《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》05.【Another Side】厄介なことをしてくれたわ ※王妃視點
本日2話目です。
王宮からし離れたところにある白い離宮。
その中にある豪華な一室にて。
人形のように整った顔立ちをしたしいが、厳しい顔つきでソファに座っていた。
その正面に、を小さくして座っているのは、婚約破棄騒を起こしたオリバー王子と、キャロル男爵令嬢。
――王妃が、二人に向かって口の端を上げた。
「この狀況は何なのかしら、ねえ? オリバー?」
靜かながらも迫力のある聲に、ビクリと肩を震わせるオリバー。
王妃はしく微笑んだ。
「視察から帰ってきてみれば、クレアが行方不明。しかも、あなたがパーティ會場での婚約破棄騒ぎを起こした挙句、彼に暴力をふるって気絶させたと大騒ぎ。…この始末、どうやってつけるつもりなのかしら」
「し、しかし! 母上も言っていたではないですか! クレアは魔法一つ使えない無能なだと」
「確かに言ったわねえ。でも、おかしいわね。公衆の面前で婚約破棄をしろなんて言った覚えはないのだけど。ねえ? オリバー?」
Advertisement
「……っ」
王妃の母親とは思えない冷えた笑顔に、怯えたように口を閉じるオリバー。
「しかも、罪人でもないのに牢獄に閉じ込めたっていうじゃない。一何をどうしたらそういう考えになるのかしら?」
「そ、それは、魔力の暴発があったので、萬が一が起こってはいけないという配慮と、逃亡防止の観點から……」
「あら、斬新ねえ。配慮ってそうやって使う言葉なのねえ。
それに、たかが魔力の暴発でしょう? 被害が出た訳でもないのに、令嬢を牢獄に閉じ込めるだなんて、あなた隨分と偉くなったのねえ?」
にっこりと微笑む王妃に、俯いて震えるオリバー。
「――それと、あなた」
王妃は扇を広げて歪んだ口元を隠すと、オリバーの橫にをめるように座っているピンクのふわふわ髪の令嬢を、嘲るような目で見た。
「そのピンクの頭は飾りなのかしら? たかが地方の男爵令嬢が、辺境伯令嬢を噓で陥れたらどうなるか、分からなかったのかしらねぇ?」
「う、噓じゃありません。本當にいじめられていたんです!」
Advertisement
涙目でぶキャロル。
王妃は、蔑みの笑みを浮かべた。
「クレアの言は、全て私と辺境伯に報告が屆くようになっているのよ。あなたに対しては、最低限の規則やマナーについて注意をしただけ。あれをいじめなどと言ったら、マナー教師は仕事ができなくなるわねえ」
「し、しかし! クレアが必要以上に厳しく言ったことには変わりありません! それに、私は彼を本気でしています!」
必死でキャロルを庇うオリバー。
王妃は片方の口の端を上げて、馬鹿にしたように笑った。
「ふふ。困ったわねえ。あなたは、自分達が何をしたのかを全く分かっていないようだわ。下手をすれば、廃嫡されてもおかしくないことをしたのよ。
――あなたの実家の吹けば飛ぶような男爵家だって辺境伯に潰されてもおかしくないのよ? そのピンクの頭には綿でも詰まっているのかしら?」
白い顔をして黙り込む、オリバーとキャロル。
王妃は、ギリッとを噛んだ。
これから明日の朝まで嫌味を言っても足りない気分だが、今は時間がない。
さっさと用件を済ませなければ。
王妃はパチンと扇を閉じて、二人を見據えた。
「手短に言います。オリバー。もしも廃嫡されたくないのであれば、地に落ちたあなたの評判を元に戻しなさい」
どうすれば良いか分からない、という顔をするオリバー。
王妃は溜息をついた。
「手始めに、この一年でクレアを超える果を出しなさい」
オリバーが、きょとんとした顔をした。
「クレアを超える果、ですか」
「そうよ。結果を出せば評判も上がるわ。あなた、來年、學園の生徒會の會長を務めるといっていたわね。手始めに、今年のクレア以上に円に生徒會を運営してみせなさい」
