《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》26.賢者様、森の中でとんでもないブツを発見する

「薬草の依頼完了ですっ!」

「ふふふ、これぞ私たちの実力ですよっ!」

満面の笑みで冒険者ギルドに赴き、でっかい採集袋を手渡す。

ライカに至っては鼻息荒く、尾をぱたぱたさせ、けっこう自慢気な表

絶対、褒めてもらいたいんだろうなぁ。

「へぇえ、頑張ったわねぇ、あなたたち偉いわぁ」

冒険者ギルドの付嬢のお姉さんは袋を開いて中を調べる。

「……あー。頑張ったのはわかるけど、殘念! これって全部、ニャンちゃん・ワンちゃん用の草、犬貓草(いぬねこそう)ね。薬草って言ってもちょっと違うかなぁ。売れなくはないんだけど、依頼のものじゃないのよねぇ」

「はへ?」

「うそぉおおおお」

ここにおいて、まさかの宣告をうけた私達なのである。

あまりのショックに変な聲がれてしまう。

お姉さんが言うには、これは犬貓が胃腸を整えるために食べる植なのだそうだ。

犬貓にとっては薬草ということになるらしい。

しかし、人間の薬草としては利用価値ゼロとのこと。

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「でっ、でもぉ、この草とっても味しそうなんですけど!」

「……獣人の皆さんはいけるのかもしれないけどねぇ。今回しいのは違う薬草なの。このギザギザの葉っぱがポイントよ」

「ぐむぅう、味しそうなのにぃ……」

ライカが必死に抗議するも、付のお姉さんは笑顔で応対する。

この人、本當に懐が深いなぁと心する私である。

とはいえ、これは完全に私のミステイクである。

森で鑑定魔法の度を落としたのがいけなかったらしい。

うぅう、笑顔で「完了しましたぁ」なんて報告した私をぶん毆ってやりたい。

「ぎゃはは、さすがは劣等種のFランクどもだぜぇ! 薬草と雑草の區別もつかないなんてなぁ」

こんな時に限って憎まれ口をたたく輩が現れるものだ。

そう、この間の酔っぱらいの男である。名前は覚えてない。

「……ぶっちぃん。先輩と犬貓草をバカにするやつは許しませんよ?」

ライカは相當に喧嘩っ早いのか、指をぽきぽきと鳴らし始める。

それにしても、堪忍袋の緒が切れた表現をわざわざ言葉でするなんて古すぎて逆に斬新。

「この人、正當防衛で毆っていいですよね? 『はい』か『殺れ』か『ライカにお任せ♡』で答えてください」

さらに私の弟子はとんでもないことを言い出す。

選択肢は暴力一択しかないし、最後のやつは絶対やばい奴でしょ。ハートマークで偽裝してるけど。

あんたが暴れたら、この酔っ払い、あの世に行っちゃうでしょうが。

「ライカ、待て、待てだよっ!」

「うぐるぅううう。お師匠先輩の言うことは絶対ですけどぉおお」

「あとでドーナツ買ってあげるから!」

「やったぁ! 私、ふわふわ丸いのが好きです!」

私は何とかライカを餌付けしてなだめると、冒険者ギルドを出るのだった。

そう、森に戻って依頼をやり直すのである。

「はぐっ、はぐっ、ぜぇったい許せませんよ! ドーナツおいしい! あんの、酔っ払い男、いっつも絡んできて大っ嫌いです! やっぱり、ドーナツ最高!!」

ドーナツをむさぼりながらも、未だにぷんすか怒っているライカである。

緒がどうなってるのか、かなり心配。

だが、彼の気持ちは分かる。

私だってバカにされていい気分がしているわけではない。

「よぉし、こうなったら、沢山、薬草を集めて、あの男をぎゃふんと言わせちゃおうよっ!」

「それですっ! 次こそは絶対にしくじりませんっ!」

私とライカは謎のやる気に満ち溢れると、森の中で「うがぁ」などとぶ。

怒りがやる気に転化した瞬間である。

それから先はさっきと同じ。

真実の目で依頼の薬草を把握!

むんずと摑んでぽいぽいぽいぽい引っこ抜く!

