《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》22.解呪

薄闇が夜に変わるころ。

ぼんやりとる街道を、一頭の馬が走っていた。

乗っているのは、ジルベルトと、外套のポケットから顔を覗かせている、ケットッシーことクレア。

吹き付けてくる冷たい風に目を細めながら、クレアは溜息をついた。

(はあ。何なのかしら、この展開)

もうジルベルトと會うのは止めようと決心して、部屋に薬と手紙を置いたのに、なぜか一緒に侯爵邸に行く羽目になっている。

今の私は従魔だから、會ったことにはならないかもしれないけど、それでも心の整理っていうものがあるわよね、と、思うクレア。

(まあ、でも、乗り掛かった船だもの。最後まで見屆けるのが筋かもしれないわね。ちゃんと薬が効くかを確認して、終わりにしましょう)

時折、「寒くないか?」と、クレアを気遣いながらも、ひたすら馬を走らせるジルベルト。

月明かりに照らされた田園を通り抜け、あっという間に侯爵邸の前に到著した。

「ど、どうされました。ジルベルト様」

驚いたように屋敷の外に出てくる執事。

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ジルベルトが、侯爵とフィリップに急用があると伝えると、すぐに二階の応接室に通された。

そして、待つこと數分。

張した顔をしたフィリップと侯爵が、応接室にってきた。

「こんな時間にどうした、ジルベルト!」

「一何があったのですかな」

「驚かせてすまない。急いだほうが良いことがあってな」

ジルベルトは、二人と向かい合わせに座ると、切り出した。

「前に話していただろう。コンスタンスはもしかすると呪いをかけられているかもしれない、と」

侯爵とフィリップが頷きあった。

「ああ。あの後、我々も更に調べてみたんだが、呪いで間違いなさそうだ。過去呪いをかけられた者と全く同じ癥狀だった」

ジルベルトは、ポケットからお香のった箱を取り出した。

「実は、解呪薬を手にれた」

「…っ!」

「穏やかな解呪をう香らしい。俺は試す価値があると考えているが、二人はどう考える?」

フィリップが真剣な顔で尋ねた。

「それは、確かなものなのか?」

「ああ。世界で一番信用している人間から手にれた」

クレアは照れて目を伏せた。

そんな風に思ってもらえていたなんて、これ以上ないほど嬉しい。

フィリップが驚いたような顔をした。

「お前がそこまで言うなんて、余程だな。それだけでも、俺は試す価値があると思う。侯爵はどう思われますか?」

考え込む侯爵。

そして、しばらく黙った後、思い切ったように顔を上げた。

「このままでは、コンスタンスが死ぬのは目に見えています。私は父親として試すべきと考えます」

「では、決まりですね。ただ、念のため、試したいことがあります」

一旦部屋を出るフィリップ。

持ってきたのは、皿とカップとナイフ。

彼は、ジルベルトからお香を一つけ取ると、においを確認。

二つに割ると、片方を銀のナイフで細かく刻み始めた。

そして、その末をカップに投

毒探知の特殊スプーンでかき回し、スプーンに変がないことを確認すると、二人に向かって頷いた。

「大丈夫だ。毒はない」

ホッとした顔をする侯爵。

三人は、張した面持ちで、暗い廊下を通って、コンスタンスの部屋に移した。

ランプのの下、橫たわる、更にやせ細ったコンスタンス。

ジルベルトが、部屋の真ん中のテーブルにお香を置くと、火をつけた。

火はすぐに消え、甘い香りが部屋中に広がる。

侯爵がホッとしたような聲で言った。

「良い香りですな。吸い込んでも何ともない」

「そうですね。心が落ち著きますね。今寢たらよく眠れそうです」

クレアは、ジルベルトの肩を飛び降りると、ベッドに飛び乗った。

コンスタンスの表が、心なしか穏やかになった気がする。

魔力で探ってみると、解呪薬の影響で、呪いがし緩み始めているのが分かった。

功ね。多分、一週間もしないうちに解けるはずだわ)

ホッとしながら、ジルベルトの肩に戻ろうとするクレア。

しかし、ジルベルトの腕にのった瞬間、クレアの視界がぐにゃりと揺れた。

(え?)

そのまま意識を失い、ポトッと、ジルベルトの膝に落ちるクレア。

「…っ!」

目を見開くジルベルト。

「おい! どうした!」

ジルベルトの只ならぬ様子に心配そうに聲をかけるフィリップ。

そして、ぐっすりと気持ちよさそうに寢ているクレアを見ると、小さく笑った。

「……はは。脅かすなよ。寢ているだけじゃないか。が小さいから薬がよく効いたんだろう。外の空気を吸わせてやるといい」

「ああ。済まないが、し席を外す」

クレアを抱きかかえて、部屋の外に出るジルベルト。

そして、ジルベルトが屋敷の外に出た瞬間。

ボン

どこからか黒い煙がもうもうと立ち込め始めた。

何事だ、と、油斷なく周囲を伺うジルベルト。

その瞬間。

ズシリ

突然重くなる腕。

見ると、そこには、やけにの良いクレアが、幸せそうな顔で安らかな寢息を立てていた。

「……は?」

――後にジルベルトは言った。

人生であれほど驚いたことはない、と。

誤字字、(人''▽`)ありがとうございます☆

いや、ほんと、驚くほど速くて正確。

でも、今回は多分ない! はず……。

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