《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》姉妹喧嘩

「え、エルト気付いてなかったの?」

食事を摂りながら、アリシアが驚いた表で俺を見ていた。

「いや、だって肩書を名乗られなかったし……」

「にしても自分が住んでいた國の王様だよ?」

そう言われるとその通りなのだが、

「そもそも農夫は壁の外に住んでいるんだから、そういった報には疎いんだよ」

城下街と違って報を得る機會が限られている。

「まあ、エルト君は私のことも知らなかったしね」

アリスは湖での初対面のことを持ち出してきた。

「お姉様、何があったのですか?」

食事を摂りながら、ローラはそんな疑問を挾んだ。

あの時起きたことは俺とアリス二人だけのということになっている。

「エリバン城でアークデーモン出現の真相を確かめる審議があったのよ。その時に私とアリシアも參加してたんだけど、エルト君は私を認識していなかったのよね」

不満を口にしながらナイフでを切ると口元へと運んだ。

対外的には確かにそれが初対面に見えるだろう。

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「それにしても本當に似てるわよね。ローラが長した姿がアリスってじ。お母さん似なのかしら?」

セレナはテーブルに肘をついて乗り出すと二人を見た。

「ええ、まあ……そんなところね」

「……容姿に関してはローラのせいではありませんから」

二人は一瞬間が開くと言葉を発した。

「そ、それよりもエルト君。狩猟祭で大活躍だったそうじゃない。お蔭でますます注目を浴びて、各國の人間から紹介依頼が殺到しているのよ」

「そうは言われてもな、萬が一負けることを考えたら手を抜けなかったし……」

「ん? どうして?」

アリスの疑問に俺はドゲウ王子との賭けについて話をした。

「つまり、エルトはアリスがそのドゲウ王子のみ者にならないために全力を出したのね?」

説明を終えるとセレナは俺の目を見ながらそう言った。

「いや、別にそれは……」

「それは?」

アリシアもじっと俺を見つめてくる。なぜか妙に居心地の悪い空間が出來上がるのだが……。

「どういうことなのっ! ローラっ!」

「お姉様には関係ありませんっ!」

二人の怒鳴り聲によって遮られてしまうのだった。

翌日になり、俺は普段と変わらずに執務室へと向かう。

「おはようございます、エルト様」

ドアを開けると書類を抱えていたローラが振り向いた。

「ああ……おはよう」

まるで昨晩のアリスとの言い爭いなどなかったかのように普通にしている。

俺は腫れないように自分の椅子に座ると、書類の確認を始める。

しばらくの間真面目に仕事をしていると、どうしてもローラの様子が気になる。

昨晩、ドゲウ王子との賭けに自を差し出したと告げたとき、アリスは本気で怒った。

最終的には俺とセレナとアリシアでとりなしたのだが、普段のローラからは考えられないほど的になっていたので俺は心配になった。

「はぁ……」

執務室にためいきがれる。

「ローラ?」

「あっ、申し訳ありません。エルト様」

集中力を切らしてしまったと思ったのか、ローラは頭を下げて謝る。

「いや、構わないけど……」

に出辛いが、心なしか沈んでいるように見える。

「アリスが怒るのも無理はない。それだけローラのことを心配していたということだろ?」

俺が勘違いして守らなければと思うほどにドゲウ王子は酷かった。

よく知らない俺でもそれなのだ、子供のころからドゲウを知っているアリスやレオンにしてみればあり得ないことだったのだろう。

「あそこでドゲウ王子を黙らせるには最も有効な方法でした。ローラはドゲウ王子がパーティーでお姉様を侮辱しているのを聞いています」

昨晩話さなかった事を打ち明けてくれる。

「結果として、ドゲウ王子から多くを得ることが出來ました。彼の発言力は低下し、今後はイルクーツにちょっかいを出すことは難しくなるでしょう」

ローラは自分が行った選択の結果、得たものについてれる。だが、俺もアリスも気にしているのはそこではない。

「確かに勝ちはしたが、そんなのは結果論だ。もし負けていたらどうなった? ドゲウのみ者になっていたんだぞ?」

もしそうなった場合、どのような目にあわされたかを想像で語って見せる。

するとローラの顔からの気が引いてきた。

「ローラがアリスを大切に思う気持ちはわからなくもない、だが自分のを危険に曬すような真似は止めておけ。俺は萬能じゃない。レオンがいなければ負けていた可能だってあるんだ」

「も、申し訳ありません……」

若いにはショックがでかすぎたかもしれない。俺はためいきを吐くと彼の頭に手を乗せた。

「……?」

顔を上げ不思議そうな目で見てくる。

「だから、次からやりたいことがあれば事前に知らせておいてくれ。俺もできる限り協力するからさ」

そう言うと彼は目をぱちくりさせるのだった。

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