「こう持てばいいのか？」

「それだと力がりすぎてるわ。もうちょっと手綱を緩めるじでいいわよ」

隣に座るセレナはを乗り出すと俺のへとれてくる。

本人は特に気にしていないのだろうが、俺のきを指導するたびにセレナののらかい部分が俺のにれていた。

「こうかな？」

セレナに手をれられて力を抜く。すると俺の力の抜け合をじ取ったのかセレナは手を離すと。

「うん、そのぐらいね。あとは馬が進むのに任せて指示を出すときだけ手綱をつかうといいわよ」

そういうと俺から視線を外して前をみた。

先程までと違って一定のテンポで車がく音がして、目の前の風景が流れていく。どうやらきが安定しているようだ。

現在、俺はセレナから馬車の縦方法を教わっている。

「手綱一本で意思の疎通を図るのは難しいものだな」

俺がしていた仕事は畑を耕したり収穫したりまでだったので、馬車の取り扱いは教えてもらえなかったからだ。

セレナが楽しそうに者をしているのを見ているうちに、自分でも縦をしてみたくなり教えてもらうことにしたのだ。

「うーん、でもこの仔たちはおとなしいよ？　実際の馬だとその時の機嫌によって言うことを聞かなかったりするし」

明らかに上級者の発言に俺は首を傾げると……。

「そういえば、セレナはどうして馬車の縦ができるんだ？」

迷いの森からでたことないと言っていたはずだ。あの森には道というものが存在していないので、馬車が必要な狀況は存在していないはず。

「馬車は初めてだけど、生きを手懐けるのには慣れてるからね。馬に何度か乗ったこともあるし」

どうやら馬車自をるのは昨日が初めてだったらしい。俺は驚愕を浮かべると……。

「大事なのは相手がどうしてしいか理解することだもの。は素直だから読みやすいのよね」

エルフは森の番人とも呼ばれていて、自然をする種族だ。

常に自然の中にいる彼らにとっては生きと意思の疎通を図ることはそう難しいことではないらしい。

「なるほど、素直なのはいいことだ」

俺が目の前の魔法生を見てそう言うと……。

「そうよ、だからエルトももっと素直になればいいと思うわ」

セレナはさりげなく俺にを寄せると呟いてくる。

「はい、そこまで！」

ところが、そんな俺たちの言葉を聞いていたのかアリシアが會話に割ってってきた。

「次は私が教えてもらう番でしょ？　エルトは馬車に戻ってよね」

どうせなら全員が者をできるようになった方がよいということで、代で教えてもらうことになっていた。

アリシアが俺とセレナの間にってくると者臺が狹くなる。

「セレナ。抜け駆けは止って言ったよね？」

「す、しぐらいいいじゃない」

じっとりとした視線を向けられたセレナは狼狽えるとアリシアに言い返した。

この二人はどうやら俺のいないところで話し合っているらしく、俺に対するルールを々を取り決めているようだ。

なんにしても険悪にならないのは助かる。俺は笑顔で牽制しあう二人をよそに馬車へと戻るのだった。