《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》25.敘勲式と祝賀パーティ

クレアが王都を離れて、約一年後。

王宮にある、壁一面が黃金の豪華絢爛な『謁見の間』で、ジルベルトの敘勲式が行われていた。

壇上の寶石が散りばめられた椅子に座っているのは、正裝した王と王妃。

その橫には、薄ピンクの禮服を著た第二王子オリバーと、しいドレスにを包んだ王二人が座っている。

式の參加者は、有力貴族と招待貴族、合わせて二十名ほど。

本來であれば、この五倍は參加するのだが、ジルベルトの「時期もずれているので小さく行ってしい」という要もあり、最低限の人數となった。

この後、その家族もえた祝賀パーティもあることから、皆、とりどりの禮服を著て、壇上を囲むように立っている。

眼鏡の宰相が、丸められた羊皮紙を広げて、聲を張り上げた。

「翠玉勲章! ジルベルト第一王子!」

颯爽と壇上に上がるジルベルト。

で付けられた黒髪に、強い紫の瞳、白い騎士服に、青い寶石のついたカフスボタン。

その悍な顔立ちと自信にあふれた立ち姿に、貴族達から拍手と嘆の聲が上がる。

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拍手が落ち著くと、宰相が再び聲を張り上げた。

「ジルベルト王子は、東の國境沿いにて、多くの尊い命を救い、多大なる功績を殘しました。また、騎士団長として……」

次々と並べられるジルベルトの功績を、仏頂面で聞くオリバー。

小さな聲でそれを諫めながら、王妃は心顔を歪めた。

(なんて腹の立つジルベルト(男)なのかしら。大人しくしていればいいものを)

そして、貴族たちに混じって拍手をしているラディツ辺境伯を見て、心の中でほくそ笑んだ。

(でも、笑っていられるのも今のうち。まあ、見てなさい)

一方、その頃。

王宮にある無數の控室の一つにて。

のドレスを著て、銀の髪のを緩くアップしたクレアが、姿見の前に立っていた。

「こんな場所、久し振り。張するわ」

「大丈夫よ! とびっきり綺麗にしてあげたから」

「ん。クレアきれい」

パレットを持って、楽しそうにクレアの化粧の仕上げをするジュレミと、ドレスを整えるノア。

クレアは、鏡に映るし不安そうな自分を見つめながら思った。

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この一年、本當に々なことがあった。

王立學園のパーティで婚約破棄を言い渡されたのが、遠い昔のようだ、と。

(でも、一連の騒も、今日で終わる)

どういう形で「終わる」のかは分からない。

ただ、間違いなく、何人かの人生がここで大きく変わる。

ノアが、テーブルの上に置いてあった箱を持ってきた。

「これ、さっきジルベルトが持ってきた。クレアに、だって」

箱を開けると、そこには見事な真珠の首飾りと髪飾り、ピアスがっていた。

アクセントに、キラキラるアメジストがあしらわれている。

クレアは微笑んだ。

(以前、真珠が好きだって言ったのを覚えていてくれたのね)

