《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》新チームの一日目・終了
「お前ら止まれ」
それから一時間ほど進んだところで、俺は達……チームメンバー達へと若干苛立ちながら制止の聲をかけた。
「どうしたんですか?」
宮野が振り返って問いかけてきたが、その様子は何もわかっていないようだ。
優等生っぽいこいつがわかってないとなると、他の二人もわかってないだろうな。
「お前ら、學校で何習った?」
「何って……基礎教育と戦い方とダンジョンでの過ごし方、です」
「ダンジョンでの過ごし方なんてのを學んでんなら、罠の類についても學んでるよな?」
「はい。……もしかしてこの先に罠が?」
「いや?」
宮野はとっさに前方へと振り返って警戒する姿勢を見せ、他の二人も同じように振り返るが、それは違う。この『先』には罠はない。あるのかもしれないが、それはここから多なりとも離れた場所だろう。
「え? じゃあ──」
「そこのハンマーゴリラ」
「……は? ちょ、え、何その呼び方。もしかしてあたしの事?」
宮野のことを無視して、その隣にいた淺田に向かって言葉を投げかけると、淺田は一瞬呆けたような反応をしてから顔をしかめて問い返してきた。
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「そうだよ」
「……いい度してんじゃない。ならそのハンマーの力を見てみる?」
俺が頷くと、淺田はこめかみをピクピクとかしながら自の武である大きなハンマーを構えてこっちに歩いてくるが……これだけ離れれば問題ないだろう。
「もういいぞ、そこで止まれ」
「人をバカにしておいて謝りもなしに止まれってのは、バカにしすぎてると思わない?」
「助けてやったんだから謝してほしいのはこっちだな」
何も俺は理由もなくだとか気にらないからだとかそんな理由で暴言を吐いたわけじゃない。
「そこ。さっきまでお前が立ってた場所だが……」
さっきまで淺田が立っていた場所から二歩程先に向かってライトを照らす。
すると、暗くて見えづらいがそこには僅かに段差ができていた。そしてそれをよく見ると、人工であると言うのがわかる。
「罠……」
「後數歩進んでたら喰らってたぞ」
この場所がゴブリンの巣だってことを考えると、簡単な矢なんかが飛んでくる罠か、鳴りこあたりだろう。
「……」
「今のは簡単なものだったから喰らってもすぐに癒せば問題ないだろうが、そもそも喰らわない方がいいに決まってる。それに、もっと酷いものだと……こうなる」
「——っ!」
俺はそう言いながら自分の腕を捲って見せるが、そこには肘から手首にかけて爛れたような痕跡があった。ような、と言うか実際に爛れたんだがな。
「これは俺が冒険者をやらされて半年してからできた傷だ。順調に行ってた俺は調子に乗った。ダンジョンを甘くみた。そのせいで罠にかかり、こうなった」
生きを殺す覚悟もできて、罠もわかるようになってきて警戒が緩んでいた俺は、罠に嵌り腕が爛れた。
「これはその場にいた治癒師に癒してもらっても治らず、一生このままだ」
あのとき一緒にいたのが二級の治癒師だったからってのもあるだろう。一級や特級が一緒だったのなら痕なんて殘らなかったかもしれない。
だがそうだとしても、それは治せなかった治癒師が悪いのではなく、罠にかかった俺が悪いのだ。
「これまで何度かさっきのと同じような罠があった。その全部を奇跡的に避けてたが、これからずっと続くだなんて事は起こらない。俺みたいな傷を作りたくなかったら、々気を付けろ」
才能があるって言っても、それはまだ単なる才能でしかない。実力があるわけじゃあないのだ。
あまり口出しするつもりはなかったが、見ていられなかった。
俺みたいなおっさんが怪我をする分には仕方ないですむが、若いの子がこんな痕が殘るような怪我をすることになったら大変だろうからな。
「で、どうする?」
「……進みます。ただし、みんな罠には気をつけてね」
リーダーである宮野の言葉に淺田と北原はうなずくと前に進み出した……のだが、その際、淺田は俺の足を軽く蹴っていった。これはさっきの呼び方の仕返しか?
本気で蹴られれば俺の足なんて『折れる』ではなく『千切れる』だろう。だと言うのにし痛いで済んだのはかなり手加減したからだろうな。
そんな淺田の反応に俺は肩を竦めると、先ほどまでよりも遅いペースで進む達の後を追って進んでいった。
ある程度までダンジョンを進んだ俺たちは、これ以上は泊まりがけになってしまうと判斷して引き返したのだが、ダンジョンを出てきたときにはすでにが落ちていた。
時間は……七時か。冒険者としては普通だが、學生としてはこんなおっさんと一緒にいるとかどうなんだろうな?
「つ、疲れた……」
「やっと帰ってこれた……シャワー浴びたい……」
「レポートは、明日でいいよね……」
宮野、淺田、北原の三人はゲートを潛りダンジョンから出ると、それまで張っていた気を緩めて全の力を抜いた。
「まだ報告と換金が殘ってるぞ」
だがダンジョンに潛ると言うのはこれで終わりではない。遠足は帰るまでが遠足なのと同じで、ダンジョンから出てきただけでは終わりにはならない。
モンスターはそのに魔石と呼ばれる塊を持っている。モンスターが溢れた當初は意味のないものだったが、今では貴重なエネルギー源だ。
加えて、今回はゴブリン相手だったから何もしなかったが、他のモンスターだったら売れそうな部位を剝ぎ取ることになる。
モンスターを倒し、素材と魔石剝ぎ取って、換金して、そこまでやって初めて冒険終了になるのだ。
だから俺たちは、ダンジョンで倒した敵から回収した魔石をゲートのそばにあった換金所へと持ち込み、そうしてけ取った金を四人で分けた。
これで今日の冒険は終了だ。
「じゃあお疲れさん。次はいつだ?」
「その事なんですけど、連絡先換しませんか? 私たち、普段は學校ですから連絡も取りづらいですし」
「……まあ、そうか。一緒に行する以上は必要か」
それは當然のことなんだが……子學生と連絡先の換かぁ。……なんだかアレなじがするな。
「それじゃあ今日はこの辺で解散としようか」
「はい。お疲れ様でした。それと、これからよろしくお願いします」
そんな風に言葉をわしてから、ここ最近では無かったやけに長いとじた一日を終えた。
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