《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》13.賢者様、Fランク冒険者としての洗禮をけようともがくも、やっちまったことに気づく。あわわわ。

「それじゃ、ライカ、さっそくFランク冒険者の洗禮をけるよっ!」

水晶玉を攻略することはできたけど、私の用事はこれで終わりではない。

これは、いわば始まりにしか過ぎないのだ。

初心者であるFランク冒険者として通過儀禮をけなきゃならない。

「せ、洗禮!? 通過儀禮!?」

私の解説に驚いた顔をするライカ。

なるほど、彼は腕は立つとはいえ、まだまだ素人冒険者。

これから何が起こるべきか知らないらしい。

「ふふふ、Fランク冒険者があそこで依頼を選ぼうとするだろう?」

「はい、あの掲示板のことですね?」

ライカはいろいろな依頼のってある掲示板を指差す。

その周りには何人かの冒険者が集まって依頼を味していた。

彼らは自分の腕と相談して、どの依頼をけるかを決めるのである。

「その時にだね、あることが起きなきゃいけないんだ。くくく、あることが、ね」

「あ、あることですか?」

ライカは怪訝な顔をして、ごくりとを鳴らす。

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「絡まれるのさ。イキったⅭとかDランクぐらいの冒険者、それも強面の筋野郎に絡まれるんだよ、Fランク冒険者っていうのは!」

そう、私の期待しているイベントとはこれである。

Fランク冒険者には薬草採取など様々な楽しみがあるとされる。

とはいえ、その中でも初期にしかお目にかかれないイベントがこれだ。

の程をわきまえないFランク冒険者が、これまた痛い先輩にからまれるのである。

まさしく、駆け出し冒険者ならではの通過儀禮!

前回、私はいきなり勇者に絡まれたので、このイベントは発生しなかった。

あの時、もし、私に話しかけてきたのが、ただのイキったC級先輩だったら、おそらく違った人生を歩んでいただろう。

そういうわけで、新しい門出には絶対に欠かせないイベントなのである。

「は? へ? 本気で仰ってるんですか? なんでわざわざそんな目に遭わなくちゃいけないんですかぁ?」

しかし、ライカは不服のようだ。

どうして自ら進んで嫌な思いをするのかと口を尖らせる。

「大丈夫、絡んできたあとには、別のお楽しみがあるんだよ」

「ぐぅむ、師匠にお考えがあるというのならいいのですが……。そもそも、それって都市伝説なんじゃ」

「いいから、いいから。都市伝説じゃないってところを見せてあげるよ」

私はなんとか彼をなだめて納得してもらう。

そう、ただ舐められて終わりではない。

先輩にイキられたあとには、ちょっとした意趣返しをする。

そして、できるなら、その先輩と拳で語り合って仲良くなる。

これが鉄板なのである。

とはいえ、それを話しちゃうと面白くない。

あくまでもサプライズであることに意味があるわけで。

「とにかく、依頼を選ぶふりをするよっ! あくまでふりだけね!」

「はいぃっ! 頑張ります!」

そういうわけで私たちは掲示板に直行。

ずらりとられた依頼をくまなくチェックする。

ふぅむ、さすがは王都の冒険者ギルド、種々様々な仕事がってあるようだ。

私はその中でジャイアントオーク討伐の依頼を見つけ出す。

ジャイアントオークとはなくともC級以上が相手をするべき、巨大な軀を誇るモンスターだ。

実戦経験のないFランク冒険者じゃ餌になるだけだろう。

よぉし、これを選ぶと見せかけてみよう。

「このジャイアントオークの退治なんてどぉかなぁ!」

私はあえて聲を張り上げて、ライカに相談するふりをする。

傍から見たらバカみたいだけど、敢えて演技でやってるんだからね、念のため。

「うわぁ、いいですねぇ! 私達にぴったりですぅう! 楽勝ですよぉおお!」

ライカも私の調子に合わせて大聲の演技。

まぁ、彼は普段からテンション高くて聲が大きいから、あんまり変わらないけど。

いいじの演技である。

おそらくはこれで他の冒険者達にも聞こえているはずだ。

彼らは気づくだろう。

駆け出しのFランク冒険者がなにかの程知らずなことをやってるぞ、と。

現実を分からせてやらねばならないな、と。

さぁ、來い!

私は後ろに座る冒険者たちに釣り糸をたらした気分で待ち構える。

一世一代の大勝負である。

全神経を背中に集める。

冒険者たちのきを見逃さないぞっとばかりに、私の貓耳がぴくぴくく!

しかし、ここで予想外の出來事が起きたのだ。

「た、大変だっ!」

どかぁっと冒険者ギルドの扉を開けて、冒険者が飛び込んできた。

彼は大聲でこうんだのだ。

「森でキラーベアが切りになってたぞ!? しかも、一匹どころじゃない、10匹以上がやられてるぞ!」

「な、なんだってぇー!?」

そう、まさかのまさかである。

私たちが討伐したあの魔をさっそく見つけたやつがいたのだ。

「どういうことだ? どうして10匹以上も?」

切りだって!? キラーベアのは尋常じゃなく固いんだぞ!」

「見たこともないほど鋭利な何かで真っ二つだそうだ。巨大な虎にでもやられたというか」

「ひぃいいい、それって最近噂のキングタイガーなんじゃないのか?」

突然の知らせに冒険者の皆さんは大騒ぎ。

そりゃそうだ、森に兇暴なモンスターの死骸が大量に転がっていたら、それは事件だものね。

「しかも、だぞ。どうやらレッドヘッドキラーベアもいたみたいだ。黒焦げになっちまって、頭以外はほとんど判別できないらしいが」

「レ、レッドヘッドキラーベア!? B+級の魔だぞ!? それが黒焦げだなんてドラゴンでも現れたってのか!?」

彼らはこの事件がドラゴンの仕業だとか、巨大な虎の仕業だとか、口々に議論し始める。

ま、まずい、もう私達を注意してやろうなんて輩をおびきだそうとか、そういう次元じゃないじゃんこれ!?

「しかもだぜ! 死はそのまま放置されてるんだよ! 素材取り放題だぜ!」

「熊の膽がとれるじゃないか! 行くぞ!」

さらには魔の素材にいきり立つ冒険者たち。

確かにキラーベアの臓は高く売れるとか聞いたことがあったけなぁ。

あっちゃあ、こんなことなら魔の死を隠すか、完全に燃やすかしておけばよかった。

いつだって冷靜沈著な私としたことが迂闊だった。

Fランク冒険者になれるって浮かれすぎてたよ。

「お師匠様、これでは難しそうですよ……」

ライカは私の脇腹をひじでつつきながら、小聲でそんな事をいう。

確かに、冒険者の皆さんどころか、ギルド職員の人たちまで大騒ぎして、外に出ていっちゃったし。

ここに殘されたのは私達だけになってしまった。

「白狀したらどうですか? 全部、私がやりましたって」

ライカはニマニマ顔である。

この野郎、私をからかって楽しんでやがる。

ぐむむむ、せっかく手にれたFランクの地位なんだよ。

白狀なんかできるわけない。

しょうがない、今日は出直してやらぁ!

「あたしゃ諦めないよ。こうなったら、何度でも試すからねっ!」

そう、私は諦めの悪いなのである。

一度や二度失敗したからと言って、決して諦めることはない。

次こそは先輩冒険者に絡まれてやる!

偉大な決意をする私なのであった。

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