《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》14.気が付いてしまった

ジルベルトとフィリップの會話を聞きながら、クレアは頭を押さえた。

(…間違いないわ。この人には、闇魔法の『呪い』がかけられている)

つまり、闇屬の魔が、この呪いをかけたということになる。

脳裏に浮かぶのは、赤のラーム。

(まさか、師匠? …でも、ずっと森で平和に暮らしている師匠に、この人を呪う理由があるとは思えない。それに、闇屬の魔は他にもいるはず)

きっと、師匠ではない別の魔だろう、と、結論付けるクレア。

――その時。

窓の外から馬の嘶く聲と、馬車の停まる音が聞こえてきた。

フィリップが顔を上げた。

「侯爵様がお帰りのようだ」

ジルベルトは、ひょいとクレアを持ち上げて肩に乗せると、立ち上がった。

し話をしてくる」

フィリップと別れたジルベルトが案された部屋は、太が暖かく注ぐ応接室だった。

待っていたのは、穏やかに笑う紳士――この館の主である侯爵、その人。

彼はジルベルトに椅子を勧めると、その正面に自も座った。

「最近、いかがお過ごしですかな。東の國境では活躍されたそうですな」

「話が大げさになっているだけで、実際はそこまででもなかった」

「いやいや。ご謙遜を。陛下が今度こそ勲章を授與すると息巻いていると聞きましたぞ」

「ああ。実のところ、斷るのに苦慮している」

最近の出來事を話し始める二人。

クレアは、じっと侯爵の顔を見た。

(あのの人に、よく似てる。父親かしら)

顔やつきを見ると、せいぜい中年に差し掛かったくらいなのだが、白髪がとても多く、心労が見て取れる。

娘の狀態に心を痛めていることが伝わってきて、思わず目をうるませるクレア。

そして、話がひと段落して。

侯爵が、穏やかに尋ねた。

「娘にお會いになられましたかな」

「…はい」

侯爵が、靜かに微笑んだ。

「以前は、一日三時間ほどは起きていられたのですが、今は一時間ほどしか起きれなくなってしまったようです。しかも、食事もほんのし。…そろそろ、私も妻も、覚悟した方が良いのかもしれません」

「…」

を軽く噛んで眼を伏せるジルベルト。

侯爵はらかく微笑んだ。

「あなたは本當に娘に良くして下さいました。フィリップ様を紹介して頂かなかったら、コンスタンスの命はもうとうに盡きていたことでしょう。あの方は、本當に親になって娘に寄り添って下さいました」

侯爵は、一旦、言葉を切って、目を細めると、ゆっくりと口を開いた。

「……ですから、ジルベルト様。あなたは、もう自由になって下さい」

「…」

何も言わず、俯いたまま、手元を見つめるジルベルト。

侯爵が微笑んだ。

「七年前のあれは、運の悪い事故だったのです。メアリー様(ジルベルトの母)も娘も運がなかった。それだけのことです。それに、コンスタンスはまだ婚約者候補の一人でした。あなたがいつまでも義理立てする必要はないのですよ」

ジルベルトの肩の上で、クレアは小さく溜息をついた。

(……なるほど。ようやく理解できたわ)

七年前。

側妃であり、ジルベルトの母親でもあるメアリーと、い令嬢を乗せた馬車が、崖から転落した。

メアリーはを強く打って死亡。

い令嬢は一命を取り留めたものの、寢たきりになっていると聞いたことがある。

恐らく、そのい令嬢が、コンスタンスなのだろう。

(コンスタンスはジルベルトの婚約者候補だったのね…。きっと、ジルベルトは彼のことがずっと好きなんだわ)

不思議だったのだ。

も葉もない『好きの好殿下』などという噂を、ジルベルトがなぜ放っておいているのか、と。

のことがずっと好きで、他の婚約者を決められたくないから、放っておいたと考えれば、つじつまが合う。

その事に気が付き、クレアは水を浴びせられたような気分になった。

(…そう。ジルベルトには想い人がいたのね)

続いて襲ってきた、思わず顔をしかめるほどのの痛み。

クレアはようやく気が付いた。

私はジルベルトにをしていたのね、と。

続きはまた明日。

いつも誤字字ありがとうございます。(#^.^#)

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