《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》24.【Another Side】捨てておいてちょうだい ※王妃視點

王宮にある王妃執務室にて。

豪華な革のソファに座った王妃が、満面の笑みを浮かべた。

「そう。ジルベルトが、敘勲をけると言っているのね?」

「は、はい。一度は斷ったが、やはり気が変わった、と」

ピリピリとした空気をじ、小柄なを更に小さくする、気の弱そうな男書。

王妃は、ほうっ、と溜息をついた。

「…そう。分かったわ、下がってよろしい」

「はっ。失禮いたします」

頭を下げて、兎のごとく部屋を出る書。

そして、ドアが閉まった瞬間。

王妃の表が、怒りと憎しみに歪んだ。

「あのガキ(ジルベルト)、ついに本を現したわね」

クレアが消えて十一か月。

どんなに手を盡くしても、オリバーの評価は下がる一方だった。

理由は、簡単。

オリバーの愚行を、フォロー、拭いしていたクレアがいなくなったからだ。

評価が下がったというよりは、正當な評価になったと言った方が正しい。

評価が上がるどころか下がっていくのを見て、王妃は慌てた。

まさか、我が息子がここまで無能だとは思いもしなかったからだ。

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は必死にテコれし始めた。

オリバーの代わりに仕事をする人間をかに付け、支援した。

しかし、仕事は何とかなっても、格や行まではどうにもならず。

學校で、『傍若無人な第二王子様』などと口をたたかれる始末だ。

クレアの追放劇に加え、『傍若無人な第二王子様』。

これだけでも大ダメージなのに、今度は対抗馬であるジルベルトの評価が上がってきた。

東の國境で、獅子迅の活躍。

して、多くの騎士と民衆の命を救った。

このせいで、ジルベルト側に付く貴族が一気に増加。

『好殿下』という二つ名も、「英雄を好むと言いますからな」、「王位に就けば、むしろ良いのでは」と、好意的に見られるようになってしまった。

おまけに、ジルベルトは、今回、今まで斷り続けた敘勲をけるという。

敘勲式は、王太子指名の一カ月前。

このままでは、王太子はジルベルトに決まってしまう。

王妃は、爪を噛んだ。

(あんな下賤なの子供が國王など、許せない。なにか手を考えなければ……)

(クレアがさっさと出てくれば、こんな面倒なことにはならなかったのに……)

湧いてきたクレアへの怒りで、険悪な形相になる王妃。

――と、その時。

ノックの音がして、先ほどの書が恐る恐るってきた。

「お、王妃様。急ぎお伝えすることがあります」

なにかしら、と、つっけんどんに尋ねる王妃。

「さ、先ほど、辺境伯領から知らせがありまして、クレア辺境伯令嬢が発見されたそうです」

思わずソファから立ち上がる王妃。

「そうなの。一どこにいたの?」

「小さな村の老人にかくまわれていたそうです」

「……そう」

「はい。それと、こちらは辺境伯様からの手紙です」

執務機の上に、そっと手紙を置いて、逃げるように去っていく書。

開封し、中を読み。

王妃は、口の右端を釣り上げた。

「ふん。まあ、そう來るだろうと思ったわ」

手紙の容は3つ。

・クレアが見つかったこと

・本人に意思確認をしたところ、オリバーとの婚約継続を拒否したこと

・取り決めに従って、辺境伯家からオリバーとの婚約解消を正式に申し込むこと

取り決めとは、「クレアが辺境伯で療養していることにして、行方不明を隠してしい」と、いう王妃の要に対し、條件として付けられたもの。

『オリバーとの婚約継続に関しては、クレアの意思を尊重し、本人が拒否した場合は、婚約を解消する』

今回、辺境伯は、この取り決めに従って、オリバーとの婚約破棄を要求してきた、という訳だ。

王妃は手紙を床にぱらりと落とすと、ヒールで思い切り踏みつけた。

「田舎の辺境伯ごときが、隨分偉そうじゃない、え? でもね、もう手は打ってあるのよ」

ぐしゃぐしゃと、手紙が破けるまで踏みつけ、踏みにじる王妃。

そして、呼び鈴を鳴らして書を呼んだ。

「手紙を代筆してちょうだい。辺境伯宛てに、「了承したが、直接クレアの意思を確かめさせてほしい」と。――それと」

王妃は、顎で、踏みつけてボロボロになった手紙を指すと、青い顔の書に向かってにっこりと笑った。

「あれを焼き捨てておいてちょうだい。塵も殘らないように、しっかりとね」

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