《げられた奴隷、敵地の天使なお嬢様に拾われる ~奴隷として命令に従っていただけなのに、知らないうちに最強の魔師になっていたようです~【書籍化決定】》―22― あなたを許せない
お嬢様と他の冒険者たちの帰りが隨分と遅い。
そのことに気がついて、森に戻ってみたところ、信じられない景が待っていた。
數え切れないほどの鎧ノ大熊(バグベア)と、お嬢様を襲おうとする魔族の存在。
魔人の振るった槍を防ぎながら、間に合ってよかったと安堵する。
もうし遅かったら、今頃お嬢様はもう……。そうなったら一生悔やんでも悔やみきれないに違いない。
ひとまず、お嬢様を抱えて安全な場所まで運ぶ。
「他の人たちは……?」
「まだ、戦っていると思う」
「わかりました。助けに行く必要がありそうですね」
そう言いつつ、自分の上著をお嬢様にかぶせる。
なぜかわからないが、彼はほとんどだった。おかげで、さっきから目のやり場に困っていた。
上著をうけとったお嬢様は恥ずかしそうな顔をしながら、それをにまとう。
「だ、大丈夫なの……?」
いつも堂々としているお嬢様が珍しく不安そうな表を浮かべている。
だから、安心させるために僕はお嬢様の頭をでる。
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「僕は大丈夫なので、安心してください」
すると、彼はなぜか顔を真っ赤にしていた。
……熱でもあるんだろうか。
「わかった。信じてるからっ」
ひとまずお嬢様の許可をおりたことだし、お嬢様の元を離れて戦場へと向かった。
◆
「〈加速〉」
まずは運をることで、自のきを速くする。その上、自の質量を軽くすることで、さらに加速が可能だ。
そして、起きる現象が、時間の歪みだ。
速く移すればするほど、周りの時間が遅くなることを俺は経験から知っていた。
「〈の刃〉」
そして、圧倒的加速から生まれる〈の刃〉はあらゆるものを切り裂くことが可能だ。
たった一太刀で、鎧ノ大熊(バグベア)を一刀両斷にする。
とはいえ、一一斬っていたら時間がかかるな。
まずは、鎧ノ大熊(バグベア)と戦っていた冒険者を見つけ出し、救出することを優先する。
どうやら、皆重傷は負っているものの生きてはいるようだ。
だから、一人一人手で摑んではお嬢様を避難させた場所まで、一瞬で運ぶ作業を何度も繰り返す。
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そして、冒険者たちが全員、安全な場所まで運んだのを確認したら、一つの魔を発させた。
「〈殲滅魔弾砲〉」
魔力を無數に細分化させ、それぞれに質量を與えた上で、広範囲に狙撃。
これなら魔がどれだけいても倒すことができる。
「一なんなのだ、お前は!?」
一通り鎧ノ大熊(バグベア)を倒し終えると、後ろから話しかけられる。
振り返ると、そこには一人の魔族がいた。
そうだ。この魔族がお嬢様を殺そうとしていたんだ。
そう思うと、心の底からふつふつと怒りが沸いてくる。
こいつはどんな手を使ってでも、ぶちのめそう。
「まぁ、いいでしょう! しぐらいやるようですが、たかが人間。私の足下にも及ぶまい」
そう言って、魔族は魔を発させる。
「〈無窮(むきゅう)の黒槍(こくそう)〉」
見上げると、無數の黒い槍が出現していた。
◆
ティルミお嬢様を襲った魔族にはデッシングという固有の名前がある。
デッシングは狡猾で殘忍な格をしていた。
とはいえ、魔族のほとんどがそういった格のため、デッシングが特別変わっているというわけではないが。
そして、デッシングには絶対的自信があった。
それもそのはず。
魔族一の力で、町一つを壊滅させる力があると知られている。
ゆえに、デッシングは目の前に鎧ノ大熊(バグベア)を殲滅させた年が現れても、驚きはしたが脅威にはじなかった。
自分だって、あれぐらいできる。
そもそも魔族よりも強い人間がこの世にいるはずがない。
「〈無窮(むきゅう)の黒槍(こくそう)〉」
跡形もなく殺してやろう。
そう思ったデッシングは無數の黒い槍を生して、雨を降らすように年へと放った。
黒い槍にのまれて年は見えなくなる。
意外とチョロかったな。
これなら、一瞬で殺してしまうのではなく、もっと殘忍な方法で殺せばよかった。
「今のがお前の本気か?」
「あ……っ!?」
驚いたのにはわけがある。
なぜか、真後ろから聲が聞こえたからだ。
目を離した覚えはない。なのに、気がつかないうちに自分の真後ろへと移したというのだろうか。
慌てて、さっきまで年がいた場所をみる。そこには、虛空があるのみでなにも存在しなかった。
「驚きましたね。まさか、知らぬ間に移していたなんて。そうだ、ひとつお名前を聞かせていただいても?」