森の奧までがががと進み、採集袋いっぱいに蓄えるのだった。

どんなもんだい、すごいだろう。

あたしゃ、やるときはやるなんだよ。

「お師匠様! すっごい取れちゃいましたよ!」

ぎっしりつまった薬草袋にライカは喜びの聲。

私は途中から強化したけど、それに素でついてこれるライカはすごい。

この子を魔法使いにしていいんだろうかという本的な問いが頭に浮かぶ。

剣でもでも極めれば相當なものになるだろうに。

まぁ、本人がんでるんだからいいか、別に。

「くんくんくん……、お師匠様、こっちに何かありますよっ!」

そろそろ帰ろうかとなった頃合いに、ライカがおもむろに歩き始める。

ライカは芝狼犬族である。耳だけじゃなくて鼻もいい。

何か気になるものを発見したのだろうか。

「こっちです!」

ライカがそう言って私の手を引っ張った先は人が近寄りがたい茂みの中だった。

うひぃ、ちくちくと葉っぱが顔に當たる。

こんなところに何があるっていうのさ!?

「このにおいです! ちょっと苦いじのにおい!」

「こ、これはっ!」

そして、私たちが発見したのは、まさか、まさかのものだった。

地中に埋まったモンスター型の高級素材、マンドラゴラである。

それも一本どころではない。

數十本が群生しているのである。

「眺めがいいところですねぇ」

ライカの言うとおり、向こう側は切り立った崖になっており、日當たりもいい。

向こう側に山々をみ、なんだかすごく気分のいい場所だ。

ふぅむ、マンドラゴラがこんなところに生えているなんて不思議なこともあるものだ。

「お師匠様、なんですか、このダイコンっ? よし、今夜は豚大にしましょうか!」

ライカは何もわかっていないらしく、笑顔でマンドラゴラに近づくと、おもむろに引っ張り始める。

な、な、な、何やってんの、この子!?

「ばか、やめろっ!」

私は強化の魔法を無詠唱で発させると、やつにどぎゅんと當たりをかます。

「きゃいんっ!?」

突然のぶちかましにゴロゴロと転がるライカ。

ふぅうう、危なかったぁ。

溫厚な私が暴力に訴えたのには理由がある。

このマンドラゴラ、引っこ抜くときに「絶命の聲(デスボイス)」なる絶をあげるのだ。

その聲をまともに聞いたものは死ぬか、神をおかしくするか、死ぬまで頭を振り続けるかと言われている。

ダイコンみたいにひゅぽーんと引っこ抜いていいものではない。

それに猛毒があるから、きちんと処理しないまま食べると中毒死しちゃうし。

「えぇ~、ダイコンそっくりですよぉ?」

ライカは渋い顔をするが、そもそもこれには顔がついてるでしょうが。

あんたの知ってるダイコンはどんなものなんだ。

「それにしても、困ったねぇ」

とはいえ、この群生合は非常にまずい。

マンドラゴラはすると二足歩行で歩き出すモンスターに変容するのだ。

その時には「絶命の聲」を自在にり、森の生きは死滅する。

なかなかに兇悪なモンスターなのである。

しかも、この數のマンドラゴラが大人になっちゃったら大変なことが起こるだろう。

森にった人々がばったばったと亡くなってしまうことになる。

一昔前、山奧の村をマンドラゴラが滅ぼしたっていう話を聞いたことがあるし。

「じゃあ、全部やっちゃえばいいじゃないですかっ! スイカみたいにぐしゃっと! よぉし、やぁりまぁす!」

「こぉの、ばかちんがっ!」

「きゃいんっ!」

ライカは杖を構えて叩き割ろうとするので、慌てて止める。

この子の無邪気な積極に私は殺されるんじゃないだろうか。

このマンドラゴラ、絶命するときにもまた例のびをあげるのである。

手當たり次第にスイカみたいに潰そうもんなら、命が何個あっても足りない。

「あ、そうだ、あの酔っ払い男に引っこ抜かせたらいいんじゃありませんか? ふふふ、あくまでも冗談ですけど!」

ライカは珍しく冗談を言うが、ぜんぜん冗談に聞こえない。

この子、思った以上に恨みがましい格らしい。

ライカの仄暗い部分を垣間見て、ちょっとだけ背筋に嫌な汗をかく私なのであった。

まぁ、私もちょっといいアイデアかもって思ったけどね。

あくまでも冗談だけどねっ!

「面白かったで」

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「ライカにお任せ……したくない」

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