《【書籍化】語完結後の世界線で「やっぱり君を聖にする」と神様から告げられた悪役令嬢の華麗なる大逆転劇》の烙印

「いったい、何がどうなっているんだ……!」

エドガーは苦々しげに壁を毆った。

「なぜ我々が閉じ込められなければならない!?」

固く閉ざされた扉は開けることを許されず。皇太子であるエドガーと、その妃のミーナはされていた。

「ミーナ! 本當に力を使えないのか!?」

「…………」

無言で首を橫に振るミーナを見て、エドガーは頭を掻きむしった。

夜明け前、皇帝の元に呼び出されたエドガーとミーナは、ミーナの瞳が平凡なブラウンであると判明した段階で皇帝の執務室を追い出された。そしてそのまま閉じ込められ、様子を見に來た大神によってミーナの聖力が完全に失われたことを確認された。

それからというもの、空が白けても何の音沙汰もない。

本來であれば、夜明けと共に悪イリス・タランチュランの処刑が実行される予定であった。しかし、一向にそんな気配はなく。

時間だけが過ぎる中、次第にエドガーは落ち著きをなくしていった。

「どう考えてもおかしいだろうっ! なぜ、イリスが本だなどと……つ! だったらミーナは何だったというのだ!? ミーナこそ本だ! イリスが……母上を殺した悪が聖であるはずがないっ!」

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騒ぐエドガーとは対照的に、ミーナは沈黙を貫いたままだった。しかし、時間が経つにつれ親指の爪を噛み締めて目が走っていく。

「罪を犯した偽りの聖だと!? いったいミーナが何をしたというのだ! ミーナ! そなたは何も罪を犯していない、イリスが皇后である母上を毒殺したのを見た、それだけだろう!?」

しかし、ミーナは何も答えなかった。そのことに焦れたエドガーが詰め寄ろうとしたところで、ずっとく気配のなかった扉が開いた。

「何を騒いでおるのだ」

「父上!」

冷たい表をした皇帝がってくると、エドガーは一目散に駆け寄った。

「何がどうなっているのです? ミーナの疑いは晴れましたでしょうか? イリスの処刑は済みましたか!?」

息子を一瞥した皇帝は、鋭い角度で息子の頬を平手打ちした。バチン、と乾いた音が響く。

「うっ!? ……父上?」

「この癡れ者が!」

いつだって皇太子であるエドガーに優しかった父が、突然頬を打ち激昂している理由が、エドガーには分からなかった。

「イリスはミーナを遙かに凌駕する聖の力を持っている! 本はイリスだ! たかだか平民上がりの私生児に騙されおって!」

「……は?」

「お前が惚れ込んでいるそのは偽だ! イリスこそ本の聖だ!」

エドガーは、床に膝を突いて放心した。皇帝である父の言葉を、理解したくはなかった。

「そんな……噓です。噓だ! だってイリスは母上を毒殺したのですよ!? 父上は母上の仇が憎くないのですか!?」

エドガーが縋れば、皇帝は息子の手を突き飛ばした。

「知れたことを! 神託にあったであろうが! 偽りの聖ミーナは罪を犯し、真の聖イリスは無実だと! イリスが皇后を毒殺したと証言したのはミーナだ! その結果ミーナは聖でなくなり、イリスが聖となった。どちらが正しかったかなど、考えるまでもない!」

エドガーの頭の中で、皇帝の言葉がグルグルと回る。

「では……それではいったい、誰が母上を殺したというのですか?」

「……ミーナよ。あの日、あの場に居たのは皇后とイリス、そして貴様と侍従長だけだ。貴様の潔白を証言した侍従長が白狀した。皇后に茶を淹れたのはイリスではなく、ミーナであったと。正直に申せばしは楽に死なせてやろうぞ」

怒りを抑え切れない皇帝の低い聲に、ミーナよりも震え上がったのはエドガーだった。

「そんな……噓だ、噓だろう? ……ミーナ……」

懇願するようなエドガーに、ギリリと親指の爪を噛みちぎったミーナが聲を荒げる。

「ええ、そうですよ! 私です! 私が皇后を殺したのよ!」

逆上したミーナは、らしい顔を獣のように醜く歪めて皇帝と皇太子を睨み付けていた。

「何故だ?」

憎悪のこもった目で皇帝が問うと、ミーナは開き直って自らの行いを暴し始めた。

「邪魔だったのよ! 皇后は、いつだって私とイリスを比較した! みんな私が聖ってだけでチヤホヤしてくれたのに、皇后だけは最後まで私がエドガーの妃になることを反対していたでしょう!? いい加減ウザったかったのよ! だからイリスに罪をなすり付けて殺してやったのにっ! どうして……どうしてこうなるの!? 全て上手くいっていたのにっ」

「そんな、……噓だと言ってくれ、ミーナ」

理解が追い付かず、表を失くしたエドガーがミーナへと手をばす。

「あなたもあなたよ! 母親の機嫌を伺って、私との結婚を迷っていたでしょう!? 知ってるんだからね! あなたのその優不斷な態度が母親を死に追いやったのよ!」

髪を振りし、絶するミーナにはもはや聖の面影すらなかった。

「あー! これで何もかも終わりってわけね!? 何なのよ! あの、どこまで私を邪魔するの! あの時殺しておけばこんなことにはならなかったのに!」

喚き散らすミーナを憎々しげに睨んだ皇帝は、吐き捨てるように言った。

「イリスの代わりにミーナを投獄する! そしてエドガー、お前にはミーナとの離縁を命じる。離縁後、直ちに聖イリスに求婚するのだ」

長く険しい障害を経て漸くする人と結ばれたばかりのエドガーは、別人のように豹変した妻と、父である皇帝の殘酷な言葉についていけず、ただただ放心した。

「聞いているのか、エドガー!」

「わ、……分かりません、私には……何がなんだか……」

「チッ! ここまで腑抜けとは! どうやらお前を甘やかし過ぎたようだ。頭が冷えるまでこの部屋から出るでないっ!」

の烙印を押されて発狂するミーナは近衛隊に連れていかれ、皇帝は息子の部屋に鍵を掛けた。

取り殘されたエドガーは、目紛しい展開の中、けなくもその場でふらりと気を失ったのだった。

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