの強度までは必要ないと考えると……。

「マリーが壊すのにし苦労するぐらいがいいな」

「はいなのです。では々時間をもらうのですよ」

フロアの中心に立つとマリーが輝きだした。

その姿は幻想的でしく。普段の甘えるような言と一致せずについつい見惚れてしまいそうになる。

しばらくするとマリーのの輝きが消えていく。

「ふぅ、これでばっちりなのです。アークデーモンでも壊すのに苦労する結界の完なのですよ」

誇らしげにをはって見上げてくるマリーの頭をでてやる。

「この鍵を持つ人間はれるようにしてくれないか?」

せっかく結界が完したところ悪いが、このままでは自由に出りができない。俺はマリーに鍵を差し出すと。

「わかったのです。この鍵にマリーの力を籠めるのです。持ち主が顕れたら上級霊に一時的にあけさせるのですよ」

これでよし。風の霊王が張った結界に上級霊が周囲を警戒している。

この建の警備は下手な城よりも上だろう。

「それで主人さま。どうしてこんなことをしているのです?」

俺がこの國に滯在するつもりがないことはマリーも知っている。なのになぜ建を賃貸したのか気になったようだ。

「それはな……」

俺は自分のステータス畫面を見るといった。

「ストックしているアイテムが多いからここに置いておきたいんだ」

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