《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》書のローラ
サラサラとペンが紙をなぞる音だけが室に鳴り響く。
窓を背に執務機が置かれていて、椅子に座った狀態の正面には商談用のソファーとテーブルが向かい合って置かれている。
どの家も高価そうで、これ一つでどれだけのが買えるのだろうかと俺は橫目に見ていた。
「コホン」
新たな書類を手にして容を読んで再びペンを走らせる。同様の書類が機の両側に高く積みあがっており思わず溜息がれる。
しばらくの間、集中して作業をしていた俺だが、どうしても気になり顔を上げる。
俺の斜め後ろ。窓際に一人のが立っていた。
上品なドレスにを包み、盆を両手で前に抱えている。見た目の年齢でいうとマリーとさほど変わらない。小柄なに薄桃の髪。紫がかった赤い瞳は何を言うでもなくじっと俺を見ている。
目が合っているようで合っていないのか、こちらが見ていることに何ら反応を返すことがないの名は確かローラだったか?
イルクーツ王國が今回の書類確認のために付けてくれた書だと本人が言ってきた。
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「何か?」
ローラは首を傾げると俺に質問をする。普段、マリーの騒々しい姿を見ているのでこの年頃にしては……。いや、俺のの回りにいる人間すべての中で落ち著きすぎている。
「いや、背中をじっと見られると気になってな」
「そうですか。それは失禮しました」
ローラはそう言うと俺に近づきサインを終えた書類をまとめてトントンと機で整える。
近づいた彼からは香水の匂いが漂ってくる。何かの花の匂いなのだろうが、初めて嗅ぐので見當がつかない。彼のなりから判斷するに市場でも高価ななのだろう。
ローラは俺のことなど眼中にないように離れると書類を抱えて歩いていく。
「なあ、これ全部やらなければだめなのか?」
ここ數日、俺は執務室に籠もっている。エリバン王國から厚意で部屋を貸してもらっているのだが、いい加減飽きてきた。
「これらの書類は各國より邪神討伐のお禮として贈られたの目録になります。中には屋敷であったり高価な魔導もあります。早急に領のサインをしていただかないと」
「ああ、そうだよな」
今回の邪神討伐で謝されているらしく、各國に俺の屋敷が用意されていると話を聞いた。その他にも高価な寶石や武など、使いきれないがたくさん贈られており、そのけ取り容と取り扱いについての説明を読む必要があった。
彼が無言で部屋を出ていく。俺は思わずため息を吐いてほっとする。
ここ數日ずっと重苦しい雰囲気の中作業をしていたからだ。
ローラは基本的に部屋にいてもしゃべらない。書類について質問をすると予備知識がない俺にも理解できるように説明をしてくれるのだが、説明を終えると再び口を閉じて定位置に戻ってしまう。
固まった表は巧な人形のようで、そんなローラがじっと見ているというのは中々神的にくるものなのだ。
ひとまずプレッシャーから解放された俺はローラがいない間にしでも作業を進めておくことにする。
彼は俺が作業に集中できるように段取りをしてくれている。朝は俺よりも早くに執務室にいるし、俺がセレナやアリシアと夕飯を摂っている間にも黙々と仕事をしているようだ。
イルクーツ王國が派遣してくるだけあって優秀な文なのは間違いない。一刻も早く作業を終えて國に戻さなければならない。
段々と集中力が上がってくる。読み進めてはサインをして、積みあがっていた書類の半分ほどを片付け終えると。
「戻りました」
ノックの後ドアが開きローラが戻ってきた。
「見てくれ、大分片付けたぞ」
自分の作業の果をローラへと報告する。だが、そんな俺に対し彼は平たんな聲を出すと、
「そうですか。それは良かったですね」
「あの……。ローラさん?」
「私のことは呼び捨てでローラと呼ぶように申しましたが?」
背中に汗が伝う。俺は信じられないを見るようにローラに質問をする。
「ローラそれは?」
ローラの腕の中には高く積みあげられた書類の山が見えた。
「追加分です。中には急ぎのもありますので、本日の夕飯の約束はキャンセルさせていただきましたので」
そういって執務機にドサッと書類が置かれる。そんな彼に俺は……。
「ああ、わかったよ」
項垂れながらそう答えるのだった。
※報告及び販促活
ご無沙汰しております。まるせいです。
刊行スケジュールに忙殺されていて更新が滯ってしまい申し訳ありません。
それで、いよいよなのですが
『生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件』
が6/30に発売します。
一応詳細は活報告の方に書いてありますが、見に行くのが手間かもしれないのでこちらにも書いておきます。
今回は特典SSがあります。タイトルは『審議前夜』
タイトルからある程度察することができるかもしれませんが、こちらは本編を読んだ後に読んでいただけるとさらに本編が楽しくなるように書いてあります。
気になる取り扱い店舗に関してですがアニメイト、ゲーマーズ(男向けのみ)、とらのあな、メロンブックス、書泉ブックタワーで取り扱いしております。
數に限りがあるそうなので、気になる方は是非買って読んでいただければと思います。
あと、刊行作業がまだまだ殘っているのでWeb更新は相変わらず不定期になりそうです。ご迷をお掛けしますが、今しばらくお待ちいただけると嬉しいです。
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8 64【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】
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