「なるほど。確かにそれは分かりやすいですね。了解しました、母上」
それなら問題ない、とばかりに頷くオリバー。
王妃はキャロルを見據えた。
「そして、あなた。――確か、キャロルと言ったわね。本來だったら、あなたには消えてもらうところだけど、オリバーが納得しないでしょうから、あなたにも條件を出します。
クレアと同じ教育をけて、オリバーの仕事を手伝いなさい。それが出來なければ話にもならないわ」
はい、と、「それならば余裕よ」とばかりに頷くキャロル。
「分かったら、二人とも下がりなさい」
冷たい顔で二人に退出を命じる王妃。
そして、部屋に誰もいなくなった後。
彼は般若のように顔を歪めると、持っていた扇を壁に投げつけて、わなわなと震えた。
「……なんて面倒なことをしてくれたのかしら」
約一年後に迫った王太子指名會議。
ライバルである第一王子ジルベルトは非常に優秀だ。
國隨一の剣の使い手であり、魔法の腕も王宮魔導士並み。
武の面で見れば、オリバーを圧倒している。
しかし、彼には婚約者がいない。
婚約者がいないということは、王位継承にとってはマイナスだ。
その點、オリバーにはクレアという婚約者がいる。
しかも、クレアは武の面で秀でている辺境伯家の娘で、オリバーを支える獻さも優秀さも持っている。
王宮でもクレアの評判はすこぶる良い。
そんなクレアを、ちょっとが大きいだけの男爵令嬢のために追い出すとは、一何事なのか。
王妃は怒りの形相で、ソファに置いてあったクッションを床に叩きつけ、ヒールの踵で踏みつけた。
クッションが破れ、中にっていた羽が部屋の中に飛び散る。
立派な刺繍が見る影もなくなるまで踏みちぎった後、王妃はドサッとソファに座った。
「……問題は、これからどうするか、ね」
まずは、地の底まで落ちたオリバーの評判を何とかする必要がある。
そのためには、オリバーの努力はもちろんのこと、何としてでもクレアに婚約を継続させなければならない。
「まずは、彼を捕えないといけないわね」
クレアが逃げ出して、早三日。
王都を出た形跡がないことから、王都にいると考えられるが、未だに見つかっておらず、見つかる気配もない。
恐らくどこかに潛伏していて、狀況が落ち著いたら辺境伯領に向かうつもりだろう。
「…やはり、辺境伯に協力させる必要があるわね」
王妃の考えた案は下記である。
・辺境伯で療養しているということにして、クレアの行方不明を隠す
・王家と辺境伯が協力してクレアを探す
・見つかったクレアに、オリバーとの婚約を継続させる
こうすれば、辺境伯がクレアを匿うこともなくなる。
クレアが不在の間に、「クレアとオリバーが実は仲が良く、あの騒は癡話喧嘩だった」と噂を広めて、オリバーの評判を改善することもできる。
辺境伯に協力を依頼すれば、見返りは莫大なものになるだろうが、それでオリバーの瑕疵を消せるなら安いものだ。
これからの方針が決まり、立ち上がる王妃。
そして、呼び鈴を鳴らしながら、一人呟いた。
「……それにしても、私の命令に背いて出て行くなんて。隨分生意気になったものねえ、クレア?」
もとはと言えば、クレアが大人しくしていれば、こんなことにはなっていなかった。
オリバーに歯向かった上に逃げ出すような真似をしたから、こんな面倒なことになっている。
単なる駒であることの自覚ができていない証拠だ。
「見つかったら、厳しくお灸をすえなきゃね。こんな騒を起こした責任を取ってもらわないと」
口の端を歪めて笑う王妃。
そして、怯えた顔のメイドに、部屋の片づけを命令。
恐怖で震える書に今後のことを言いつけると、悠然と部屋から去っていった。
本日の投稿はこれで終わりです。
誤字報告ありがとうございました。(*'▽')
また明日投稿します。
ご意見ご想、評価等お待ちしております!
