《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》友人との語らい
「お、コウ。帰ってきたか」
「あ? ああ、ヒロか。どうしたこんなところで?」
自宅のアパートまで帰ると、なぜかそこにはチームリーダー……いや、〝元〟チームリーダーのヒロが手すりに寄りかかりながら俺の部屋の前で待っていた。
そして俺に気がつくと、その手に持っていたビニール袋を俺に向かって突き出してきた。あの中は……酒か?
「わかってんだろ。お前を待ってたんだよ」
だろうな。じゃないとこんな俺の家の前で待ってるわけがない。
だから俺が聞きたいのはなんで俺の家まできたのかってことなんだが……まあ、詳しくは部屋の中にれてから聞けばいいか。
「とりあえず中にれてくれや」
「ちっと待て……ほら。どうぞお上がりください」
「おう、どうもっと」
俺が鍵を開けてドアを開くと、ヒロは勝手知ったるとばかりにズンズンと部屋の中へと進んでいった。
そして手に持っていたビニール袋を機の上に置くと、どかりと床に腰を下ろした。
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「で、調子はどうだ?」
「あんた達に押し付けられた子學生の群れの中で四苦八苦してるよ」
まあ、まだ一度しかダンジョンに潛ってないけど。
俺がヒロの対面に腰を下ろしながらジトッとした目つきでそう言うと、ヒロは苦笑いをした。
「そう言うなよ。一応お前のためを思ってたんだぞ?」
「まあそりゃあわからなくもないよ。俺たちのチームは結構歳がいってる奴が多かった。一番若い俺が三十四で、ヒロが……確か四十五だったっけ?」
「だな。俺ももうそろそろきつくなってきた。お前がお勤めを終えるまで三ヶ月っつっても、三ヶ月ってのは結構なげえ。人が……特に冒険者が死ぬような機會に遭遇するには十分すぎる時間だ。あのまま続けてたとしても、死んでたかも知んねえ」
「ああ。だから俺を他のチームにれたのはわかる。しかもメンバーのうち二人は一級で一人は特級。格も悪そうな奴らじゃないし、むのなら最高の件だった」
「だろ?」
「だけどな。問題がないわけじゃないんだよ」
そう。宮野たちのチームは、最後の一人である推定魔法使いの子はわからないが基本的にはいい子だし、その能力は申し分ない。
実戦という意味ではまだまだだろうけど、それも直ぐに長するだろう。
だから問題はそこではなく……
「俺に、三十過ぎのおっさんである俺に、あんな若いの子に囲まれて行しろって? 冗談きついぜ。深いダンジョンだと何泊もするのだって珍しくねえんだぞ?」
「子學生と外泊……事案だな」
「うっせえよ! あんたらがやったんだろうがっ!」
つい隣近所の迷なんて考えずに大聲を出してしまったが、この件に関しては俺は悪くないと思う。
「まあ落ち著けって。……で、実際のところあの子達はどうだ? やっていけそうか?」
「まあな。能的には問題ない。むしろ能で言ったら俺が足を引っ張るくらいだ」
「だろうな」
「うっせえ。……で、心の方だが、そっちも問題ない。初めてのダンジョンで小鬼のに行ったんだが……」
「おいおい。初めてでゴブ共はよくねえだろ」
ヒロはそう言って顔をしかめたが、それほどまでにこの辺の冒険者にとっては初心者が行くべきではない場所として有名だ。
ただし、それは資料に殘っているとかではなく、単なる口伝。
多はネットの報なんかにも書かれているが、人に近しい姿のものを殺すということの意味は、言葉だけでは伝わらないのだ。
教科書で學んだことが全てだと思っていたり、額面通りの報を信じ込むようだと、あそこの危険さはわからない。
「ああまあ、そうなんだがな……準備してる、って言ってたから覚悟の上かとも思ったが、まあ違ったな。実際、ゴブリンを殺した時に吐いて泣いてたし」
「だろうな。生きを殺すってのは訓練じゃにつかない一番大事な部分だからな」
「だが、それから數時間と経たずに立ち上がった」
「數時間か……そりゃあすげえ。お前なんか犬で何日もダウンしてたってのにな」
「何日もじゃなくて二日だけだろ」
「ははっ、変わんねえだろ」
かく言うヒロも最初は丸一日引きこもっていたらしい。
「まあなんだ。総合的にみれば上々。使う技や格……今の時點での評価はまだまだだが、育ったらかなりの奴になる。ああ言うのが『勇者』になるんだろうな」
こいつがいれば、この人がいれば自分たちは安全なんだ。そう人々に思わせ、
単獨でダンジョンを踏破し、ゲートを消すことのできる存在。それが勇者だ。
宮野は実力的にはまだまだだが、その素質はあると思う。俺がいる三ヶ月以に勇者と呼ばれることはないだろうけど、それでも十年もすれば呼ばれていると思う。
「勇者ねえ……俺たちからは縁遠い存在だな」
「だな。々が……なんだろうな。ゲームとかで勇者に助言する奴?」
「ああいるな、そんなじの。で、途中で勇者を庇って死ぬか戦いに巻き込まれて死ぬ。もしくはいつの間にか死んでる奴な」
「それ、俺じゃん。俺死ぬことになるじゃん」
「お、そうだな。なむさん」
「死んだら化けて出てやるよ」
「はっ、かかってこいや。コンビニの除霊グッズで対峙してやんよ。今じゃ除霊グッズでまじで除霊できるからな」
「まあ時代が時代だしな。いるかわからん幽霊じゃなくて、明確にいるとわかってるモンスターだもんな。今じゃ坊主もアンデッド系専門の退治屋やってる奴もいるし」
「ああ、あれな。戦う坊主」
「あれで一級の冒険者なんだからすげえよな」
「アンデッド以外は三級程度の力しかねえけどな」
「でもアンデッドだけでも一級評価もらえんなら十分だろ」
「まあな。でもその點で言ったらヴァンパイアハンターなんかはすげえよな。あれアンデッドメインだけど他のもいけんじゃん」
「でもあれはどこだったかの組織と対立してなかったか?」
そんな報換混じりの雑談をわしながら俺たちは酒を飲んで過ごして行った。
「じゃあ俺はそろそろ帰るわ」
「なんだ、泊まらないのか? 嫁に伝えてないとか?」
「それもだが、明日は面接があるんだよ」
「面接? もう次の仕事を決めたのか?」
「ああ。前々から話はしてたからな。ま、他の二人はしばらく遊んでるみてえだがな」
「俺も後數ヶ月もすればそうなってるだろうなぁ」
「なら、それまで死なないように頑張れよ」
「ああ。そっちも、面接頑張れよ。今までとは違う意味で戦場だろ?」
「まあ、なんとかなるだろ。なくとも命はかかってねえんだ。どうにかするさ」
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