ジュレミがにんまり笑った。

「さりげなく紫れているところが健気よねえ。ささ、付けてあげるわ」

そして、髪飾りを付け終わると同時に、

コンコンコン

ノックの音がして、ジルベルトがってきた。

クレアを見て軽く目を見張る。

ジュレミがニヤニヤした。

が著飾っているのよ、何か言うことはないの?」

「……とてもよく似合っている」

「似合っているもいいけど、もう一言しいわね~」

「ん。足りない」

珍しく本気で困ったような表を浮かべるジルベルト。

クレアは赤くなって、彼をからかう二人を制止した。

「大丈夫です。ジル様も困っていますから」

「……まあ、クレアがそう言うなら?」

「ん。仕方ない」

ニヤニヤしながら引き下がるジュレミと、楽しそうに耳をぴくぴくさせるノア。

顔の赤さに気づかれなければいいけど、と思いつつ、クレアがジルベルトに尋ねた。

「今はどんなじなのかしら?」

「……ああ。敘勲式が終わって、大広間に移中だ。じきにパーティが始まる。準備はいいか?」

「はい」と、頷くクレア。

その後ろで、「ばっちりよ」と、ニコニコしながらハンドサインをするジュレミとノア。

ジルベルトがクレアに手を差し出した。

「では、行こう」

張しながら、ジルベルトの大きな手に、自らの手を乗せるクレア。

二人で馬に乗った時とは違うドキドキがある。

「行ってらっしゃい。魔法さえ使わなければバレないからね」

「ん。がんばって」

手を振って見送るジュレミとノアに謝の目を向けて、部屋の外に出る二人。

人気のない豪華な廊下で、ジルベルトはクレアに優しく腕を差し出した。

「行こう」

クレアは、ジルベルトの鍛えられた腕にそっと手を乗せると、張しながら歩き出した。

ジルベルトはゆっくりと歩きながら、目を細めた。

「そのドレス、著てくれたんだな」

「ええ。ありがとうございます。この寶飾品もとても素敵です」

嬉しそうに自分を見下ろすクレア。

以前のクレアは、王妃に押し付けられた地味な紺のドレスばかり著ていた。

きっちりとしたまとめ髪しか許されず、メイクも寶飾品も制限されていた。

しかし、今は、ジルベルトに贈られた最新流行のしいドレスに、若々しいまとめ髪。

ジュレミのメイクも最高だし、ジルベルトに贈られた寶飾品もこれ以上ないほどしい。

(自分が気にったドレスと髪型にしただけで、こんなに楽しいのね)

嬉しそうに笑うクレア。

ジルベルトが殘念そうに溜息をついた。

「このまま何も憂うことなくパーティを楽しみたいところだが、今日は殘念ながらやるべきことがある」

「……そうね」

同じく溜息をつくクレア。

ジルベルトが気遣うように尋ねた。

「不安か?」

しだけ」

ジルベルトの大きな手が、クレアの手をそっと包んだ。

「大丈夫だ。いざとなれば、俺が出る」

決意に満ちた、力強い言葉。

クレアは、彼の強い目を見上げながら思った。

この人がいれば、きっと大丈夫だ、と。

大広間に向かって歩く二人。

人気がほとんどない會場のり口には、クレアの父親である辺境伯が待っていた。

辺境伯は、ジルベルトに挨拶すると、クレアを見て目を細めた。

「見違えたな、クレア」

「ありがとうございます」

「では、行こう。我々が最後だ」

後ろに立つジルベルトに軽く會釈をして、父の腕に手をかけるクレア。

會場にると、大きなどよめきが起こった。

「クレア様だ。療養していたんじゃないのか?」

「見違えるようにおしくなられたな。何があったんだ?」

クレアの登場と容姿の変わり合に驚く貴族達。

それと同時に、

「まあ! クレア様だわ!」

「ご無事だったのね。良かったですわ」

令嬢達の嬉しそうな聲が聞こえてくる。

思ったよりも好意的な反応に、ホッとで下ろすクレア。

そして、父親と共に會場中央に歩いていこうとした――

その時。

「クレア、久し振りね」

よく通るの聲が聞こえてきた。

きたな、と、呟く辺境伯。

クレアは、ゆっくりと息を吐くと、ジルベルトが贈ってくれた首飾りをそっとった。

(大丈夫よ。落ち著いて、クレア)

そして、立ち止まった二人の前方の人混みが綺麗に割れ。

満面の笑みを浮かべた王妃がゆっくりと歩いてきた。

「お久し振りでございます。王妃様」

見事なカーテシーをするクレア。

王妃はクレアからし距離をとって立つと、軽く眉を顰めて低い聲で言った。

「まあ、何かしらね、その浮ついたドレスと髪型は。寶飾品もメイクも品がなさすぎます。いつもの髪型とドレスはどうしました」

頭を下げたまま、何も言わないクレア。

王妃は仕方のない子ね、と、いう風に溜息をつくと、やや大きな聲で優しく言った。

「今回はめでたい席ですから不問にしますが、次回からお気を付けなさい、あなたはオリバーの婚約者なのですから」

王妃の言葉に、會場がざわめいた。

「オリバー様とクレア嬢は婚約解消をする予定だと聞いたが、違うのか?」

「クレア嬢が婚約解消しないとなると、次期王太子がオリバー様の可能も出てくるぞ」

苦蟲を嚙み潰したような顔をした辺境伯が、一歩前に出た。

「王妃様。よもや我々との約束をお忘れではありますまいな? もしもお忘れのようでしたら、ここで確認させて頂きますが」

暗に、クレアの療養が王家に依頼された噓だったことをバラすぞ、と、警告する辺境伯。

王妃はしく笑った。

「ええ。もちろん覚えておりますよ。本人の意思を尊重する、でしたわね」

「その通りです」

「では、クレアの意思を、私から確認してもよろしくて?」

「もちろんです」

ありがとう、と、にっこりと笑う王妃。

そして、頭を下げたまま黙っているクレアに、やや高圧的に命じた。

「顔を上げなさい、クレア」

はい、と、大人しく顔を上げるクレア。

王妃は彼の目を真っすぐ見ながら、低い聲で言った。

「私はあなたがオリバーとの婚約を継続するべきだと思っているわ。婚約解消なんて以ての外よ」

そして、口の端を上げると、優しい聲で尋ねた。

「さあ、クレア。あなたの意見を聞かせてちょうだい」

誤字字、(人''▽`)ありがとうございました☆

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