「……アメツ」
「アメツですか。私の名前はデッシングと申します」
そう言って、デッシングは律儀に挨拶をする。
「それで、さっきの質問ですが――」
アメツが「今のがお前の本気か?」と聞いたのをデッシングは覚えていた。
「あんなの私の本気ではありませんよ。あんな攻撃、私にとってはたかが知れています。では、特別に見せてあげましょう。私の本気というものをねっ!!」
デッシングは高らかに笑いながら、魔法陣を展開した。
「〈黒竜演舞(こくりゅうえんぶ)〉」
途端、巨大な黒い竜の影がデッシングの背後から生み出される。
そして、竜の影は一直線にアメツに襲いかかった。
「これが私の本気です!! こんなの、あなたには防げないでしょうねっ!!」
デッシングは高らかに宣言する。
すでに自分の勝利を確信していた。〈黒竜演舞(こくりゅうえんぶ)〉を見て、生き殘ることができる人間などこの世に存在するはずがない。
「そうか、これがお前の本気か」
そう呟いたアメツの瞳はどす黒かった。
一なにを考えているのか、デッシングは見當もつかない。
それだけが気がかりだが、自分の勝利は揺るぎないものだろう。
「〈霍ウ譴∬キ區沿鬲鷹ュ?ュ埼ュ主、ゥ荳雁、ゥ荳句髪謌醍峽蟆〉」
アメツの口から紡がれた言葉をデッシングは理解できなかった。
気がつけば、アメツの周囲に複數の魔法陣が展開されていることに気がつく。
それもただの魔法陣ではない。
あまりにも複雑怪奇。幾重もの魔法陣が複雑に絡み合い、その一端を見てその全容を全くもって把握できない。
これらの魔法陣がどれだけの式処理速度を誇るのか、デッシングは到底理解不能だった。
とはいえ、自の〈黒竜演舞(こくりゅうえんぶ)〉が圧倒的威力を持っていることには変わりない。
だから、〈黒竜演舞(こくりゅうえんぶ)〉をただぶつけることを考えたらいい。
そう思って、黒い竜をアメツにぶつける。
瞬間、黒い竜が砕け散った。
まるでガラスが砕ける瞬間のようだった。
「一、なにが……!?」
デッシングは困する。
なぜ、自分の〈黒竜演舞(こくりゅうえんぶ)〉が無力化されたのか、理解が及ばない。
(な、なにかがいる……?)
ふと、そのことに気がつく。
一見、そこにはなにも見えないが、目をこらすとアメツの目の前におぼろげにそれがいることを認識する。
異界から覗いている巨大な目。
そうとしか表現できないなにかが、アメツの目の前に顕現していた。
その目はデッシングのほうを確実に捉えていた。
「まずい……っ!!」
このままだと殺される!
あの不気味な目と戦おうとしてはいけない。
そう判斷したデッシングは翼を広げて、空へと高く飛び上がる。
飛んで逃げてしまえば、人間は追ってこられない。なぜなら、人間は空を飛ぶことができないから。
「おい、逃げるなよ」
「――――ッッッ!!!」
聲にならない悲鳴が聞こえた。
なぜか、アメツが空を浮遊して、デッシングの目の前にいたのだ。
「な、なんで、人間が空を飛べる!?」
「空を飛べる魔なんて珍しくはないだろ」
確かに、風の力を使って飛ぶ魔は存在する。
けれど、目の前で浮遊しているアメツは風の力で飛んでいるとは思えない。
そして、恐るべき事態が起きた。
アメツの隣には、異界から覗く巨大な目がちゃんとついてきていた。
「彼に、死よりも恐ろしい苦痛を」
そうアメツが言った瞬間、異界から黒い二本の腕がびてくる。
黒い腕は両手でデッシングのを強く握った。
「や、やめてくれぇえええええ!!!」
黒い腕はデッシングを異界へと引きずり込もうとする。この異界に飲み込まれたら、死よりも恐ろしいことが待っていることは容易に想像できる。
「お願いします……っ!! 許してください!! 何でも致しますからっ!!」
だから、デッシングは懇願した。
その顔からは涙と鼻水でぐちょぐちょになり、いかにもけない顔だった。
「そうだな……」
と、アメツは考えるそぶりを見せる。
これを逃すまいと、デッシングはんだ。
「あなたの下僕でも奴隷でもかまいません! どんな命令でも守りますから、許してください!!」
それに対し、アメツは一言こう口にした。
「お嬢様は慈悲深いお方なので、あなたを許すかもしれません。ですが、僕はあなたを許せないですね」
その言葉を聞いた瞬間、自分の運命が決まったことを悟った。
「いやだぁああああああああああ!!」
その言葉と共に、デッシングは黒い腕に引きづられて異界へと引きずり込まれ、そして、異界は音もなく閉じてしまった。
戦いが終わった瞬間だった。
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