《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》ドゲウ完封法

「さて、ドゲウに勝つための方法だが二通りある」

「何故にレオン王子が仕切るのですか?」

パーティーを組むと決めるとレオンが指を二本立てて説明を始める。

「ひとまず聞いてみよう」

「一つ目は狩りをして奴らより多く獲を仕留める方法」

「……もったいぶった割には正攻法ですね」

ローラは胡散臭そうな表を向ける。既知の間柄なのか、普段俺に見せるよりも表かだ。

「もう一つは、奴に獲を狩らせない方法」

的にはどうするんだ?」

俺が確認すると、レオンは楽しそうに笑うとその手段を口にした。

「奴が使っている弓は【シルフィード】風の霊が宿っているお蔭で飛ぶ矢に補正がかかり獲へと突き刺さる」

確か自分の弓を自慢していたようだがそう言う効果があったのか……。

「俺でもエルトでも構わないから、奴の弓に宿る風の霊に命じて一時的に力を貸さないようにさせればいい。そうすれば奴の元々の腕前では簡単に獲を狙うことはできなくなるからな」

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よほどドゲウのことが嫌いなのか、レオンは嬉々として提案してきた。

「どうしますか? エルト様」

レオンの説明を聞いて納得したのか、ローラが俺の返事を待つ。

「まず一つ、俺は契約している霊が離れているから風の霊に命じることが出來ないんだ」

マリーは今頃お茶會に參加して味しいを食べている。呼び戻しても良いのだが、楽しみにしていた様子だったのでそれは可哀そうだ。

「ならそれは俺がやってもいい、それでどっちにする?」

レオンが提示した選択肢について俺はアゴに手を當てて考える。

「今回の賭けの容、負けたらアリスがあいつの相手をしなければならなくなる」

弓の補正を切るだけでは勝利は確実ではないだろう。

「だから両方で行こうと考えている」

「「両方?」」

俺はレオンとローラに考えている作戦について話した。

「くそっ! さっきから全然獲を発見した報告がないじゃないか! いったいどうなっている!」

ドゲウ王子はいらいらすると、取り巻きに當たり散らした。

「そ、それが……どれだけ探しても獲が見當たらず……。近くにいる痕跡はあるのですが……」

草木がれた痕があるので、生きがこの周辺にいるのは間違いない。

「あっ、あちらにイノシシがいましたっ!」

「やっとかっ!」

取り巻きが百メートル以上離れた場所でくイノシシを発見する。

「ここからなら命中補正がかかるから余裕だ」

ドゲウ王子は矢を番えると力いっぱい引き絞り放った。

「「なっ!?」」

これまでなら真っすぐ飛んで獲を貫いていた矢は明後日の方向へと飛び草の中へと消えてゆく。

「王子、イノシシが逃げますっ!」

気配に気づいたのかイノシシは足早に遠ざかっていった。

「くそっ! どうなっている!」

忌々しそうに弓を見ると、

「こうなったらお前も獲を探しにいけっ!」

ドゲウ王子は最後に殘った取り巻きを怒鳴りつけるとのだった。

「さて、結果は見るまでもないな」

狩猟の時間が終わり、俺達はベースへと戻っていた。

お互いの陣地に狩った獲が積み上げられている。

俺とレオンとローラの陣地には數十にも及ぶ獲が山を作っているのだが、ドゲウ王子の方はというと最初に狩れた數匹程度のようだ。

「これで賭けは私たちの勝ちのようですね」

「ぐぐぐぐっ!」

ローラの言葉に顔を真っ赤にして睨みつけるドゲウ王子。

「それで、もし私たちが負けた場合『イルクーツの王』があなたに付き合うという話でしたが、そちらは何をしていただけるのですか?」

冷たい瞳を向けるローラ。

「一國の王を好きにしようとして置いて、まさか対価も考えていないわけではないですよね?」

「……ぐぐぐぐ、何がみだ?」

悔しがるドゲウ王子に、ローラは裝備一式の他、國同士の取引の際の利権やらを賭けの清算としてもぎ取るのだった。

「それにしても、お前の方がえげつないこと考えるよな……」

ドゲウをやり込めて戻る途中、レオンは腕を頭の後ろに組みながら話し掛けてきた。

「ローラに探索させて、近くの獲を追い立てて遠ざけておいて、その上でドゲウが狙いそうな獲をこっちで掠め取る」

これが俺が提案した必勝方法だった。

レオンが風の霊をれるというので、俺が矢を放つのを補正してもらい獲を仕留める。

そうすればドゲウは一匹たりとも狩ることができないので、勝ちが確定するというわけだ。

個々の力で勝るからこそとることが出來た方法だった。

「それよりローラ、勝てたからいいようなもの。今後はこういう賭けはするな」

城に戻り、部屋へと向かう途中で俺はローラを呼び止める。

「いくら何でもアリスの……一國の王を勝手に賭けるなんてやりすぎだろ」

アリスがあのドゲウ王子の毒牙にかかっていたかと思うと想像するだけで震いがする。

「ああ、あの賭けの件でしたらアリス王ではなく…………」

ローラが何かを言いかけていると。

「あら、お帰りなさい。ローラ珍しい格好をしているわね」

今しがた話に上がったアリスが通りかかった。

はお茶會に參加していたらしく、ドレス姿で化粧をしていた。

「どう、エルト君。ローラは迷をかけていないかしら?」

その問いかけに言葉に詰まる。なぜなら今ちょうどこうして問い詰めていたところだからだ。

「私がそのような迷をかけるわけがありません」

そうこうしている間にローラはアリスと話をする。俺がその會話を聞いていると……。

「それよりお姉様こそしっかりしてください」

「お姉様っ!?」

俺の大聲に二人は揃ってこちらを向く。

薄桃の髪にアメシストの瞳。表こそ違うが、どちらも整った顔立ちをしていて……似ている……。

「言ってなかったかしら? ローラは私の妹なのだけど?」

「そうです、私はイルクーツ王國第二王のローラです」

さきほどのやり取りが思い出される。ローラは最初からアリスを犠牲にするつもりはなく自分を賭けの対象にしていたのだと気付いた。

「どうしたの、エルト君?」

一気に疲れがでた俺は手で顔を覆うと……。

「いや、なんでもない」

並んでみると似ているこの二人が姉妹だと気付けなかったことに落ち込むのだった。

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