《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》15.賢者様、三日目のアタックにしてついにイキった先輩をゲットだぜっ! あなたをお待ちしておりましたのぉおお!
「……お師匠様、今日で三日目ですよ? 今日ダメだったら、魔法をみっちり教えてもらいますからねっ!」
ライカはいつになく鋭い視線で私に忠告してくる。
それもそのはず、先輩冒険者にからまれる、というイベントが2日連続で不発だからだ。
昨日なんか掲示板の前で三時間も粘ったのに、誰も聲をかけてこなかった。
八百屋の軒先を冷やかしたり、冒険者ギルドの片隅にあったオセロゲームで遊び始めたのが敗因でもあるが。
「分かってるよ。今日でおしまいにするから!」
私だってこの狀況がよくないのはわかっている。
掲示板の前でぼんやりするのがFランク冒険者の仕事じゃないことも分かってる。
そういうわけで決死の覚悟で掲示板に臨む私なのである。
「あれ? 先輩、この依頼とかどうですか?」
ライカは新しい依頼がってあることに気づいたらしい。
その依頼とはドラゴンの調査。
奨勵冒険者ランクはB以上。
「ほぉおお、こりゃあすげぇや」
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西にあるドラゴンの住む山に登って生態を報告するという容だ。
先日のキラーベアの一件はドラゴンのせいではないかと睨んだ冒険者ギルドの的はずれな依頼だ。
ドラゴンの住む山はモンスターも多く、かなり危険だったはず。
Fランク冒険者じゃ、まず骨も殘らない依頼だ。
ふぅむ、いいね。
これぐらいあからさまだと食いついてくるやつが現れるかも。
「あぁ~、本當だぁ!これっていいかもぉおお! ドラゴンの調査だけだしぃいい!」
私はあえて馬鹿っぽく掲示板の依頼を指差す。
あえて、だからね、勘違いしないように。
普段は口數がなくて、冷靜沈著な人間なんだからね。
「……先輩、前から思ってたんですが、わざとらしすぎますよっ!?」
ライカは私の迫真の演技にツッコミをれてくる。
ええい、わかっとるわい。
わざとらしいぐらいじゃなきゃ、みんな気づかないじゃん、そんなこと言っても。
さぁ、どうだ!?
Fランク冒険者がドラゴンの調査に行くっていうんだよ。
これに食いつかなきゃ、先輩として終わってるよ!?
しかし、誰も聲をかけてこない。
くそぉ、この唐変木どもめぇええええ。
「……先輩、もう終わりですよ? 私と魔法の特訓をしっぽり、うひひひ」
「ひぃいいいい、……ん!? この気配は!?」
ライカが邪悪な笑顔で私の野を打ち砕こうとした瞬間だった。
私は背後にやさぐれた男の気配をじる。
汗とアルコールと安そうな皮鎧のにおい!
いかにも三流いや四流の匂いである。
現れたのだ、やつが!!
「おいおいおいおい、獣人の劣等種族がドラゴン調査だぁ!? 死ぬぞぉ?」
振り返ると、そこには見るからに頭は弱いけどは強そうな大男が立っていた。
彼は口元を大きく歪め、私達のことを見下ろして嘲り笑う。
そう、ついに現れたのである。
Fランク冒険者を煽る先輩冒険者様が!
「……はへ?」
「……わぅう」
とはいえ、待ちに待った出來事が起こると思考もも固まってしまうのが人の常。
自分に起きた出來事を疑ってしまう私である。
ライカは「都市伝説、いや妄想じゃなかったんだぁ」などと失禮なことを言う。
「あいだっ!? 痛いですよぉ」
とりあえずライカの右の頬を引っ張るが、ちゃんと痛そうにしている。
すなわち、現実なのである。
きたきたきたきたぁああああ!
お待ちしておりましたぁああ!
「う、うるしゃいですよ! あなたにしょんなことを言われる筋合いはありましぇん!」
私はすぐさま頭を切り替えて、用意しておいたセリフを口にする。
それは煽ってきた相手をさらに煽り返すというもの。
張のあまり、多、噛んでしまったが及第點だろう。
私の記憶が確かなら、煽られた相手は激高して私に決闘を申し込んでくるはず!
うふふ、それこそが私の思い描いた未來(ビジョン)なのだっ!
「なんだとぉおお!? てめぇっ! 俺を泣く子も黙るD級冒険者ランバートと知ってのことか!?」
男の額に管が浮き出て、彼が太い聲を出す。
よぉっしゃあぁああ、煽り返し、功!
D級冒険者っていうのがいいよね。
中級レベルでいきっているのがとっても香ばしい。
使い古された革の鎧は手れもいまいちで、いかにも萬年Dランクといった裝いだ。
さぁ、言いたまえ、私に決闘を申し込むと!
俺様の腕っぷしを見せてやろうと!
ぬははは、これだよ、これっ!
これこそが伝統行事にして通過儀禮!
私のFランク冒険者生活を彩る儀式なのだよっ!
飛び上がらんばかりに興した、その次の瞬間のことだ。
またも予想外の出來事が起きた。
「お前ら全員、くなっ!」
冒険者ギルドの扉が突然、ばぁんっと開く。
そして、覆面をした男たちが乗り込んできたのだ。
奴らののこなしは俊敏で、手慣れた様子だった。
それはこいつらがただの酔っ払いでも変質者でもないことを意味している。
「な、なんだぁ!?」
當然、連中に釘付けになる冒険者ギルドの面々。
はぁあああ?
ちょっと待ってよ、私の三日間の努力はぁあああ!?
「面白かったし」
「続きが気になるし!」
「魔法の特訓をしっぽり……!?」
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