《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》9.賢者様、新しい街に向かうも、ライカのスキルに驚きます!

「お師匠様! ついに出発ですね!」

奇跡の変から一夜明けて、私たちは冒険者ギルドに向かうことになった。

ライカはしっぽを揺らし、うきうきした表でとても楽しそうだ。

「忠実な僕である、このライカが荷をお持ちしますよ! 私、こう見えて荷持ちは得意なんです!」

ライカは張り切ってるけど、私は空間収納の魔法が使えるのだ。

その名も【長種の無限収納(マジックインベントリ)】。

実家の長種の貓があれやこれやをの中に収納する様子をヒントに開発されたものだ。

何でもかんでもるわけじゃないし、容量に限りはあるけどとても便利な魔法なのである。

たまにがつくことがあるが、まぁ、私は気にしない。貓人だし。

「ひえぇえ、すごいですねぇ! さすがはお師匠様、私の想像の斜め上の魔法です!」

ぽいぽいと必要なものを異空間にれ込むと、ライカはさらに目をきらきらさせる。

ふぅむ、この魔法だったら彼でも使えるかもしれない。

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犬だっての長いのはたくさんいるし、イメージしやすいかも。

そんなことを言うと、ライカは

「うふふふ! 我らがご先祖の柴犬様だって量はすごいのですよっ!」

などと、夏と冬の違いについて、わぁわぁと教えてくれるのだった。

「それじゃ、そろそろ出発しようかな」

「ワクワクです! お師匠様と私の魔法の旅がついにスタートするんですね!」

朝ごはんを食べて、いざ出発となったわけだけど、問題があることに気づく。

ライカが私を呼ぶときの呼び名が、お師匠様、なのである。

Fランク冒険者の癖に『お師匠様』はさすがに怪しまれてしまう。

ぐぅむ、どうすればいいものか……。

腕組みをして唸ること 五秒間。

私の脳裏には素晴らしいアイデアが浮かんでくる。

「よぉし、君は私を先輩って呼ぶこと! 私は今日からアロエ先輩だ!」

そう、先輩と呼ばせることにしたのだ。

なんかこう先輩と後輩で冒険者パーティを組んでるみたいなじを出したかった。

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それに、Fランク同士のくせに先輩って呼ばせているのもダサくていいでしょ。

「了解です! アロエ先輩師匠様!」

「師匠様はいらないよ」

「あぁっと、いけません。つい、うっかりです! アロエちゃん!」

「全部ごっそり抜けて、ちゃん付けになってるんだけど」

「わぅううっ、す、すみません、私ったら慌てん坊で……!」

ライカが「てへへ」と笑う様はかわいくて、つい許しそうになる。

だけど、人前で師匠とか言われたら致命的かもしれないのだ。

私は彼にしっかりと呼び名を定著させてから、出発することにした。

ちなみにワイへ王國の王都はうちから徒歩で數時間の距離にある。

私は國境沿いの一軒家に住んでいるのだ。

「そういえば、私も冒険者登録するんですよね。魔法學院ではスキル鑑定をしてなかったので、楽しみです!」

行きがけの道中で、ライカはぴょんぴょん飛び跳ねながらそんなことをいう。

確かに自分のスキルが分かる瞬間っていうのはドキドキするものだ。

はどんなスキルを持っているんだろうか?

あの剣聖の孫であり、よくよく考えたらヤバすぎるスキルの持ち主かもしれない。

殺しても死なないとか、そういうのだったら?

それは非常にまずい。

のスキルが目立つものだった場合、私の平穏な生活は夢に消え、いつぞやの二の舞になってしまう。

言っとくけど、私はモブに徹したFランク冒険者をしばらくやっていたいのだ。

「ライカ、もしよければ、君のスキルを私に見せてくれないかな?」

「お師匠様、そんなこともできるんですか!?」

「ふふふ、姿は変わっても賢者の魔法はそのまま使えるからね。君のことは何でもお見通しにできるのだよ!」

「そ、そんなぁ、恥ずかしいですぅうう。弟子りした以上、覚悟はしてましたけどぉ」

ライカはそういうと元や下腹部を隠して、その場でへたり込む。

違う!

服がけて見えるとか、そういう意味で言ったんじゃない!

あと、どういう覚悟よ、それ!?

