《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》17.【Another Side】思わぬ再會 ※ジルベルト視點
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お話の順番を変えた関係で、ここに後かられました。
クレアと森で別れたジルベルトは、夕焼けを背に、王都に向かって歩いていた。
(まさか、あんなところで會えるとは思わなかったな)
脳裏に浮かぶのは、森に囲まれたしい魔の庭で、青い瞳を細めて楽しそうに笑うクレア。
ジルベルトは、口の端を緩めた。
(元気そうで良かった。やはり彼には自由が似合うのだな)
――七年前。
ジルベルトが十二歳の時。
母と一緒に訪れた辺境伯領で、一人のと出會った。
クレア・ラディシュ辺境伯令嬢。
彼はし変わった令嬢だった。
その年頃のの子が好む、『王子様とお姫様が出てくるお話』には見向きもせず、父親の書斎にある冒険譚や旅行記を読み漁る。
お茶會よりも、元気に笑い元気に走り回ることを好む、令嬢らしくない令嬢。
ジルベルトが國境に寄ると言うと、地図と本を持ち出して來て、そこがどんな場所かを熱心に教えてくれた。
いつもツンと澄まして、ドレスやアクセサリーの話ばかりする達とは違うクレアに、ジルベルトは好を持った。
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だから、帰りの馬車の中で、母親に「婚約者にクレアちゃんはどうかしら」と言われ、「うん」と、即答した。
あの子と一緒なら、狹苦しい王宮も、楽しくじられるのではないか、と、考えたからだ。
――しかし、その一か月後。
ジルベルトの母が、馬車の暴走により死亡。
その喪が明けないうちに、オリバーとクレアの婚約が発表された。
(そうか。あの子はオリバーと婚約したのか)
ジルベルトは、しショックをけた。
気になっていたの子を取られたような気分になったが、こればかりは、もうどうしようもない。
(俺の立場は不安定だ。何が起こるか分からない。だから、不安定な立場の俺よりも、王妃が母親であるオリバーと婚約した方が彼もきっと幸せになれるだろう)
そんな風に考えて、忘れようとする日々。
――しかし、その數か月後。
偶然、王宮でクレアとすれ違ったジルベルトは、愕然とした。
天真爛漫で、いつも楽しそうに笑っていたクレアが、別人のように大人しく歩いていたのだ。
聞けば、家庭教師に怒鳴られ、王妃に説教され、どんどん元気がなくなっていったという。
しかも、オリバーは、彼を召使か奴隷のように扱っていた。
王妃もそれは同じで、彼が、クレアを『オリバーのための便利な道』として扱っているのが見て取れた。
(なんと酷い。あれでは彼が可哀そうすぎる)
怒りを覚えるジルベルト。
しかし、彼はオリバーの婚約者。
加えて、誰かが「ジルベルトは好殿下」などというも葉もない噂を流したため、話しかけることもままならなくなってしまった。
やせ細って、り付けたような笑みしか浮かべなくなったクレアを、心配しながらも、ただ見守るしかできない日々。
そんなある夜。
遠征を終えて、北門から王宮にると、一人のが牢獄樓から出てくるのが見えた。
なにかの魔法を使っているのか、門番は彼が見えない様子だ。
(何者だ?)
後ろから聲をかけ、振り向いたの顔を見て、驚いた。
(クレアじゃないか!)
それは、紺のしわくちゃのドレスを著て震えているクレアだった。
次の瞬間、クレアが逃げたと騒ぐ兵の聲。
ぎゅっと目をつぶって観念したような顔をするクレア。
ジルベルトはすぐに決斷した。
彼を逃がそう、と。
彼はずっと見てきた。
クレアがとても真面目で、何事にも一生懸命取り組んできたことを。
閉じ込められるような悪事を働くはずがない。
どうせ愚かな弟が、自分勝手な理由で閉じ込めたに違いない。
(問題は、このままここにいたら、オリバーの失態を押し付けられ、利用される可能があることだ)
いずれにせよ、このままここにいるのは危険だ。
ジルベルトは、急いで自分の外套をいでクレアにかけた。
彼が、かすれた聲で呟いた。
「…逃がしてくれるの? どうして?」
「クレアは、何か悪いことをしたのか?」
「してませんっ!」
泣きそうな顔をしてぶクレアを、抱きしめたい衝に駆られるジルベルト。
彼は何とかそれを押さえると、強く頷いた。
「俺もそう思っている。君は悪いことをするような人じゃない」
その後は、何食わぬ顔で捜索に加わり、クレアが遠くに行く時間を稼いだ。
後から聞いた話によると、オリバーが全校生徒の目の前で、冤罪を著せて婚約破棄を言い渡したらしい。
あまりに酷い仕打ちに、怒りに震える。
騎士団に対し、王宮から、「銀髪で青い目をした背の高い」を探すようにとの指令が降りたが、ジルベルトは適當に探すように仕向けた。
恐らく、クレアは辺境伯領にいるだろうと思っていたから、辺境伯領は特に手薄にした。
(幸せに暮らしていれば良いが)
クレアのことを思い出しては、そんなことを考える日々。
だから、魔の家から彼が出てきたとき、死ぬほど驚いた。
こんな王都の近くに住んでいたとは、夢にも思わなかったからだ。
(……だが、驚きはしたが、ホッとしたな)
やせ細り、生気なく人形のようだったクレアは、すっかり元気になっていた。
辺境伯で出會った頃のように、よく笑い、よく食べるのを見て、ジルベルトは心の底から安堵した。
助けたことについて何度もお禮を言われたが、救われたのはジルベルトの方かもしれない。
その後、二人は、約七年ぶりに歓談。
十歳の頃に、ジルベルトに冒険譚を夢中で話して聞かせたは、とても魅力的なに長していた。
相変わらずユニークで、野菜や果の効能について熱心に話してくれた。
化粧とドレスの話しか興味のない令嬢達とは違う興味深い話題に、ジルベルトもついつい熱中。
気付けば、夕方になっていた。
「森のり口まで送りますわ」
そう言われて、魔法陣を使って、森のり口付近まで送ってもらい、夕焼けを背に、王都に向かって歩くジルベルト。
脳裏に浮かぶのは、青い瞳を細めて楽しそうに笑うクレア。
「……次は、材料が集まった時だな」
ジルベルトは、口の端を軽く緩めると、足早に王都に戻って行った。
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