《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》14.ジャーク大臣の悲劇と野:魔獣使いのカヤックさん、ついうっかり魔を失うも、大臣のもとには次から次へと悪い奴らが寄ってくるようですよ

「なぁっ!? 失敗したですって!? 特級モンスターで街道を襲うと言っていたではないですか!」

「も、申し訳ございませんっ!! 目を離したすきに全部やられてしまいました!」

ここはランナー王國のジャーク大臣の執務室。

そこでは大臣の怒號が飛んでいるのだった。

彼の部下である魔獣使いのカヤックが、ワイへ王國の襲撃計畫に失敗したからである。

それも並の失敗ではない。

隣國侵略のために調達していた魔がすべてやられてしまったのだ。

しかも、それぞれに付けていた魔道さえも々に破壊されているとのこと。

本來であれば、ワイへ王國の兵士をなぎ倒すはずの魔獣軍団だったのだ。

その損害はかなりの規模になる。

「じゅ、10全部がやられたですって!? しかも、レッドキラーベアまでやられるとはどういうことですか!? 誰の仕業なんです!?」

大臣が取りすのも無理はない。

レッドキラーベアは人間の天敵とも言える魔なのである。

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そう簡単にやられていいモンスターではないのだ。

「やられるところは見ておりませんが、こんなことができるのは、冒険者の連中に間違いないかと……」

「冒険者ですか……」

「はい、ワイへ王國は優秀な冒険者が多數、拠點にしております」

カヤックは土下座をしたまま、大臣にワイへ王國の現狀について話し始める。

ワイへ王國にはダンジョンがあることから、冒険者優遇政策をとっていること。

そのため、高ランクの冒険者が多數集まり、それが王國の治安を守っていること。

彼らは冒険者でありながら、ワイへ王國に國心さえ抱いているものも多いという。

「今回の不幸な事故が起きたのも、冒険者どものせいなのです! 私の責任とは言い難いものがあります!」

カヤックは自分への責任逃れのために、いかに隣國の冒険者が危険な存在なのかを力説する。

豪快そうな見た目と裏腹に、彼は小心者である。

処世にもしっかり長けている。

「冒険者どもめぇ……! 大人しくダンジョンにでも潛っていればいいものを!!」

大臣は暴な口調になり、ぐぐぐと拳を握りしめる。

彼はワイへ王國の制圧という野を実現するためには、冒険者の排除が必須であることを確信するのだった。

「ならば、冒険者ギルドごと潰して差し上げましょうっ! レイモンドさん、あの盜賊どもをここに呼びなさい! 冒険者ごと木端微塵にしてしまうのです」

「と、盜賊ども、ですか?」

レイモンドは困した表で返事をする。

自分の出番を持っていた彼にとって、盜賊を使うことなど選択肢になかったからだ。

しかも、大臣の言う『盜賊ども』というのは一筋縄ではいかぬ兇悪な連中なのだ。

「そうです。あいつらを呼び出すのです! 最近はどういうわけか魔が多いですからね、正規軍を使うわけにはいかないのです」

レイモンドの言葉に大臣ははぁっと息を吐く。

本來であれば、軍隊を使ってワイへ王國に真っ正面から攻め込むこともできたはずだったのだ。

しかし、現在、ランナー王國の魔の出現率は上がり中で、軍隊はそちらの鎮圧に割かざるを得ない。

もっともそれはアンジェリカを追放したことによる弊害なのだが、彼らはそれに気づいてはいないのだが。

「ははっ、お任せくださいっ!」

レイモンドはひれ伏した姿勢で返事をする。

ここランナー王國において、大臣は絶大な権力を有している。

その言葉に逆らうことはできないのだった。

「ふはははっ! 冒険者ギルドさえ沈めてしまえば、あとはこっちのものです! ワイへの弱兵など踏み潰してくれましょう!」

「そうですとも、ジャーク大臣!」

「大臣様、ばんざぁい!」

大臣は自信を取り戻し、高らかに笑う。

レイモンドとカヤックはそれに呼応して、おべんちゃらを使う。

大臣の機嫌を損ねなければ、素晴らしい未來が自分には約束されている。

二人はそう確信するのだった。

「呼んでくれて禮を言うぜ、大臣の旦那」

大臣の前に現れたのは、王宮には似つかわしくない風貌の男たちだった。

名前をクラジャート団といい、金のためなら何でもするという無法者集団だ。

大臣はこの盜賊集団に裏の仕事を任せることもあり、盜賊集団は大臣から様々な便宜を與えられていた。

いわば、持ちつ持たれつの関係を両者は保っていたのだった。

「これを使ってワイへの冒険者ギルドを破するのだ」

レイモンドは懐から魔道を取り出すと、クラジャート団の男に渡す。

報酬として、じゃらりと金貨のった袋を渡すのも忘れない。

「いひひひ、毎度、ありがとうございます」

男は野卑な笑みを浮かべると、深々と頭を下げる。

それから男はこんな質問をするのだった。

破する前に、ギルドの売上金をいただきたいが、構わないよな?」

男は貪な盜賊だった。

冒険者ギルドを破するだけではなく、その金さえもほしいというのだ。

彼の瞳は鈍くっており、良心のひとかけらすら殘っていないようだ。

「……ふん、好きにしなさい」

大臣は男の卑劣さにほとほとあきれながらも、許可を與える。

彼にとって大事なのは冒険者を駆逐できるかどうかだけだからだ。

冒険者ギルドのなけなしの金など、はっきり言って興味などない。

「ふくく、必ず良い知らせを持ってきてやるぜ、大臣さんよ」

ここに大臣たちの悪辣な野、第2幕が始まる。

行うのは冒険者ギルドの徹底的な破壊と、有力な冒険者たちの排除である。

もしもそれが葉ったならば、ワイへ王國の國力は大きく損なわれることになるだろう。

しかし、彼らは知らなかった。

キラーベアを屠ったのは、アンジェリカであるということを。

そして、現在のワイへ王國の最大戦力は、アンジェリカそのものであるということを。

今回の事件をしでも検証しておけば、彼らの未來は大きく変わったとも言える。

だが、彼らは自分の力を過信するあまり、失敗を味するという基本的なことさえ忘れていたのだった。

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「カヤックさん、つい目を離しすぎなのでは……」

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