「それならいいですけど。よ、よろしくお願いします」

私が見るのはあくまで彼のスキルのみである。

これは私が開発した貓魔法【真実の目】によって可能になる。

「それじゃ、いくよ……」

私は目を閉じると、息をふぅっと吐く。

そして、かっと目を開くと、その恐るべき魔法を発させるのだ。

「ど、どうしたんですか!? ど、どうして明後日の方向を見てるんですか? わ、私の左上に何かいるんですか!? 」

貓魔法【真実の目】。

それは実家の貓がぼーっと明後日の方向、特に壁や天井などの一見すると何もない場所を凝視している様子をヒントに開発された魔法だ。

実をいうと、この時、貓にはあるものが見えているのである。

何かとは言わないが、アレが見えているのであるッ!

「お師匠様!? 何を目で追ってるんですか!? 私の上に絶対に何かいますよね!? 何がいるんですか!? 私、怖いんですけどぉおおっ!??」

私がスキルを読み取っている様子にライカは驚きの表だ。

しかし、この魔法は集中力を要する。

外からの音は雑音にしか聞こえない。

私はただただ彼のスキルを注視するのだった。

そして、私の視界に飛び込んできたのは、

『ライカ・ナッカームラサメ。スキル:魔犬(まいぬ)』

の文字。

まいぬ。

魔犬なんてスキル、生まれて初めて聞いたよ!?

魔剣なら魔法剣士の略だけど、魔の犬!?

しかも、読み方が「まいぬ」?

いわゆる外れスキルっぽい響きである。

「お、お師匠様!? ど、どうでしたぁ!?」

瞳をキラキラ輝かせ、尾をぶんぶん振りながら、尋ねてくるライカ。

明らかに期待している面持ち。

ふぅむ、どう教えるべきか。

魔の犬だよと言ってがっかりしないかなぁ。

でも、ひょっとしたら魔犬っていうスキルは一族で有名なものかもしれないし。

「えぇとね、魔犬って出てるんだけど、魔の犬って書いて……」

とはいえ、隠していたってしょうがないよね。

私は彼に正直に教えてあげることにした。

「ま、魔犬!? 聞いたことはありません! でも、魔法の魔がついているってことは、魔法関連、すなわち魔法を使えるってことですよね!」

スキル名を聞くと、ライカは「やったぁああぁ!」などと飛び上がって喜ぶ。

何をやったのかわからないけど、満面の笑みだ。

悪魔の犬とか、魔の犬とか、いろんなとらえ方はあると思うけど、魔法を使える犬って解釈か。

後で何が起こるのか知らないけど、ポジティブなことはいいことだと思う。

とはいえ、おそらくライカのスキルはそんなに有名なものではないだろう。

水晶玉で鑑定をけても、冒険者ギルドの人たちがびっくりするなんてことはなさそうだ。

よぉし、これならFランク冒険者として恥ずかしくないぞ。

私はふぅっと安堵の息をはくのだった。

「あっ! 先輩師匠様! 街が見えてきましたよ」

ライカの指さす方向にはワイへ王國の王都が遠くに見えてくる。

あれこそが私の新しい冒険が始まる場所である。

「いよいよだねっ!」

これから私の本當の人生が始まるのだ。

賢者ではなく、Sランク冒険者でもなく、一人の人間としての語が。

私は期待にを膨らませて、柄にもなくワクワクするのだった。

あと、ライカにはちゃんと「先輩」って呼ばせなければ。

「た、助けて下さぁああい!」

だが、しかし。

いよいよってところで、の子の悲鳴が聞こえてくるではないか。

場所はし離れた場所にある森の方角から。

「おししょ、先輩様! 今の聞きましたか!?」

「うん! 助けに行くよっ!」

ライカも悲鳴に気が付いたらしい。

こうしちゃおられないと、私たちは悲鳴のする方向に急行するのだった。

【賢者様の使った貓魔法】

種の無限収納(マジックインベントリ):長種の貓はその質上、の中にいろんなものを収納する。「あれ、こんなところにもってたぞ……」などと、の中は異次元空間のようである。その様をヒントに開発された異空間収納の魔法。容量制限はあるが、冒険者として活するには十分の大きさ。神的に追い詰められると思ったようにものが出てこないことがあるので注意が必要。

真実の目:貓が何もない空間を凝視している様子はとても有名である。この時、貓はぼんやりとしているのではなく、あるものを類い稀なる集中力で見ているのである。これをヒントに開発された貓魔法がこの真実の目。相手のスキルや呪いなどのステータス報を垣間見ることができる。ただし、発までに時間がかかり、実戦向けではない。発時には向(・)こ(・)う(・)側(・)から覗かれていることにも注意すべき魔法である。ちょっと怖い。

「面白かったワン」

「続きが気になるワン!」

「あれって真実の目だったのか……!」

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