【書籍化】追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。
「お前との婚約をここで破棄する! 平民の研究者が功績を上げて勲章を與えられたからな。お前をその褒美として嫁がせよう!」 王太子の婚約者であった公爵令嬢ヴィルヘルミーナは、夜會の席で婚約を破棄されて平民との結婚を命じられる。 王太子に嵌められ、実家である公爵家からも僅かな手切れ金だけ渡して追放され、顔も見たことのない平民の研究者の元へと嫁がされることとなった。 ーーこれがわたくしの旦那様、ダサい男ですわね。 身長は高いがガリガリに痩せた貓背で服のサイズも合わず、髪はもじゃもじゃの男。それが彼女の夫となるアレクシであった。 最初は互いを好ましく思っていなかった二人だが、ヴィルヘルミーナは彼の研究を支え、服裝を正すなかで惹かれ合うようになる。そして彼女を追放した実家や王太子を見返すまでに成り上がって幸せになっていく。 一方、彼女を追放した者たちは破滅していくのであった。 【書籍化】が決まりました。詳細はいずれ。 日間・週間総合ランキング1位 月間総合ランキング2位達成 皆様の応援に感謝いたします。
8 127Skill・Chain Online 《スキル・チェイン オンライン》
Skill Chain Online(スキルチェイン・オンライン)『世界初のVRMMORPG遂に登場』 2123年、FD(フルダイブ)を可能にするVRギアが開発されてからニ年。 物語の様な世界に期待し、いつか來ると思い続けてきた日本のゲーマー達は、そのニュースを見た瞬間に震撼した。 主人公・テルもその一人だった。 さらにそこから、ゲリラで開催された僅か千人であるβテストの募集を、瞬殺されながらもなんとかその資格を勝ち取ったテルは、早速テスターとしてゲームに參加し、すぐにその魅力にはまってしまう。 體験したSCOの世界はあまりにも、今までの『殘念ソフト』と言われていたVRゲームと比べて、全てにおいて一線を害していたのだ。 來る日も來る日もβテスターとしてSCOの世界にログインする。 SCOの正式オープンを向かえていよいよゲームが始まるその日。SCO専用の付屬部品を頭のVRギアに取り付けて仮想世界へとログインした。 ログインしてすぐ、始まりの街で言い渡されるデスゲーム開始の合図。 SCOを購入する際についてきた付屬部品は解除不可能の小型爆弾だったのだ。 『ルールは簡単! このゲームをクリアすること!』 初回販売を手に入れた、主人公を含む約千人のβテスターと約九千人の非βテスター約一萬人のゲーマー達は、その日、デスゲームに囚われたのだった。
8 51名探偵の推理日記〜囚人たちの怨念〜
かつて死の監獄と呼ばれ人々から恐れられてきた舊刑務所。今ではホテルとして沢山の客を集めていたが、そこには強い怨念が潛んでいた。そこで起きた殺人事件の謎に名探偵が挑む。犯人は本當に囚人の強い恨みなのか?それとも生きた人間による強い恨みなのか? 〜登場人物〜 松本圭介 小林祐希 川崎奈美(受付の女性) 吉川尚輝(清掃員のおじさん) 田中和基(清掃員のおじさん) 磯野吉見(事務のおばさん)
8 165空間魔法で魔獣とスローライフ
立花 光(タチバナ コウ)は自分がアルビノだと思っていた。特殊な體質もあったためずっと病院で検査の毎日だった。癒しはたまに來るアニマルセラピーの犬達ぐらいだ。 しかしある日異世界の神様から『君は元々儂の世界で産まれるはずだった。』と 地球に戻るか異世界で暮らすか選んでいいと言う。 それなら地球に未練も無いし、異世界でもふもふスローライフでも目指そうかな!! ※小説家になろう様、アルファポリス様にマルチ投稿しております。
8 159男女比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕は女の子に振り回される
就職して戀愛・結婚をし子供が生まれる、これで普通の人生を歩めると思ってた……でも現実は、時間が過ぎるとともに幸せな家庭は崩れ去り、僕を苦しめるだけだった。 戀愛・結婚に臆病になった男が男女比の偏った世界に生まれ変わり、女性に振り回されながらも奮闘する。 ※申し訳ありませんが、感想の返信は停止しております。
8 156しろいへや
ぼく
8 177