《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》狩猟祭

書類仕事を始めてから一週間が経過した。毎日頑張ったおで最近では目を通す書類もなくなり、俺は仕事の傍らにローラから々な政務を教わっていた。

領地経営の仕方であったり、王侯貴族の序列。他にも他人に命令を下す時の態度など。

どこで使う必要があるのか疑問だったが、唐突に授業が始まってしまったので聞くタイミングを逃してしまった。

ローラは年下とは思えないほど知識があり、授業もわかりやすい。

そのせいで俺もついつい興味を持ち質問をしてしまい、ここ數日でローラとの會話が増えた。

冷たい態度は相変わらずなのだが、それは本人の格によるものと諦めた。

今日も書類を片付けつつローラから何かを教わろうと執務室に足を運ぶのだが……。

「本日の予定はドゲウ王子が主催する狩猟祭への參加になります」

扉を開けると定位置にローラが立っており書類をめくっていた。

そして俺を一瞥すると初めて聞く予定を話した。

「いや、どういうことだ?」

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「以前よりあなたと『會わせろ』『パーティーを開くから參加してほしい』などの聲が多數ありました。今までは書類の確認を優先するということで私が斷ってきましたが、そろそろ斷りきるのが難しかったので……」

アリスからはパーティーのいとか増えると聞いてた。そういえばいがまったくないなと書類を読みながら考えてはいたのだが、どうやらローラがシャットアウトしてくれていたらしい。

いい加減書類仕事にも飽きていたので構わないのだが、前日に教えてほしかった。

「……それにしたって狩猟祭って」

町に住んでいた時にもなかったわけではない。町の狩人たちが森にってきてを仕留めて戻ってくる。その時に狩った獲の重量で勝負するのが習わしなのだが、

「他の催しじゃだめなのか?」

俺は一般人だったので、狩りをしたことがないのだ。

「私の方で一番無難なを選んだつもりですが、嫌だというのなら王・公限定のお茶會に変更しますよ?」

自分がだらけのお茶會に參加してティーカップを持っている姿を想像する。

「いや、その選択なら狩猟祭でいい」

「では、こちらに參加者のプロフィールをまとめておきましたので、參加時間までに一読しておいてください」

ローラからけ取った紙束をパラパラと捲ってみる。相當分厚いのだが、その一枚一枚に參加人の出國やら友関係、趣味や特技などが記載されている。

綺麗な文字で書かれている。毎日見ている文字なので、書いたのはローラで間違いないだろう。

俺が恥をかかないためにこうして參加者のプロフィールを用意をするとは、隨分と手間がかかったに違いない。

「ありがとうな」

ひとまず謝の気持ちを伝えてみるのだが、

「仕事ですから。気にしないでください」

相変わらずの無想っぷりだった。

「これはこれは英雄エルト殿。この度は數多くある催しの中から僕の狩猟祭の招待をけてくださりありがとう。今日は歳の近い人間を集めたので楽しんでもらえると嬉しいよ」

大げさな様子で俺に挨拶をしてくる。俺は目の前の男のプロフィールを思い出す。

ガラセイヤ王國の第二王子で名前をドゲウという。

國家としてはそこそこの規模だが、強引な外に民をないがしろにする政策。癖が悪いらしく黒い噂が絶えない男だ。

丁寧な挨拶をしてはいるが、どこか見下すような視線を俺に向けており、ドゲウの後ろにいる數人もニヤニヤと笑っていた。

俺がその様子を見ているとローラに背中を突かれた。どうやら彼も狩りに同行するようで、普段とは違い髪を後ろでまとめてポニーテールを作ってきやすい格好をしている。

「この度は狩猟祭への招待謝します」

のはしはしに見える笑みを無視しながら、俺はローラに習った通りに手をあて上半し前に倒し貴族流の挨拶をする。

俺が丁寧な挨拶をすると、ドゲウは、

「噂に名高い英雄殿の力量を見られるかと思うと昨晩は寢付けませんでしたよ」

基本的に王族は他人に頭を下げない。分でいうなら聖人の稱號を得るはずの俺の方が上になると説明をされていたが、現時點でまだけていないからかドゲウは挨拶を返さなかった。

後ろでローラがむっとしている。どうやら禮儀を守らないドゲウに苛立ったようだ。

「ところでその弓はもしかすると市販品では?」

「ええ、そうですけど何か?」

狩猟祭のことを知らされたのが先程なのだ。この弓だって急遽エリバン王國から貸してもらっただけ。

「流石は英雄殿ですね。狩りをするのに市販の武を持ってくるとは」

「いやいや、きっとまだ武職人に伝手がないんですって」

「邪神を討伐したぐらいだから武は選ばないのでしょう」

小馬鹿にした様子に後ろの取り巻き立ちが一斉に笑う。

ここにきてはっきりとわかる。どうやら彼らは俺を貶めて恥をかかせたいらしい。

こういった人間は何処にでもいる。特に俺は邪神討伐の功績で目立っているので絡みたくなったのだろう。

「前日の夜にいきなり予定を告げてきて失禮じゃないですか!」

ローラから怒りの聲が聞こえる。どうやら前日に俺に言わなかったのは參加を半ば強制させられたからのようだ。

「それにしたって、そんな一般兵士が使うような弓とはね。見てみろ」

ドゲウはそう言うと自分の弓を見せる。

「これは名工に作らせた弓で名を『シルフィード』という。矢を放つと風の霊が補助して獲へと突き刺さる。私にふさわしい武だと思いませんか?」

見ると確かに武の周りを風の霊が飛びっている。弓に散りばめられた寶石に

反応しているようだ。

「所詮は武頼りということではないですか。武がいくら優れていても狩りの腕がたいしたことなければ獲を仕留められませんよ?」

「な、なんだとっ?」

ローラは憤慨すると言い捨てた。ドゲウは怒りをあらわにすると、

「ふんっ! 市販の弓で僕たちよりも獲を狩れると? それなら賭けをしようじゃないか」

「賭けですか?」

できることならけたくはない。俺は眉をひそめる。

「英雄殿が負けた場合は……。そうだなぁ、イルクーツの王に一晩お付き合いいただくというのはどうだろうか?」

この場合の『一晩お付き合い』というのは貴族の隠語になる。ドゲウは鼻の下をばすしてローラを見る。

流石にこんな勝負をけるわけにはいかない。俺はきっぱりと斷ろうと口を開くのだが、

「それで構いません」

先にローラが返事をしてしまった。

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