《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》天空城
「いったい何者だ! どこから話しかけている!」
部屋には俺とアリス以外の人影はなく、霊やデーモンなどが姿を消している様子もない。俺はアリスのきに気を配ると周囲を警戒する。
『マスターの登録をお願いします。お名前をどうぞ』
すると聲の主は俺の質問に答えることなくのこもっていない言葉を発した。
「何を訳の分からないことをっ! 姿を現せっ!」
俺はストックの中からバルムンクを取り出すと抜き放った。
『マスターの登録をお願いします。お名前をどうぞ』
だが、聲の主は同じ言葉を繰り返すだけでこちらの呼びかけを完全に無視する。
「……アリスどうおもう?」
相手の反応に俺はどうするべきか判斷を下せずアリスに意見を聞いてみる。
「多分だけどこの部屋そのものが巨大な魔法裝置だと思うの。この聲は予め決められたセリフを言っているだけだと思うわ」
「何のためにそんなことを?」
アリスの推測に俺は眉をひそめる。するとアリスは説明を続けた。
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「元々、冒険者ギルドや城などの巨大施設にある魔法裝置も古代文明の産なんだけど、これらは凄い能をめている反面、使用者を登録しなければかないという不便さを持っているの」
「確かに冒険者カードの機能は凄いとは思っていたんだが……」
報酬を溜められたり、討伐モンスターを記録してくれたりと非常に便利だ。現在の魔法學の技かと思っていたが古代文明の魔法裝置だったとは知らなかった。
『……マスターの登録をお願いします。お名前をどうぞ』
「とにかくこれが魔法裝置なのははっきりしているわけだし、このまま放置するというのは良くないわ。まずはマスターとやらを登録しておいた方がいいわね」
アリスは悩むように考えると最終的にそう結論を述べた。俺よりも魔法裝置の取り扱いに詳しいアリスがそういうならここはその提案をけれるべきだろう。
「エルトだ。これでいいか?」
『マスターの名前を”エルト”で登録しました』
しばらくすると返事が返ってくる。どうやら無事に登録ができたようだ。
『それではこれよりこの施設【天空城】の説明をさせて頂きます』
「ちょ、ちょっと待て!」
安心したのも束の間。聲の主から出てきた次の言葉に俺は焦りを浮かべると待ったをかけた。
「アリス。今の言葉に聞き覚えは?」
俺は興を抑えきれずにアリスに質問をする。もし俺と同じ認識だとしたら……。
「聞き覚えがあるかも何もっ! 神話時代から伝えられる伝説のお城じゃない! 神々が住むっていう!」
やはりそうなのか。俺たちが子供の頃から聴かされたおとぎ話に天空城というものがある。そこは神々が住まう城で魔源郷のように魔力が溢れており、見たこともないごちそうや聞いたこともないような道の數々が存在すると言われている。
語の登場人はあらゆる知恵や勇気、運をもちいて天空城を目指す。そして見事辿り著いた者は神へと謁見することが葉い、栄を手にすることができるのだ。
かつての勇者もこの天空城を訪れ伝説の武を與えられ世界を征服する魔王を討伐したという語もある。俺も子供の頃に両親から聴かされた大好きな語だ。
「ちょっとっ! 本當にここって天空城なの?」
『………………』
アリスが質問をするのだが、部屋からは何の返事もなかった。
「えっと、一つ聞きたいんだが?」
『はいどうぞマスター』
「え、エルト君の質問には答えてくれるのね」
どうやらアリスの質問はスルーされていたようで複雑な顔をしている。
「天空城というのはあの天空城でいいのか?」
『質問の意味が解りません。認識の共有ができておりません』
それはそうか。この聲がどれだけの時間をこの場所で過ごしていたのか知らないが、おとぎ話になる程なのだ。相當な年月が流れているに違いない。
「えっと、俺の聴いた話では空に浮かび、世界中を飛び回っている城で……。そうだ、神々が住んでいるという話だ」
おとぎ話を思い出しながらなんとか説明を試みてみると。
『空を飛ぶというのはその通りです。ですが。カミガミ? そのようなマスターは登録されておりません』
「魔源郷のごとく魔力に満ちていて、見たこともないごちそうや道があったりするらしいが?」
『魔源郷? 天空城は【魔力爐】を保有しておりますので、魔力は無限に生み出せますが。ごちそう? 私には不要なものなのでマスターが所の場合は自分で作っていただくことになりますが』
どうやら【魔力爐】なる設備があるらしく、それが魔力を生しているらしい。そのような設備の存在、なくとも俺は初めて聞く。魔力を自在に生み出せるとしたらそれだけで世界のバランスが崩れてしまうだろう。
「エルト君」
「なんだ?」
途方もない報に俺はアゴに手を當てて悩んでいるとアリスが話し掛けてきた。
「おとぎ話の魔源郷は魔力爐よね。だとしたら見たことないごちそうというのはステータスアップの実じゃないかしら?」
「確かにそれなら辻褄はあうな……」
ステータスアップの実を使った料理ならば食べたことのないごちそうと言われても納得だ。
「ということはエルト君。私気付いちゃったんだけど……」
アリスは恐る恐る周囲を見渡しながら勿ぶると言った。
「もしかしてこれ今、空を飛んでるんじゃないかな?」
「何を馬鹿なことを、壁に空の映像が映っているだけだろ。もし本當に空を飛んでるとしたら…………」
『はい。現在この天空城は地上から高度3000メートルに浮かんでいます』
「えっ?」
俺がアリスの言葉を否定しようとしていると聲の主はそう答えるのだった。
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