《ハッピーエンド以外は認めないっ!! ~死に戻り姫と最強王子は極甘溺ルートをご所です~》5

カーネリアンが私を抱き寄せ、額に口づけてくる。

「どうして謝るの。謝らないといけないのは君にずっと黙っていた私であって、君ではないのに」

「私、私のせいで……カーネリアンを……」

「違うよ。君のせいなんかじゃない。これは私が自分で決めたことだ。それにね、結果的にこうなって良かったんだよ。だって、そのおで私は戦うことはただ怖いことではないと分かった。大切な人を守る為にあるものだって知ることができたんだ。ねえ、フローライト。君のおだ。全部君のおなんだよ。君のおで、私はもう、大丈夫なんだ」

優しい言葉が心に響く。ポンポンと背中を優しく叩かれ、涙が決壊した。

「うわあああああああああ! ああああああ!」

カーネリアンに抱きつき、ただひたすら泣き続ける。

怖い日々は終わったのだと、あの恐ろしい未來が現実のものになることはないのだと理解し、全から力が抜けた。

カーネリアンがそんな私を支えるように抱きしめる。

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耳元で熱い吐息と共に囁かれた。

「――今までありがとう。これからは私が君を守るから」

◇◇◇

「う……ううううう」

カーネリアンので思う存分泣いた私は、すっかり赤くなった目元をハンカチで押さえていた。

いくら気が抜けたとはいえ、十七歳にもなって大聲で泣くとは格好悪い。

気恥ずかしい思いをしながらも、カーネリアンをチラリと見る。彼はすぐに私の視線に気づくと「なに、フローライト」と甘くも優しい聲で返事をしてくれた。

――うう、格好良い。

ぽぽっと頬が赤くなる。

自覚はなかったがおそらく、今まで私は相當気を張っていたのだろう。もう大丈夫なんだと心底理解した途端、箍が外れたのか、なんだろう。今まで以上にカーネリアンが格好良く見え始めたのだ。

なんだか、言葉にできないほどの格好良さをじる。

今までも素敵だなと思っていたし大好きだと思っていたけれど、今はそれ以上の気持ちが私を支配していた。

――どうしよう。カーネリアンが素敵に見えすぎて、困るんだけど。

気のせいか、彼の背後に後が差しているようにすら思える。

今までのが取れた反なのか、気持ちが完全にモードへ移行しているというか……とにかくカーネリアンが好き! という気持ちでいっぱいなのだ。

「……好き」

持て余した気持ちを抱えきれず、カーネリアンの服の裾を摑み、小さくアピールしてみた。

上目遣いでじっと彼を見る。

何故か彼も目の下辺りを赤くしていた。

「な、何、いきなり。わ、私もフローライトが好きだよ」

「ん……」

嬉しい。

好きな人に好きと言って貰えるのが嬉しくて嬉しくて堪らない。はにかみながらも頷くと、カーネリアンが「えっ」と戸った聲を出した。

「な、え? どうしていきなり、そんなに可くなってるの? い、いや、フローライトが可くて綺麗で格好良いのは前からなんだけどでも……え?」

カーネリアンが揺している。

どうやら私の変化を彼もじ取っているようだ。とはいえ、今のこのどうしようもなく昂ぶった気持ちは自分でもコントロールできないので、彼にはけ止めて貰うしかないのだけれど。

「……」

「え」

ぴたっとカーネリアンにくっつく。なんだかとっても幸せな気持ちになった。

カーネリアンが揺する気配がダイレクトに伝わってくるも、それすら良いじに思えてくる。

「……いい加減、吾輩のことを思い出してもらいたい」

「……」

聞こえて來た聲に、すん、と気持ちが底辺まで下がったのが分かった。

すっかりラブラブな気持ちになっていたところに、大いに水を差された心地だ。

聲のした方に目を向ける。そこには魔王ヘリオトロープがムスッとした顔をして座っていた。

とはいえ、カーネリアンに手ひどくやられたせいか、後一撃でも貰えば消えるだけ……というか、何もしなくても消えるのは時間の問題というじにまで弱っているので、全く脅威はじないのだけれど。

「なんだ、まだいたの。とっくに消えたと思っていたよ。意外としつこいよね」

カーネリアンが先ほどまでの甘ったるい聲から一転、凍えるような聲で言う。

魔王は何故かを張った。消えかけだというのにとても偉そうだ。

「なに、これでも吾輩は魔王だからな。というか、だ。吾輩を倒し、お前はその娘を手にれたわけだが、お前にも何かやり直したい過去でもあるのか」

「……は? 何のことだ?」

「ん? その娘の特殊な魔力に気づいていないのか?」

「特殊な魔力……?」

カーネリアンが怪訝な顔をする。

そういえば、以前も魔王はそんなことを言っていた。

私には特殊な魔力があり、だからこそ攫ったのだとか。

何が特殊なのかまでかは知らないが、やはり今回の私にもその要素はあったらしい。

眉を寄せるカーネリアンに、魔王は淡々と告げた。

「その娘は、『時戻り』の力を持っている。本來は自分のみの時を戻す力だが、特別な方法を使えば第三者の願う好きな時へと戻ることだって可能。……なんだ。本當に知らなかったのか」

「『時戻り』の力……」

思い當たりがありすぎる話に目を見開いた。

今まであまり考えないようにしてきた、私が過去に戻ってきた理由。

それが自らの力によるものだったなんて。

カーネリアンも初めて聞いた話にびっくりしているようだ。私たちの反応に気を良くした魔王はペラペラと話し続けている。

「非常に稀な能力だぞ。數百年にひとりの割合でしか発現しない力だ。ん?――はあ? 娘! もしかして、すでにその能力を使っているのか!!」

「えっ……」

機嫌良く話していた魔王が私を見て、きを止める。信じられないものを見たという顔をしていた。

「時戻りは一度しか使えないという話なのに! クソッ! これでは吾輩の計畫は臺無しではないか! お前! いつ、時戻りを使った!」

「えっ、えっ……」

ギロリと睨まれ、思わず怯んだ。そんな私を守るように抱きしめ、カーネリアンが魔王を睨む。

「フローライトをめるのなら、今すぐ消すよ。……で? もうし詳しい説明をしてくれるかな。もちろん、嫌だ、なんて言わないよね?」

「……うっ」

カーネリアンに見據えられ、魔王が瞳を揺らす。どうやら相當カーネリアンのことが怖いらしい。

まあ、徹底的に痛めつけられ、消える一歩手前まで追い詰められたのだ。怖いと思うのも仕方ないのかもしれないけれど。

「……その娘から、時戻りの魔法を使った形跡を見つけたのだ。だが、あれは特殊な魔法で発條件もかなり難しい。しかも使えばかなりの後癥に苛まれる。……娘、酷い頭痛に苦しめられているだろう。場所は……そうだな、左の額あたりだ」

「っ……」

真っ直ぐに告げられ、息を呑んだ。

私が頭痛に苦しめられていることを魔王は知らないはず。それなのに場所まで正確に言い當てられ、驚いたのだ。

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