「質量をる魔ですが、あくまでも既存の魔を改良したものです」

「……どの魔を改良すれば、質量をることに繋がるのか全く見當がつかないんだけど」

確かに、ティルミお嬢様の言葉はもっともだ。一見、既存の魔に質量をる魔は存在しないとように思える。

「ティルミお嬢様も使えるごく一般的な魔ですよ」

「私でも使える魔？」

彼は眉をしかめる。

出し惜しみするするようなものでもないし、早々に答えを言ってしまおう。

「結界です」

「え……っ、結界？」

結界という結論に疑問を持ったのか、ティルミお嬢様は驚愕をあらわにしていた。

「そもそもお嬢様は結界魔に関して、どういった認識をお持ちですか？」

「えっと、約１０００年前、聖カタリによって始まった宗教が始まりよね。神の奇跡を再現する。それが神聖魔の基本よ」

確かに、ティルミお嬢様の語ったことは事実だ。

聖カタリが始まりとする宗教、カタリ教は大陸全土で広く一般的に信仰されている。

ただ、僕が聞きたかったのはそういうことではない。

「僕が聞きたいのは歴史的事実ではなくて、客観的な事実です。結界とは、そもそもなんなのか？　を問うているのです」

「えっと、そう言われてもわからないわ。そんなこと、今まで考えたことがなかったし」

「確かに、普通なら考える必要がないのかもしれませんが、僕は第一位階の魔しか使えなかったので、その第一位階の魔をいかに極めるかを常に考えていました」

第一位階の魔しか使えない僕は魔師として、はっきり言って平凡以下だ。

けど、ご主人様の命令は第一位階の魔しか使えない僕では、とてもではないが攻略できないものばかり。

だから、命令をこなすためにひたすら考える必要があった。

第一位階の魔をいかに極めるかを。

「〈結界(エステ)〉」

そう唱えて、僕は結界魔の第一位階〈結界(エステ)〉を発させる。

「お嬢様、よく見てください。結界というのは、非常に特殊なです。あらゆる攻撃からを守ってくれるくて明な盾。一見、ガラスのようですが、ガラスとは違うのは目で見て明らかです。とても、この世のには見えませんが、こうしてここにある以上、実在はしているんです。結局のところ、この結界はなんだと思いますか？」

「わからないわ……」

そう、わからないのだ。

ありとあらゆる魔師が當たり前のように、結界魔を使っては結界を展開している。なのに、その結界が一なんなのか、多くの魔師がわかっていない。

わからないのに、誰しもが當たり前のように魔として発させている。

不思議だが、あらゆる魔がアカシックレコードの影響下にあるという仮説を立てれば、その疑問も拭えないこともない。

「そこで、僕は結界に対して、一つの仮説を立てました」

ゴクリ、とお嬢様が息を飲む音が聞こえた。

どんな結論が飛び出るのか興味津々といった様子だ。

「質量を持ったではないかと僕は思ったのです」

「質量を持った……？」

その言葉をうまく飲み込めないといった調子で、彼はそう言葉を繰り返す。

「とは一なんなのか？　それはあまりにも難問です。けれど、には速さが存在し、質量が存在しないのは紛れもない事実のようです」

僕はクラビル伯爵によって、ありとあらゆる魔導書を頭の中に叩き込まれた。

その中には、あまりにも難解かつ魔というより哲學書に近い書も含まれていた。そういった本も嫌いせずに読んだおかげだろう。

が質量も持たず、速さが有限であることを知っていた。

「結界の見た目はに限りなく近いです。けれど、には質を跳ね返す力は存在しません。そこで僕は考えたのです。質量を持ったという質を仮定すれば、解決できるのではないかと」

「それで、どうしたの？」

「一応、功しました。これが、その産です」

そう言って、僕は魔法陣を展開させて、魔を発させる。

「〈ノ刃〉」

〈ノ刃〉は本來を守るための結界の形狀を刃へと変化させたものだ。

その正は――質量を持った。

「〈ノ刃〉は言い換えるならば、の質量を変化させるというものです。ですので、この魔を覚えれば、あらゆる質の質量を変化させることができるようになるというわけですね」

一通り説明できた僕は息を吐く。

そして、こう締めくくった。

「以上で簡単な概要については終わりです。なにか、質問はありますか？」

と。

◆

ティルミ・リグルット。リグルット家の長。

周囲からは、魔師の申し子と呼ばれるぐらいには評判はよかった。

魔力容量もＳランクと最高ランクの格付けを手にしている。

當然、全ての系統の魔を第三位階まで使えるし、適のある火系統なら第八位階まで使える。

魔學校でも最上位の績を手にしているし、本人にとってもそれは誇りでもあった。

けれど、そんなプライドは彼の前ではなんの意味もなさないことをたった今、わからされた。

それほど、彼が口した理論はティルミにとって衝撃だった。

悔しいとさえ思わない。

むしろ悔しさを覚えるのは、彼に対して失禮だと思った。なぜなら、悔しいということは彼と自分を比べているということに相違ないからだ。

自分と比べるのもおこがましいほど、彼は偉大すぎた。

天才というのは、自分ではなく彼のために存在する言葉なんだろう。

（まさに、化ね）

同時に、彼に対し恐怖も覚えた。

それは理解できないものに対して覚えるに限りなく近いのだろう。

一、どんな境地に至れれば、こんな発想にたどり著くのか、一片たりとも想像できない。

（クラビル伯爵も馬鹿ね。こんな逸材を奴隷として使い潰すなんて）

心の底からそう思い、彼に対し嫌悪を抱く。

そして、同時にこう思った。

（なんとしてでも、彼を私のものにしないと）

ティルミ・リグルットは計算高くしたたかなだった。

【大事なお願い！】

現在、おかげさまでジャンル別ランキング６位となっています。

目標の５位まで、あと一歩となりました。

なろうのシステム上、５位と６位には大きな違いが生まれます。

そこで、皆様にお願いです。

ぜひ、評価をいれてください。

評価方法は広告↓の☆☆☆☆☆を★★★★★することでれることができます。

５位になるには、この評価がとても重要です！

長文失禮致しました。

何卒、よろしくお願いします。